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30日間の革命 #革命編 25日目

 手崎恭子とは、元白の会のメンバーである。加賀に誘われ、白の会の一員となり活動を行っていた。元々友達も少なく、目立つことがなかった中で坂本率いる白の会に抜擢されたことにより、一時注目を浴びることとなった。しかし、その影響は悪い方向へと向かってしまった。

 江藤率いる女子バレー部に目をつけられ、一時は指導と称した”いじめ”にあっていた。その主犯格はもちろんキャプテンである江藤。江藤は、地味で目立たない2年生が、坂本や加賀たちと同じ場所にいることが気に入らなかった。もっと言えば、加賀と仲良くしていることが何よりも許せなかったのだ。

「何で自分じゃなくて、あんな地味な奴がセトの隣にいるんだ」と、とても卑しい気持ちが江藤を覆いつくした。その結果、集団でいじめるという暴挙に出てしまったのだった。結局、馬場が江藤と交際をし、手崎を許すように勧めて事は収まったのだが、裏で糸を引いていたのは馬場である。しかし、江藤はそのことを知らない。

 加賀たちに革命の一員にならないかという誘いを受けた時、一番気になっていたのは、馬場のことではなく手崎のことだった。本心では加賀たちと一緒に過ごしたい。でも、あんなことをした自分がここで手のひらを反すように革命に参加することは許されるのか。その気持ちが、江藤の足を止めていた。

 「……私は今まで女子バレー部のキャプテンとして厳しく後輩を指導してきた。でも、それはあくまで部活の範囲内だったと思う。でも、手崎は違ったんだ。私の個人的な感情から、難癖つけて彼女を追い込んだ。気づいていたんだよ。私が間違っていることは。でも、周りの人間で私を止められる人もいないし、一緒になって手崎の悪口を言う奴もいた。手崎もまったく折れる気配もないから、もうどうに止まれなかった」

 江藤はかつての自分を責めるように話をはじめた。

 「そんなとき、馬場が助けてくれたんだよ。もうそんなこと止めようって。ちゃんと言ってくれる人が出たことで、私も止まることが出来たんだ。だから馬場には感謝してるよ。正直付き合うってのも、馬場が有名になるためのものだって分かってるよ。でも、それでも良かった。そうすることで、丸く収まるなら。だから、そんな自分が今さら革命に参加するなんて手放しでは言えないよ。手崎に何て言えばいい? 彼女は私を恨んでるよ……」

 江藤の目からは涙がこぼれる。こんな江藤の姿を加賀は始めて見た。そして思った。こんなに弱い人間だったんだということを。それは決して見下したり、軽蔑するような気持ちではない。女子バレー部キャプテンとして学校の誰よりも恐れられている人間が、裏ではこんなに繊細な気持ちでいたことを知って悲しくなったのだった。そして、その姿に気づけなかった自分自身も責めた。

 当時手崎の最も近くにいたのは加賀自身である。自分の進路のことで頭がいっぱいになり、手崎の変化に気づくことが出来なかった。その変化に気づくことが出来てれば、江藤を止めたのは自分だったのかもしれない。そうすれば手崎も江藤も両方にとって違う未来が訪れたのではないか。加賀は江藤の話しを聞き、悔しさが込み上げてきた。

 そして改めて革命が必要だと思った。自分も含めてみんな弱い。だから間違いを犯してしまう。しかし、今の学校にはその間違いを気づかせるようなシステムはない。教師を含めて、一部の力の強い人間の意向が反映される。それ以外は黙認することがまかり通っている。良く言えば伝統であるが、決して良い意味での伝統ではなくなっていた。そんな古いシステムそのものを変えるためにも、革命が必要だと思った。

 「だったらさ、やっぱ学校変えようよ。江藤ちゃんも間違えた事をしたし、俺も間違っていた。そして誰もが間違うよ。でも、だから変わらなきゃいけないし、変えていかなきゃいけないよ。手崎さんのこと、悪く思うなら、自分が間違っていたって思うなら、静観することが罪滅ぼしじゃない。自分が変わること、そして周りを変えなきゃ。だから俺にも江藤ちゃんにもその責任はあると思う。前みたいに楽しくやろうよっていう話じゃないんだ。自分たちの責任でこの学校を変えよう、革命を起こそうよ」

 加賀は今までにないくらい、力強く自分の言葉で話した。心の底から”革命”が必要だと思ったからだった。そして、江藤は顔を手で覆いながら、涙を流した。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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