営業時代の話part⑫
おはようございます!
今日は「営業時代の話」をお送りします!
▼第1話はコチラ
それでは本日もよろしくお願いします!
※登場人物、企業、団体は全てフィクションです。
●二人の関係
藤橋さんの馴染みの店とは、立ち食い焼き肉だった。店内は決してキレイとは呼べないながらも、常連さんたちで埋め尽くされている。どうやら大将の人柄に惹かれて集まっているのだろう。どのお客さんも、大将と楽しそうに話しをしていた。
「はーい、生3つお待たせ!」
そんな大将が威勢よくビールを持ってきた。
「よし、なら乾杯するか! お疲れ様!」
藤橋さんも大将につられてか、威勢よくグラスを掲げた。そして、まるで漫画の如く、そのまま一気にジョッキのビールを飲み干した。私たちは呆気に取られながらも、遅れをとらないようにビールを口へと運んだ。
「いやー、ヤバいね。やっぱり仕事終わりの生は一番だな」
「そ、そうですね!」
「今日は遠慮せず飲み食いしていいよ。あ、大将! 肉もいつものお任せセット3人前よろしくね」
「はいよ!」
店の奥から大将の威勢の良い返事が返ってきた。
「……で、二人はどうですか? 入社から一週間くらい経ったけど、うちでやっていけそう?」
藤橋さんはお通しを口に運びながら、私たちに問いかけた。
「は、はい。今日は私たちの準備不足でご迷惑をかけてしまい申し訳ございませんでした。でも、”結果が全て”だって社長におっしゃっていただき、もう一回気合いが入りました。もっと頑張っていきたいです!」
私がそう答えると、
「まあまあ、今日のことは次に活かしてもらえればそれでいいから。それにしてもあの社長、遅れて来ておきながらいきなりあんな口ぶり腹立つよね」
と冗談交じりでそう話してくれた。
「い、いえ。あれは私たちの準備不足のせいなので、本当に申し訳ないです」
私も本村さんもそう謝った。
「いや、社長っていつもあんな感じなんだよ。俺ももう昔からの馴染みだからよくああやって言い合いしたりするんだけどね。だらしないんだよな」
社長と藤橋さんは、もともとは直属の上司と部下だったらしい。社長が営業部長で、その時に新人として入社したのが藤橋さんだった。社長は藤橋さんを一流に育てるべく、徹底的に仕事を教え込んだ。藤橋さんも社長のもと、仕事を徹底的にやり込んで、社内で一番の成績を上げることができ、営業部長へと昇進したのだった。なので、二人の関係は単なる社長と営業部長の域を超え、戦友のようなものとなっていた。時折ああやって言い合いになることもあるらしいが、お互いのことはちゃんとリスペクトしている。
そんな話を藤橋さんはビールをぐびぐび飲みながら教えてくれた。
「何か話してたら文句言いたくなってきたな。ちょっと社長も呼んでいい?」
そう言うと、私たちの返事を待つ前に携帯電話で社長へと電話をかけ始めた。
「あ、お疲れ様です、藤橋です。今仕事ですか? ……そうですか。今、大将のところで飲んでるんで来てくださいよ。え? 新人二人もいますよ。そんなことはいいから早く来てくださいよ。お願いしますね」
藤橋さんは一方的に話を進め、電話を切った。
「だ、大丈夫ですか?」
恐る恐る藤橋さんに聞いてみるも、
「全然問題ないよ。ほら、二人とも社長が来る前にもっと飲んどかないと、この後もっと飲まされるよ」
と、謎の理論でお酒を勧められ、私たちは早いペースでジョッキを開けた。そして間もなくして社長が到着する。
「お疲れー! 大将、生持って来て!」
社長は来るや否や、すぐさまビールを頼んでいた。ここから長い夜が始まるのだった。
To be continued…
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