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2019年夏を振り返る、怨念ポップ★化物屋敷出演アーティストインタビュー

懐かしいタッチと今とを交差させるイラストを描く、イラストレーター鈴木旬さん。

2019年の夏は九州で大雨災害が相次ぎ、北陸や東北で最高気温が40度を超える猛暑が続いた。2018年の史上最高気温41.1度を観測したほどの猛暑には及ばないが、大雨や熱中症による被害者が続出した。
2019年夏、8月3日土曜日、西武鉄道「都立家政」駅、午前9:30。
この日も早朝から突き刺すような紫外線が降り注ぎ、それほど風も吹いておらず、立っているだけで汗が止まらない。
かき氷用のロックアイスを6袋とシロップ、水分補給用に1.5Lのペットボトルを12本ほど駅前のスーパーで買い込み、怨念ポップ★化物屋敷の会場となる古民家「asagoro」へ向かっていた。
築90年を超える古民家で、「怨念」をテーマに7名のアーティストが創作した作品を展示販売、壁に怨念が映し出される映像作品、注目の怪談師による本当に怖い怪談話にかき氷を食べながら耳を傾ける。暑い夏を乗り切るにはうってつけのイベントとなるだろうと胸を弾ませていた。

あれから1年、あの頃には想像も付かなかったようなことが世界中で起きている。
ふとこんなセリフが頭を過った。「見えてる世界が全てじゃない。」「見えんけれどもおるんだよ。」ゲゲゲの鬼太郎の作品の随所に登場するセリフです。
怨念ポップ★化物屋敷に参加いただいたアーティストに『ゲゲゲの鬼太郎』の作者である水木しげるさんから大きな影響を受けたイラストレーターがいます。懐かしいタッチと今とを交差させるイラストを描く、鈴木旬さんを紹介したいと思います。

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妖怪、豆腐小僧を知っているか。トウフボーイを知っているか。

「最初に見たのは、水木しげるさんが『ゲゲゲの鬼太郎』で描いた豆腐小僧ですね」と、イラストレーターの鈴木旬さん。幼い頃から妖怪好き。ただ豆腐小僧には特に思い入れはなかったそうです。

それが、冷奴味ソフトクリーム(?!)のPRのためにオリジナルキャラクターを依頼されたことをきっかけに思い入れが生まれました。
「ソフトクリームはアメリカ的だから、豆腐小僧と50’Sアメリカンを合わせて『トウフボーイ』としました。僕の中ではしっくりきて。ちなみにそのソフトクリームはマニアックな珍味みたいで賛否両論(笑)。僕は嫌いじゃなかったけれど、皆が喜ぶものではなかったですね」

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イラストレーター鈴木旬さんのオリジナルキャラクター“トウフボーイ”。

さてしかし、そこで作ったトウフボーイを、鈴木さんは自身のアイコン的なキャラクターへ進化させました。服装や肌の色など、デザインを何段階も変え、SNSのアカウントにも使用しています。

なぜ、そこまで作りこんだのでしょうか?
「起源を調べたら、はっきりとはわからないのですが、どうも江戸時代に豆腐屋さんが作ったキャラクターだという説があります。当時の社会風刺マンガにも、頻繁に登場していたようです」
妖怪といえば、自然現象への理由付けから生まれたものが多い中、PRキャラクターとして生まれた豆腐小僧。PRキャラだから、特別な能力はありません。
「元祖キャラクター妖怪というのが面白いと思って」

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過去の面白みと現代を組み合わせる。

過去の面白みを、現代と組み合わせて作り上げる。
トウフボーイは、鈴木さんの持ち味をそのまま表しています。
現在、鈴木さんは、過去のマンガやアニメタッチを用いて、アーティストグッズのイラストなどを手掛けています。タッチとモチーフとのギャップが、おかしみを誘います。

原点は「水木しげる」。

昔から、過去のアニメやマンガの絵柄が好きで描き写していた鈴木さん。
原点は、水木しげる。保育園生の頃に、地元の鳥取県出身の漫画家がいることを親から教えられて観た『ゲゲゲの鬼太郎』に衝撃を受けたそうです。親が買い与えてくれた、水木しげるの妖怪図鑑を読みこんでいました。
「水木さんが描く妖怪は、お人柄によるところかもしれませんが、怖さもありながら、基本はかわいらしさとか、とぼけた味わいがある」

大学卒業にあたって、妖怪にまつわる仕事をしたいと、県内の水木しげるロードにある会社に就職。新卒採用はされていませんでしたが、自ら問い合わせて就職しました。
そこで、鬼太郎グッズのイラストなどを描きました。文具、アパレル、食品パッケージなど、様々なグッズに携わったそうです。
その後、転職、上京を経て、現在はフリーランスのイラストレーターとして活動しています。

「懐かしさも感じさせつつ、ちゃんと今の時代と合わせたい」。

「パロディの絵は多いですけれど、自分のタッチとして譲れないポイントはあります。バランスや線の太さやカラーリングとか。単に懐古趣味だけで描いていきたくはありません。懐かしさも感じさせつつ、ちゃんと今の時代と合わせたいと思っています」

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畳敷の古民家と現代と。

怨念ポップ★化物屋敷の会場となった古民家は、畳敷の広間にも板張りの小部屋にも味わいがあり、「どこか懐かしい」という気分を感じた方が多かったように思います。
そして、それでいて、株式会社VISCOMによるインタラクティブ映像作品など、今を取り入れたイベントを目指した。
「懐かしさも感じさせつつ、ちゃんと今の時代と合わせたい」という鈴木さんの言葉は、ある意味でこの日のテーマであったのかもしれないと振り返った。

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