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6 上手く生きていく術

一輝「いやっ、そんなことねーよ!」
雅也「聞いたか?今のぎこちない感じ。」
俊「なんか慣れてない感じだったな。」
雅也「お前、今まで恋バナとかしたことなかったのか?」

いや、恋バナぐらいしたことはある。もちろん好きなタイプもいる。俺のタイプは黒髪ロングの清楚系。もちろん女子。

でもそれは言えない。女子の話なら普通に出来るけど、男子の話なんか出来るはずがない。でも今は男子の話をしないといけない。頭をフル回転してなんとか答える。

一輝「い、いや、あるよ。あるけど、俺も俊と同じ感じでタイプが広いからあんまりはっきりしてなくて…。」
雅也「…ふーん。なんか怪しいけどまあそういうことにしておこう。」

雅也はなかなか厳しいな。ボロを出すとすぐバレそうだ。気を付けないと。

雅也「まあ別にあれだぜ?なんかちょっと変わった趣味だったとしても全然言ってくれていいんだからな?俺らそんなん受け入れてやっから。なあ、俊?康太?」

俊「そうだよ。友達だからな!」
康太「まあオケ専とかだったらちょっと引いちゃうかもだけど〜。(笑)」
雅也「さすがにそれはないだろ。(笑)」

オ、オケ専?どういう意味だ?
でもここで聞いてしまったらまた疑われるかもしれない。とりあえずバレてはないみたいだから、愛想笑いでやり過ごそう。

その日はそこでお開きになり、ギリギリセーフで切り抜けた。ずっとこんな感じだと消耗してしまう。上手く生きていく術を身につけないと。

夕暮れの帰り道、俺はずっと考え事をしていた。

雅也は、変わった趣味でも受け入れてやると言った。でも、女を好きなことが変わった趣味ってことになるんだろうか。…よく分からない。趣味とはまた違う気がするんだけど上手く表現出来ない。

ただ、今は言わない方がいいだろう。信用出来ないわけじゃないけど、とりあえず今は同性愛者のフリをしておく。

それに、俺はみんなが黙ったあのとき、俺が異性愛者だってことがバレるんじゃないかと思った。でもあいつらは変な趣味があるんじゃないかとか、そういう的外れな方向に話を進めていった。

そうか、異性愛者かもしれないとかいう発想は普通は出てこないのか。身近にいると思ってないし普段から存在なんか全く意識してないから。

そうだよな。俺だって元の世界ではこいつが同性愛者かもしれないとか考えて話したことなんかなかったもんな。そりゃそうだよな。

…どんどん俺のイメージが俺とかけ離れていくな。みんな勝手に勘違いして変なイメージをつけていくから。
…ちょっと寂しい気もするけど、でも今はその方が都合が良い。

まああの3人はホントにいい奴だから、これからも良好な関係でいたい。ああいう話になると大変だけど、それは誰と仲良くなってても同じだろう。俺が適応すればいい話だ。

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