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30日間の革命 #革命編 55日目

 加賀と江藤、そして手崎の話し合いは、完全に手崎のペースとなっていた。手崎の言うことに対して、加賀も江藤も何も言い返せない。そんな様子を見かねた手崎がこの場を去ろうとしたとき、後ろから声をかけらた。

 「あれ? こんなところで何してるんですか?」

 3人が振り返ると、そこには橋田の姿があった。女子バレー部が練習している体育館の横で話をしていたため、休憩中に外へと出てきた橋田が3人の姿を見つけて、声をかけたのだった。

 橋田は3人とも面識がある。江藤は言わずもがな、女子バレー部の元キャプテン。加賀とは白の会の活動時に屋上のベンチで出会ってから、たまに話をする仲になっていた。そして、手崎とは友人以上の深い中だった。しかし、これは過去形である。

 手崎が江藤や女子バレー部から嫌がらせを受けていた時、陰で橋田が支えていた。そのため、手崎も女子バレー部で唯一橋田のことだけは信頼していたのだった。橋田は手崎を救うため、そして女子バレー部を変えるためにキャプテンになることを手崎と約束していた。しかし、その約束が果たされる前に、馬場により手崎への嫌がらせは終わりを迎えた。それ以降、手崎は馬場達生徒会と近しい存在となり、他の生徒との交流も増えていったため、橋田とは疎遠となっていた。橋田は約束通り女子バレー部のキャプテンになることが出来た。しかし、その後も手崎と話す機会はなかった。

 かつて二人は保健室で、

 ”いつか橋田が女子バレー部のキャプテンになることが出来て、手崎も江藤に打ち勝つことが出来たら、その時は改めて友達になろう”

 という約束をしていた。しかし、その約束も曖昧なまま時が過ぎていった。なので、手崎と橋田が対面することは久しぶりだった。

 「橋田……。お前部活は?」

 まず口を開いたのは江藤だった。

 「あ、はい。今休憩とったのでちょっと外の空気を吸おうと思ったら、江藤さんたちの姿が見えたので思わず声かけてしまいました。こんなところで何やってるんですか?」

 「いや、何て言うか……。ちょっとね」

 言葉を濁す江藤に少し疑問を感じ、ふと他に目をやると、手崎の姿を見つけた。橋田はここで初めて手崎の姿に気づいた。

 「え、……何であんたもいるの」

 手崎は少し気まずそうにうつむき、何も答えない。

 「ちょ、ちょっと、みんな黙って何してたんですか。教えてくださいよ。加賀先輩も黙ってないで教えてください」

 橋田は加賀にたずねた。

 「……ちょっと説明が難しいけど、簡単に言うと俺と江藤ちゃんが手崎さんに謝りにきたっていうことかな」

 「謝りに? もしかして、あの一件のことですか?」

 「そうだよ。あの時、私が手崎にしたこと。私が間違っていたし、とんでもないことをしたと思ってる。だから謝りにきた」

今度は江藤が答えた。

 「そういうことなんだ。部活中にごめんね。こんなところに3人もいたらそりゃ気になるよね。ちょっと別の場所に移動するよ」

 加賀がそう言うと、

 「いえ、私は今日はここで失礼します。私の言いたいことは先ほどお伝えしましたので」

 と手崎はお辞儀し、再びその場を去ろうとした。そんな手崎に、

 「あのさ! 私たちも話をするべきだと思うんだ。今度声かけるから、二人きりで話そうよ」

 と橋田が声をかけた。手崎は一瞬動きを止めたが、振り返ることなくそのままその場を去っていった。

▼30日間の革命 第一部
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▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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