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30日間の革命 #革命編 198日

 体育館を占拠してから数時間が経ち、騒ぎはどんどんと大きくなっていた。SNS上では「学生が体育館を占拠している」と話題になり、体育館の外には複数台のパトカーが応援にかけつけている。坂本らは、この騒ぎが大きくなり始めたタイミングで動画配信を始めた。

 「私たちはここ、武蔵中央高校の体育館に立てこもっています。これは、一部の学生だけで起こしたことではありません。ここには全校生徒がいます。つまり、全校生徒全員の意志で起こした行動です」

 坂本はステージ上に立ち、背景に全校生徒が写るようにして撮影をした。そして、一旦鼻から息を吸ってから再び話を始めた。

 「まず、なんで私たちがこんな行動を起こしたのか説明します。一言で言えば“学校に革命を起こす”ためです。学校の在り方に疑問を抱いた私は、まず学生連合を立ち上げました。それから色々なことをしていく中で見えてきたのが、今の学校の問題です。まず、校則により髪型や服装が決められること。髪を伸ばしたり、染色させることは制限されます。制服も皆同じで、女性はスカート、男性はズボン。これって当たり前なのでしょうか。それに、例えば胸元のボタンが一つでも開いていると校則違反になります。先生に見つかれば激しく叱責され、反省文という罰則を課せられます。おかしいと思ったのは校則だけではありません。部活では指導という大義名分のもと、いじめのようなことが当たり前に起きています。これは先生が生徒にということではありません。私たち生徒同士で起こります。でも、そもそもそんなことが起こってしまう構造自体を変えなくてはいけません。日本の部活動はかなり狭いコミュニティです。傍から見れば、目標に向かって努力する学生たちの姿は美しいでしょう。でも、その裏では陰湿なことがたくさん起こっているんです。でも、キレイなところにしかスポットライトは当たりません。大人たちはそれを写そうとはしません。だって、「部活が強い」っていうのは学校にとっても一つのブランドになります。何か不祥事が起きてはいけない。そうして目を逸らされていることだってたくさんあると思います。思い当たることはないでしょうか? ……進路だってそうです。皆当たり前のように進学か就職かの2択を迫られます。進学することや就職することは良いことです。間違っていません。でも、本当に進路ってその2択だけなのでしょうか。他の可能性をもっと探す機会が高校をはじめとして学校にあってもいいんじゃないでしょうか。私たちはそんなことを思い、学校を変えるべく動きました。その結果、全校生徒がこうやって私たちとともに学校を変えたいと集まってくれています。……でも、さっき言ったことはどれも当たり前のことなのかもしれません。今の話を聞いて『何わがまま言ってるんだ』とか『そんなに高校が嫌なら辞めればいい』って思う人も多いと思います。確かに、学校に不満があるなら辞めればいいし、ちゃんとしている学校を選ぶことも出来ます。でも、それでは何も変わりません。やっぱり、今ある学校を変えたい。根幹を変えなきゃ何も変わらない。私はそう考えました。この学校を占拠するという行動自体も間違っているかもしれません。でも、これくらいしなければ伝わらない。日常を疑おうと思ってくれません。全国の高校生の皆さん、今一度考えてください。今自分がいる環境ってこのままでいいのか。何かおかしなところはないか。このままの日本でいいのか。こんな馬鹿げたことをしてまでも、その”当たり前を変えたい”と思っている同い年の高校生がいることを知ってください。そして、この活動を通してわかったこと。それは人は変わることが出来るということです。今私はたくさんの仲間に支えられてここに立っています。でも、最初は衝突することもあったし、反対をされることもありました。私も変わったし、皆も変わった。だからこそ、こうやって行動を起こすことが出来たんです。どうかこの動画を見ている皆さんも諦めないでください。きっと変われます。そしてたくさんの人が変わっていけば、環境も変わります。だからこそ、まずは自分から変わっていきましょう。髪型を変えたいなら変えればいいし、好きな色に染めたいなら染めればいい。自分のやりたことがあるなら好きなだけやれば良いし、嫌だと思うことがあれば言えばいい。今日をきっかけに変わりましょう。そして、皆で日本の学校に革命を起こしましょう。……もう大人の言いなりになる学校生活は終わります。自分で道を切り開くんです。私たちと一緒に走り続けましょう」

 坂本は全ての想いを全身全霊でぶつけた。

 ちょうどその頃、複数の警察官によって体育館のバリケードが少しずつ撤去されはじめていた。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
マガジン作成しました! 第二部はコチラからご覧ください!

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