コメント_2019-05-20_002311

政府・自治体・大企業が学ぶべきイノベーションの5要素5類型

イノベーションの5要素

歴史的に見て、イノベーションは特定の非常に集中したエリアだけで同時多発的に起きることが分かっている。産業革命が起きたイギリスのマンチェスターなどはいい例だったし、今はボストンやシリコンバレーがその中心地だ。最近では中国の深センなどもイノベーションが集中している。

かつて、イノベーションは人が集まるところから生まれると考えられた。しかし、シリコンバレーに行ってみると気づくのは、東京の方がはるかに人が密集しているということ。では、なぜ東京からイノベーションは起きないのだろう。人が集まるだけではだめで、イノベーションには以下の5つの要素が揃っていることが必要なのだ。

<要素1>イノベーション人材の蓄積

イノベーションには人材が必要だ。そう、東京には人材が多い、しかしその割にはコミュニケーションがサイロ化しており少ないのが特徴だ。つまり東京には面白くない奴ばかりが多い。そしてお互いに興味がない。隣の会社の人と仕事の話をする?親友が会社でどんな仕事をしているか知っている?人は似た人と話したい。優秀な人は優秀な人と話したいのに、自分がどんな人間かを発信していないのだ。

そして、イノベーションの起きる都市には大学があるのが特徴だ。いやむしろ、ボストンもシリコンバレーも大学しかない場所だったともいえる。つまり、優秀な若者が集まり、独自の多様性があるコミュニティがあるのだ。そこには常識を説く大人が少ないのも特徴だ。

イノベーションを検証するとそこには必ず大人から乖離された若者x多様性が存在する。大人の常識がイノベーションには阻害要因でしかない。ここでいう大人とは年齢の話ではなく精神の話。つまりしたり顔で常識を説く奴は要らないということだ。

<要素2>資本家が提供するセーフティネット

イノベーションをおこすためには失敗を繰り返すことが必要だ。そして失敗したあとも戻って再起できるセーフティネットも必要。銀行は資金を提供するけれど、イノベーションを支援する仕組みではない。銀行融資とは失敗しないためのセーフティネットであり、リセットボタン押せる仕組みではないからだ。

銀行から借りるならまず親から借りろという所以だ。血で繋がる強いコミュニティは失敗を許容し受け入れる。挑戦は強力なセーフティネットがあってこそできるのだ。それは失敗を受け入れる強いコミュニティだ。血で繋がるファミリー、幼馴染みの同窓会、資本で繋がる投資家コミュニティ、志を共有する秘密結社、講、模合、サークル、ギルド。

資本家は本質的にそのようなセーフティネットを提供している。ベンチャーキャピタルという形であることもあるし、エンジェル投資家シンジケートであることもある。現在、我々の殆どはPL脳に冒されている。そこからの脱却が必要だ。より多くの人が資本家のマインドになる必要があるのだ。

<要素3>イノベーションのインフラ

イノベーションが起きるにはインフラが必要だ。かつてのそれは街道だったり、運河だったり、鉱山だったりしたのだ。街道や運河や鉱山は人が集まり課題が集まる場所だった。現代においても、新幹線が引かれて人の波が生じ、幹線道路が引かれて物流が集積する。それらは総じてイノベーションに必要なものだ。

次世代では何がそれにあたるだろうか。その最たるものはデジタルネットワークと電力かもしれない。イノベーションが起きる場所にはぶっとい光ケーブルがひかれている必要があり、電力が豊富に供給されている必要がある。涼しくて働きやすくてアクセスが良いという基本的な場の提供も必要であろう。これからを考えるのであれば5Gへの投資やコワーキングのような快適で集まりやすい場の提供ではないかと考える。

<要素4>イノベーションに対する需要

実は、ちょっと前までの日本はイノベーション排除の風潮が強かった。極度な守りの経営だったのだ。残念ながら。実際、政府も自治体も大企業も名の通ったナショナルブランドだけを取引先として選んだ。新しいものを避けて通る風潮があった。中小企業は大企業の下請けでしかないとみられていたからだ。今でも地方ではその風潮はあるが、それではイノベーションは起きないのである。

イノベーションが起きるためには、政府や自治体・そして地場の大企業が喜んでスタートアップや必要ならば個人相手に取引をする必要がある。ガバメントセクターの予算は一番大きいので、そこがイノベーションを積極的に取り入れることが重要だ。既存の決まりきった企業に決まりきった土木工事ばかり発注するのではなく、一定割合を新興企業に充てたり新しい技術を試したりということが必要であろう。

<要素5>失敗許容文化とインセンティブ

最後は、失敗許容文化とインセンティブだ。例えば先にも出てきた銀行融資。融資を合法的にリセットするには法的整理を行う必要がある。破産、倒産、小口弁済、債務整理。いずれも実質起業家としての再起は絶たれるのだ。

ファイナンスの専門家が、そういうものを考えもせずに起業家に勧めてしまうのは問題だ。イノベーションを支援する人材を各所に育てる必要がある。ファイナンス、テクノロジー、そして外の環境に対して適切な知識を持った人間だ。

一方で、イノベーターに対してちゃんと報酬が変える仕組みの構築も必要だろう。出る杭をいっぱい作るためには、まず最初に出る杭を叩いてはだめなのだ。まず隗より始めよではないが、ちゃんと成功者をたたえる仕組み、そしてそれらの人がロールモデルになっていくこと、さらに資本家として後進の成長を支える循環を創り出すことが重要である。

イノベーションの5類型

「イノベーション」と十把一絡げに言っては見るものの、その内容は均一ではない。大きな社会課題から生じる「大きなイノベーション」もあれば、日々の地道な改善から生まれる「小さなイノベーション」もある。

では、イノベーションの本質とは何なのか、それは「課題の解決アイデアをインパクトに変える行動」である。

課題が大きければ大きいほど、それはインパクトの大きいイノベーションであり、最たるものは破壊的イノベーションと呼ばれる。社会基盤まで丸ごと変えてしまうようなイノベーション。例えばペニシリンとかダイナマイトが思い浮かぶ。

一方で、解決のハードルが高い物ほど高度なイノベーションということになる。内燃機関や飛行機といったものは技術の集大成だ。国家規模でのリソース集約の結果生まれた。しかし、重要なのは、技術力がいくら高くても、費用がいくら投入されていても課題を解決しないものはイノベーションではないということだ。その多くが利権を生み複雑な権利構造から止められなくなってしまったものも多い。我々は、ちゃんと結果を評価すべきであり、途中の過程や見た目のすごさに騙されてはいけない。

そう分けると、イノベーションは大体以下の類型に分けられる。異論反論あるとは思うが概ねこんな感じだ。そして、往々にして我々はイノベーションをおこすために「サイエンス」に傾倒しがちだ。すごいけど何に使うの?という技術の多いこと、、、。イノベーションとサイエンスは往々にして混同される。イノベーションには一定のサイエンスが必要であるけれども、サイエンスは必ずしもイノベーションを導くものではないだ。

5要素と5類型、この辺がちゃんとわかってくると、イノベーションはどこでも起こせるようになると私は考えている。この後は、ちゃんと自治体の施策などに落としていきたい。

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