30日間の革命 #革命編 27日目

 女子バレー部で革命が起こってから、学校の様子は少し変化していた。再び”革命”について噂をする学生が増えたこと。それも肯定的に。坂本が選挙に負けたとき、完全に革命の灯は消えたかと思われていた。しかし、坂本や加賀の熱意が江藤を変え、そして女子バレー部で革命を起こすことが出来たこと。それは学生たちの間で「革命が本当に起きたら、どうなるんだろう」という興味が湧き始めていたのだった。もちろん、まだ興味本位のものである。

 本当に革命を起こすためには、まだ越えなければならない壁がある。それは”不利益の壁”だった。馬場が選挙で勝つために使った手法は、この”不利益”を学生たちに感じさせることだった。

 「革命なんて本当に起こったら、受験勉強が無駄になる。そして、進学も諦めなければならない」

 といった学生たちにとっての不利益を明確にすることで、革命へのムードを一変させた。その結果、投票のほとんどは馬場に流れたのであった。

 坂本はこの”不利益の壁”を超えなければならないということを強く思っていた。バレー部に革命が起こったことで、雰囲気は再び革命へと流れ始めたことは坂本も感じていたが、前回の失敗を考えれば、雰囲気というのはいとも簡単に変わることを坂本は知っている。だからこそ、学生たちの不安や不満を抑えるための策が必要だった。

 そして坂本は1つの案を思い付く。それこそ、この”不利益の壁”を超えるためのものだった。話は先日の加賀と会話に遡る。

 「あと大事なのは、みんなの不安を取り除くことね。今回分かったのは、やっぱみんな『受験』とか『進学』に対しての意識は強い。そこが脅かされる不安がなくならない限りは革命に賛同してもらうことは難しいかもしれない」

 「た、確かに。特に3年生はそうだよな。もう完全に受験シーズンだし、これまでやってきた努力を水の泡にされるのは嫌だって思う人も多いだろうね」

 「そうね。だから、そこをカバーするためにもう一つの案があるの」

 「何々? 教えて!」

 「うん。まだ案の段階なんだけど、こう考えてるの……」

 そして坂本は少し間をおき、一言で簡潔に話した。

 「先生を味方につけることよ」

 加賀は目を丸くした。

 「せ、先生を? 先生を革命派に入れるってこと?」

 「そうよ。やっぱり受験のこととか進路のこととか、いくら私たちが安心してって言っても説得力はないわ。それに事実として、私たちには何にもすることは出来ない。革命を起こすことと、みんの進路を変えてしまうことは別だと考え直したんだ。正直「進学すれば安泰」という考え方は変えたいけど、そのために費やしてきた勉強の時間や努力を否定することは出来ない。だから、革命を起こしても進路については目指してきた道を閉ざさないようにしたいの」

 「だから先生の協力が必要だってことか。……ま、まあ言わんとしてることは理解できるよ。確かに先生が味方についてくれれば、そういった進路関係については今まで通り安心だもんな。ただ、ただですよ。さすがにそれは無茶なんじゃないかな」

 加賀は少し苦笑いをしながら話した。

 「あら、何で?」

 「いやだってさ、この前の選挙で小春が革命を起こそうとしていたことがバレちゃったわけでじゃん。生徒たちの信頼は戻ってきているけど、未だに先生たちは警戒しているよ。それで安易に先生にこの話をして、学校から反対されたら、もう生徒会から反対される比じゃなく絶望的な状況になるよ。最悪それで停学とか退学になったら洒落にならないし……」

 「セトってそんなにマイナス思考だったっけ? さすがに革命を考えてるだけで停学とかにはならないよ」

 「小春の行動力がありすぎて、なんか慎重派になって来てるんだよ」

 加賀は笑って答える。

 「まあ組織には慎重派は必要よ。でも安心して。何もいきなり校長とかに掛け合うつもりはないから。まずは一人でも味方につけることよ」

 「もしかして、その一人って……」

 加賀は少し嫌な予感がした。その雰囲気を察してか、坂本は笑顔で答えた。

 「そう。我らが担任の高橋先生よ」

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