30日間の革命 #革命編 30日目
高橋はそのまま会議室で仕事をしていた。静かな環境からか、いつもよりも仕事が捗る。時間を忘れてそのまま仕事をしていると、会議室がノックされた。ノックの音で、ふと我に返った高橋は時計を見た。
「やべ。もうこんな時間か」
高橋が時計を見ると、会議室のドアが開く。
「高橋先生? こんなところで一人なにやってるんですか?」
入ってきたのは、3年2組の担任の溝端沙苗であった。
「ああ溝端先生でしたか。驚きましたよ」
「いやいや、驚いているのはこっちですよ。こんなところでお一人で何されてるんですか?」
「見ての通り仕事ですよ。いやー静かな環境だとこんなに仕事が捗るんですね。これからも会議室で仕事しようかな」
高橋は大きく背伸びをした。
「仕事って、何でこんなところでお仕事されているんですか?」
溝端は未だに怪訝な表情を浮かべていた。
「はは。ある生徒から逃げていただけですよ。今日は捕まりたくない気分だったんでね」
高橋は少し笑って答える。
「え? ますます分かりませんよ。誰から逃げたんですか?」
「溝端先生は質問が多いですね。うちのクラスの坂本小春ですよ」
「坂本さん? また何でですか?」
高橋が一言答えるたびに、溝端の疑問は増えていった。
「いや、何となくです。相談があるとか言ってたんですが、ちょっと嫌な雰囲気を出していたんでね。また革命だのなんだの言われたら面倒じゃないですか。今日はそんな話をする気分じゃなかったんでね。思わず逃げちゃいました」
高橋は淡々と答えていく。何も気にすることはなく。溝端も、質問はしたもののそんな高橋に少したじろいでしまう。
「そ、そうなんですか。ま、まああの坂本さんが学校をひっくり返そうなんて本当に考えていたんですかね。私はどうもまだ信じられませんが」
溝端は少しその場を濁すように話した。
「ま、私も真意はわかりませんが、今度坂本が来てそんな話をしたら真っ向から反対してやりますよ。彼女が”今まで通り”の優等生に戻るようにね」
「そ、そうですね。もう受験も間近なので集中させるのも教師の仕事ですしね。なら私はこれで失礼します」
溝端は逃げるように会議室を後にしようとした。
「ちょっと待って」
そんな溝端を高橋は呼び止める。
「は、はい? 何ですか?」
「溝端先生のクラスはどうですか? 明日の会議前に状況だけでも聞いておこうかなと思いまして」
「は、はあ。明日の会議でも言いますが特に問題ないですよ」
「そうですか。仙波美波とかも?」
「仙波さんですか? 全く問題ありませんけど。何か気になることでも?」
「いえ、生徒会の副会長になってからどんな様子なのかなと思いまして。まあ、また詳しくは明日の会議にしましょう。すいません、呼び止めてしまって」
「い、いえ。それでは失礼します」
そして溝端は再び逃げるように会議室を後にした。
(なーんか高橋先生って苦手なんだよな。凄い淡々としているし、生徒から逃げてるって普通に言っちゃうしね。ま、悪い人じゃないんだろうけど)
溝端は高橋よりも歳は5つ下である。今回初めて高橋と同じ学年を受け持つことになり、少し不安だったが、今のところ大きな問題点もなく過ごせていた。
しかしこれから、溝端の不安は現実になろうとしていた。
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