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27年かかって、ドリカムしてる

 「大きくなったら何になりたいですか?」

この質問、みんな絶対聞かれたことあると思う。
 いろんな職業に憧れはあったけど、多分ブレずにいつもなりたいと思ってたのが「お花屋さん」。

子供の頃、我が家のお買い物といえばやはり地元北品川の商店街。実家のある1丁目は北品川本通り商店街、2丁目に入ると北品川商店街、そして北馬場参道通り商店街。私はどっぷり「商店街育ち」なのだ。

 私が小さい頃は文字通り商店が建ち並ぶ街、「商店街」だった。八百屋さん、魚屋さん、お肉屋さん、薬局に用品店。母の実家は小さなスーパーマーケット。母もまた、商店街育ち。1万円をおもむろにエプロンのポケットに入れて、手ぶらで出掛けるのがうちの母、はーちゃん流。そして片手には私の手が繋がれている。

 私が一番好きだった買い物、それはお花屋さんに行くコース。商店街には何軒もお花屋さんがあった。いろんなお花屋さんを覗くのが楽しかった。店頭に並ぶ鉢物、冷蔵庫に並ぶ切り花たち。どこのお花屋さんでもキレイな花を見て、子供ながらにそのキラキラ感にテンションが上がったものです。そのお買い物コースでも、私が一番お気に入りだったのは、北馬場参道通り商店街(当時はサクセス品川っていう名前だったと思う)にある和菓子屋さん木村屋で大好物だったみたらし団子を買ってもらい、片手に母の手、もう片手にその団子を握りしめて、品川神社方面に向かって歩く。4つ付いてるお団子の2個目を食べ終わる頃、花芳さんというお花屋さんに行くコースだった。串の下の方についてる3つ目と4つ目の団子を食べるのに苦戦しながら、店内のお花を眺めるのが好きだった。ゆりの花、フリージア、シャクヤク、菊にカーネーション。母がおじさんと相談しながら買う花を決めて、おじさんやお兄さん達がささっと花を組み、花鋏でスパッと茎を切る音。カッコ良かった。店内の花とみどりの香り….と頬張るみたらし団子のたれの香り(笑) 

 大きくなって母と手を繋ぐ必要がなくなって、中学生、高校生になっても、母と花芳さんに行けばおじさんは「今日は団子ないの?」って行く度に声をかけてくれたのを覚えてる。お団子のお嬢ちゃん、そんな感じで覚えていてもらえたのが私はとっても嬉しかった。そんな思い出の場所も、今ではマンションが建ち、すっかり変わってしまったけど、私の記憶にはしっかりと残っている。

 商店街のお花屋さん達に影響されて、私は高校生卒業後は迷わずにフラワーデザイン学科のある専門学校へ進学した。2年間、本当に基礎の基礎みたいな所を学校で学び、いざ就職活動….の時、私の世代は就職氷河期と呼ばれた時代だった。花関連の会社の求人なんて皆無に等しい。学校の就職課の先生に軽く勧められたのは「婦人警官」。花とは関係ないけど、なんか多分あなたにあってる気がするって。公務員だし、安定してるし!よっしゃ婦人警官目指しちゃるっーーー!!



ってなる訳もない(笑)
花、花なんです、私のやりたいことって。なんだかこの先どーすりゃいいんだって、もやもやしながら、花屋のアルバイトを探すも、いっつも引っ掛かるのが「要経験&普通運転免許」。持ってたの運転免許は、ペーパードライバーだけど。経験は一切なかった、学校でフラワーデザイン検定2級は取ったけど、それって現場で即戦力にならないのであっても意味がないのは痛感した。

しかたないので、某企業の社員食堂とか品川の京急ストアにあったカフェのフロアとかキッチンとか、花屋じゃないバイトをした。その時は楽しいし、労働経験は積まれていく、飲食店での。花に関する経験が積めない問題。このまま花の仕事は無理なのかなってあきらめて、当時まだまだ出来立てだったスタバの面接を受けた。銀座にスタバが出来たばかりで、姉と買い物に行って入った時に、受けた衝撃。


「なんじゃこりゃーーーーっ!!」


ジーパン刑事並みに叫び声が上がった気がした、脳内で。太陽に吠えろ、いや吠えた感じ。オシャレすぎませんかーーー?コーヒー、香り良過ぎやしませんかー?ヤバい、カッケーーー! そんな憧れのスタバが恵比須ガーデンプレイスにお店を出すらしく、バイト募集の広告がフロムエー(バイト情報誌)に載ってて、思わず応募した。

めっちゃ緊張して、当時青山あたりにあった(気がする)事務所に面接に行った。マネージャー的な男性が面接官。履歴書を差し出し、ざっと目を通してもらった。そして面接感の一言目。


「採用!いつから来られる?」


あっけない、採用された。
え、いいんですか?って聞いたら、だいたい第一印象でわかるから、大丈夫って。第一印象でどこを見ていただけたのかはわかりませんが、基本的に私真面目だし、カフェでの経験も一応あるし、コーヒーは大好き。一生懸命働かせていただきます、そう思った。何しろ衝撃的にカッコ良かったあの空間で働けるなんてちょっとワクワクした。私もよろしくお願いしますってことで、出勤日も決めて面接を後にした。


でもさ、やっぱり心のどこかでしっかかってる。私、花やりたかったんだけどなって。その為に学校にも行かせてもらったのになって。だから採用って言われても、やっぱり花屋の求人がないか探してしまう日々….を続けたら、あったの1つ。未経験で運転要らずの仕事が!


大田市場 花き仲卸店でのスタッフ募集。電話をかけて早速面接に出掛けた。専務さん(当時)に面接をしてもらった。セリ場の目の前にあるお店、段ボールがいっぱい並んで、オシャレさはほぼないけど、とてもアットホームな感じの会社な印象。衝撃のスタバとは全く違う世界だった。ラッキーなことに、ここでも採用していただけた。バイトだけど2社から採用をもらい、どちらに行こうか迷った、真剣に。スタバはカッコ良さやオシャレ感もあるし、この先絶対流行ると思ったし、会社も大きい。バイトから社員採用もあるって話だったので、迷う。条件は良かった、断然スタバのが。

商店街生まれ、商店街育ち。
産まれながらの商店街仕込みの勘で、決断の時!

1.市場の仲卸花屋の早朝バイトで花を学ぶ(6時出勤)
             
2.恵比須のスタバでコーヒーを学ぶ

あなたなら、どっち!?

昔、どっちの料理ショーって番組があって良く見てたけど、自分が食べれる訳もないのに真剣に悩んでたアノ時にちょっと似た感覚。軽いなって思うかもしれませんけど、私、毎回真剣に考えてたから(笑)

ドラムロールが脳内で鳴り響く。





ドゥルルルルーーーー、ジャンっ!!!

ドラムロールが止まる!

私が選ぶのは!!!

1番、市場の仲卸花屋での早朝バイトですっ!!!

どっちを選んでも勝ち負けなし、私が決断しただけ(笑) 自分でどういう人生を進みたいか、選んだ瞬間だった。

カッコ良さと会社の将来の可能性みたいな所でみたらスタバのが条件は良かったけど、面接に行った時にね、同じ香りがしたんです、私がワクワクして通ってた商店街の花屋さんと。思い出すのは花屋で食べたみたらし団子とみどりの香り。決め手はそれ。

晴れて花屋に勤め始めた私は、かれこれ4年ほどその花屋さんで働かせてもらった。とても、とても、素晴らしい上司と先輩方に囲まれて、楽しい4年間だった。花の事もたくさん勉強になって、あの4年間は私の人生でも濃い時間だった。4年のバイト生活で、そろそろバイトではいけないなって思い、次のステップと思ってた頃、私は出会ってしまった、あの人と。


あの人と歩む人生 vs 花の仕事


またまたどっちの料理ショー的な。
さて、あなたならどっち!?
で、選んだのはあの人と歩む人生だった。この選択は商店街育ちの勘が役立った….かは微妙だけど、あれから21年、私は今ハワイで花の仕事をしている。結婚直後14年程は専業主婦、ハワイでワンオペ育児に追われて忙しい日々だった。働いてた頃から時間が経ちすぎて、社会復帰なんてもう無理なんじゃないかなって、ちょっと怖かった。途中3年間、夫が横須賀勤務になって家族で引っ越した。その時、近所の商店街の花屋さんのパート募集の紙を見て勇気を振り絞って応募して採用してもらった。花の知識は少し、技術ほぼなく、働ける時間も子供たちを送り出して学校に行ってる間の4、5時間程度だったにもかかわらず、快く採用していただき、15年のブランクを越えて、夢だった花の仕事に復帰した。元の商店街、そして市場と同じみどりの香りだった。社長を初め皆さんに温かく接してもらい、技術を教えて頂き、時には美味しいまかないまでいただいて、2年に満たない位の短い間だったけど、本当に良くしていただいた。

3年の横須賀生活を経て、サンディエゴに約1年暮らした後ハワイに戻った。ハワイでは花の仕事には出会えず、友人に紹介してもらった観光バスの会社で働いた。花とは関係ない仕事、ホノルル空港の団体到着出口のカウンターでバスの案内の仕事。いい人に囲まれて楽しく働いたけど、やりたい仕事ではなかった。それでもできる限りを出して仕事をしていたら、なんということでしょう。出会ったんです、また。

私のバス会社のカウンターのお隣の席だったのがウェディングの会社。ちょっと気になって聞いてみたんです。もしかして花のお仕事あったりしませんか?って。そしたら、なんと花課があるというではあーりませんかー!ってことで、早速人事部の連絡先を聞き出して、お仕事させてくださいってことで応募しましたよ。でもね、経験は浅く、技術は基礎の基礎程度しかないんです。めっちゃドキドキで面接行ったのを覚えています。

あれから4年。私は今フラワーデザイナーというポジションでその会社で働いている。ほぼゼロの技術力を、イチから教えてくれた先輩とコンビを組んで、毎日2人でゲラゲラ笑いながら花を挿ししている。商店街とは全くかけ離れたハワイのウェディングチャペルが私の職場。商店街とは全く違う場所だけど、地元の花屋さんと同じ、みどりの香りの作業場にいる。

 先日、ローカルのカップルのウェディングに携わる機会があった。お客様への売り込み、見積り、コミュニケーション、デザイン、仕入れ、支払い、そして制作まで全て携われた。ゲスト350人という大規模ウェディング。当日は炎天下で5時間ずっと作業して、疲労困憊。だけど花を触って、デザインしながら出来上がっていくその過程は、やっぱり楽しくて。身体は疲れるけど、心はかなり満たされるというか、この仕事が出来て良かったなって、すごく充実感。あの頃夢みた仕事を、自信を持って出来ていると、つくづく実感できる仕事が出来たと思えた。



あれ、何気にドリカムじゃん?
 歌手のほうじゃなくて、言葉のままの


Dreams Come True


 めっちゃ時間かかっても、夢って少しずつ叶えていくもんかなと。他力本願じゃなく自力本願。神様に夢が叶いますようにと願うのではなく、自分が夢に向かう姿勢次第。私も途中いろんなところで止まり、つまづき、休み、時には諦め、また夢を思いだし、そんなこんなで、学校に入学したあの日から27年目のドリカムでした。何年かかってもいーじゃない。

「あーなたーのー夢をー、諦めなーいでー♪」

岡村孝子も唄ってた。
あなたらしく、輝いてね。


あなたの夢はなんですか?






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