アニメ制作時代の話⑭
おはようございます。
今日は再び「アニメ制作時代の話」Part⑭をお届けいたします。
爆弾処理
先輩のクビが宣告された日から、忙しさは更に加速した。先輩が何もしていなかった分、スケジュールはかなり遅れており、それを取り戻すためには休んでいる暇なんてなかった。まさに社長が言った「爆弾残していったよね」という言葉はその通りだった。むしろ、既にその爆弾は爆発しているものもあった。
スケジュールの遅れは各所に影響をしてくる。上がってきた原画を作画監督さんへ持っていき仕上げていただくのだが、その期間もかなりタイトなものになっていた。ある時、上がってきた原画を作画監督さんへ持っていき、「これ明日の10時までにお願いします」とお願いをしたところ、
「ちょっとさ、さすがにそれは無理だよ。こんな遅い時間に持ってきて、明日の10時までに仕上げろってさ、それ徹夜しろってことでしょ? そもそもこんなスケジュールになったのはあんたら制作進行の責任じゃん。何でその尻ぬぐいを私たちがやらなきゃいけないのよ」
と、かなりの剣幕で怒り出した。私は演出さんの時に続き、直立で頭を下げて作画監督さんの説教を聞いた。
(何で俺が怒られなきゃならないんだ。そもそも悪いのは仕上げるのが遅いアニメーターと仕事ほっぽり出した先輩のせいじゃないか)
私は怒られながら心の中でそう思った。
作画監督さんはひとしきり怒ったあと、
「もうあんたみたいな新人に言ってもしょうがないから、今度社長にも言っておくよ。今回はこのスケジュールでやるけど、次はもうやらないからね」
と私に告げ、作業へと戻っていった。私は作画監督さんにもう一度深く頭を下げ、自席へと戻っていった。気分がかなり落ち込む中、手元に持っていた原画に目を通した。フリーのアニメーターさんから回収した原画だったが、その絵のクオリティの低さに私はどこか情けなくなった。
〆切直前になると、アニメーターさんによっては手を抜いて適当に仕上げる人もいると聞いていたが、まさにその通りだった。作画監督さんがあんなに怒っていたのも、こういった絵を直さなければならないからだ。絵の直しが多ければ多いほど、作画監督さんの作業も増える。私は少しだけ、作画監督さんの怒る気持ちも理解できた。そして、私が先ほどまで抱えたいた不満の気持ちは無気力へと姿を変えていた。
私はそのまま原画の回収へと再び車を走らせた。その時はもうてっぺんを過ぎていた。
車の窓に流れる深夜の東京を横目に、私の目からはなぜか大粒の涙がこぼれていた。
To Be Continued…
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