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営業時代の話part⑧

おはようございます!

今日は「営業時代の話」の続きを投稿します!

▼第1話はコチラ

それでは本日もよろしくお願いします!

※登場人物、企業、団体は全てフィクションです。

●険悪

ちょうどこれから私達の発表というところに、社長は遅れてやって来た。

社長の名前は福山純二。小太りでいつもハンカチで額の汗を拭いている。社長とは面接の時に一度会ったことがあるが、印象としては“話しやすそうな人”といったくらいだった。なので社長が登場したことに若干緊張感は増したものの、そこまで大きく影響はないだろうと自分に言い聞かせ、発表のため皆の前へと立った。

藤橋さんや社長、そして他の社員の視線が一気に私へと集まる。これは期待なのか、それとも出来る人間かどうかを見定めているのか。とにかく私は笑顔で明るく話しを始めた。

話しをしながら自分の鼓動がどんどんと早くなることを感じた。なぜなら、私の話しを聞いている人たちの表情が一向に良くならない。自分なりに少しユーモアを加えて話しをしてみたが、それも全くうけない。会議室には私のしどろもどろした声だけが響いていた。

5分ほど話したところで私は発表を終えた。最後に一礼をして、席へと戻っていったが、その脚は震えていた。

「はぁ……」

私が席につくと、社長はあからさまに大きなため息をつき、持っていたペンを机に置いた。私はその様子を見て、心臓が縮みあがった。

「なら次は本村さんお願い」

藤橋さんはそんな社長にお構いなく、本村さんを指名する。本村さんも自分の発表の前にこんな重たい空気となってしまい、とてもやり辛そうだった。私は心の中で本村さんに謝った。

本村さんも5分ほどで発表を終え、席へと戻った。空気は相変わらず重たいまま。少しの沈黙を経てから藤橋さんが口を開く。

「福山さん、どうでした? 二人の発表は」

「……あのさぁ、まず二人にどんな課題出したの?」

「はい。課題図書を出して、1週間後にその感想を発表してもらうって課題を出しました」

「いやね、それは分かるんだけど。これじゃあ小学生の夏休みの読書感想文と同じくらいのレベルなんだよね。どこまでのレベルを求めた課題だったの?」

「今回は最初だったので、特にレベルは求めず、二人にまず発表してもらおうと思いました」

「……うーん。それって何か意味あるの?」

「だから、まずは二人にこういった場での発表に慣れてもらうことが目的ですよ」

「いやさ、ここは小学校じゃないんだから、やるにしてもある程度のレベルは求めないとさ。こんな発表聞く時間ももったいないよ」

「いや、すいません。お言葉ですが、二人の教育は私が決めているので、いきなりそんな口出しされても困るんですけど。なら最初からそうやって言ってくださいよ」

社長は私たちの発表にかなり不満を持っているようだった。そのことは発表を聞く社長の姿でわかっていたので驚かなかったが、何より一番驚いたのは藤橋さんが普通に社長に意見をしていることだった。

二人のやりとりでこの会議の雰囲気は更に悪化していくのだった。

To be continued…

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