見出し画像

メルボルン大学編入の決断②:アデレード大学とは

前回の続きになります。①の記事では今回の編入に至るまでの時間軸についてお話ししているので、まだ読んでいない方はそちらから読んでいただく方が今回の記事を読む意義がより見出せると思います。


アデレード大学に行って得た痛い教訓

実はアデレードに来た1週間目から、いえ、もしかしたらメルボルンにいた時からこうした結末は予測できたのかもしれません。これから大学や進路を決断する皆さんに参考になるように、今回の編入を通して私が学んだことをまとめます。

①まずは論理的に、あとは自分の直感で

恐らく今回の記事で一番強調したいところだと思います。先述した通り私は留学コストについて一定の額が超えたらマレーシア、そうでなければオーストラリアというように明確な判断軸を持っていました。CS(コンピュータ・サイエンス)の分野の言葉で言えば、if cost>$50000ならMALAY、elseならAUSTRALIAみたいな自動判断装置です。

ただこれだけでは自分の人生を決めるうえで賢い決断は出来ません。そこには人間の思いや違和感と言った直感が含まれていないからです。例を挙げて言うなら、アデレード大学とメルボルン大学の公式サイトを比べてみると"個人的には"メルボルンの方が好きです。昨年トリニティに居たときに潜ったメルボルン大学の授業の中ではScience学部のProgrammingも良かったけれど、心からワクワクしていたのはAsian StudiesとかIndonesian PoliticsとかArts学部の授業でした。

アデレード大学時代に通いつめた
テクノロジー系の学部が集まるIngkarni Wardliの階段より

それはもしかしたら大学がウェブサイトをリフォームするだけ資金を持っていないことを意味しているかもしれないし、自分と相性が良い学問がそこにあることを示唆しているのかもしれない。

②違和感を感じたらとりあえず距離を置く

こうした自分の直感を信じられるようになったのはアデレード大学に実際、進学してからのことです。7/30付の記事でも書いていますが、アデレードに来てからというもの満足の行く友人関係を築くことに難しさを感じていました。オープンで好奇心が強い人が多いメルボルンのことを恋しく思ったことも何度かあります。

ただここが留学の難しいところで、どこに行くかよりも何をするかの方が大事という人もいます。アデレード入学したての当時の私も今の環境に課題を感じているのは「専攻しているCSのことを良く知らないから」「東京で育った身だから地方が合っていないだけ」と考え、自分の行動力で今の状況を打開しようと試みました。

具体的な例を挙げるとすれば大学でブログ執筆者としての仕事を始めたり、登山部の活動を通して留学生1人の中でキャンプに行ったり(9/25の記事)といった次第です。一時は改善の兆しも見えたのですが、どこか軌道に乗っていない感覚もあったので所詮は悪あがきに過ぎなかったのかもしれません(笑)

③周りによく見える < あなたがどう生きたいか

日本でもオーストラリアでも、大学でCS(コンピュータ・サイエンス)やIT(情報技術)の勉強をしていると言うと賞賛の声を言って頂くことが多いです。どこよりも変化が速く実力主義の世界なので、その分野で生き抜いていくことの難しさを皆知っているからです。

8/20付の記事でも話していますが、面白いことにオーストラリア(少なくともアデレード大学)では学部ごとにhierarchy(階級組織)のようなものがあり、特に医歯学と理工学系は他の何よりも崇拝されるみたいです。良いか悪いかは置いておいて、自分はこれを面白い文化だなと思って見ていました。

確かに科学技術系の実学を学ぶことは就職やキャリア形成において重要だと思います。オーストラリアのPR(永住権)獲得のために有利になることも間違いないでしょう。

ですが、江戸時代の国学者である本居宣長の『うひ山ぶみ』で述べられるように人文科学のような虚学は、現実の社会に直接の貢献はしない一方で「人生の意味」だったりとか「今自分がここに存在している理由」とかを体系的に考える体力と精神を養ってくれるので、根底から個人や社会を支えているといえると思います。

World Economic Forumの『The 2023 Future of Jobs Report』によれば今後5年で重要となるようなスキルは問題解決力や批判的思考、コミュニケーション能力、不明確さへの忍耐などで、これらはすべて人文社会の学問が強みとしているものです(The Sydney Morning Herald)。

記事でも述べられていますが、経理やコンピュータの知識などは必要であれば就職してからでも学べます。必要なのは結局、「自分は何に対して(ドキドキしすぎて心臓が飛び出しちゃうくらいに)興味を持っていて、その為に大学をどう使い倒したいのか」に尽きるのかな…とかなり遅い気付きでしたが、考えるようになりました。

今後の大学生活について

ここまでメルボルンのことばかりを話してきてしまいましたが、アデレードは治安も良いし留学の費用も抑えられるので良い場所です。前回の記事でお話しした通り、アデレード大学は学問のレベルも高いので留学が初めてでサポートが手厚いオーストラリアの大学を目指している方にはうってつけの環境だと思います。

アデレードの中華街にあるAsian Supermarket。近くにはLittle Tokyoという日本食を扱うお店もあるので初めての留学の方でも安心だと思います。

ですが、自分のやりたいことが変わってしまった以上、私は卒業の学位をメルボルン大学で取ることに決めました。今回の編入によって来学期からの学費はアデレード時代に比べて1.4倍はかかることになります。ただ、幸いなことに自分が情熱があることを追求してほしいという家族の思いで支援額を増加してもらえることになったので、貸与型奨学金やアルバイトを上手く組み合わせることが出来れば、卒業後までの資金を調達できる見込みです。

①メルボルン大学で取りたい授業

私は残された2年半、メルボルン大学で「世界一住みやすい都市」の学生生活を全力で楽しみたいと思っています。一方でこれから行いたいこととしてはアデレードでいろいろあったので、「若者が制約を受けず自由に才能を開花させ、他者との繋がりを大切にできる世界」を実現するにはどうすれば良いのか、主に文化人類学という学問を通じて学びたいと思っています。

同じオーストラリアにいるはずなのに、アデレードとメルボルンでは学ぶ環境が全く違いました。それは、そこにいる人々の価値観に違いがあったからなのか(社会的要因)、日本のように地方格差があったからなのか(環境的要因)、私にはまだ分かりません。

ですが、いま思うことはよりwell-educatedでliberalな人生を送ることが出来る環境は自分にとってはメルボルンであるということであり、彼らとまた勉強仕事を共に出来る日が近づいていることを思うとワクワクが止まりません。

編入学なのでいくつか取れない授業もあるのですが、Global Youth (GEOG10003)といってIndian Himalayasで若者の地方格差について研究するJane Dyson先生の授業(東大でも講義をされたことがあります)、先住民の方とのインタビューも行いながら「自然と共生すること」をテーマに学ぶAnthony Romano先生のEnvironmental Change & the Human Journey (GEOG20015)という授業、トリニティ時代に潜った授業で「Rise of China」というめちゃくちゃ面白い講義を展開してくれたChinese StudiesのレジェンドMark Wang先生のChina Field Class (GEOG30007)という中国短期留学プログラムなど、メルボルン大学には素晴らしいクラスが沢山あります。

②その他、これから楽しみにしていること

メルボルンの良いところは、やっぱり学生数が多いので外部の活動も豊富なこと。お金の面もあってアルバイトもしなければなりませんが、出来れば交換留学プログラムで欧州か北米(出来れば両方!)を一周することはどうしても達成したいです。

あと、トリニティを卒業してから長らく出来ていなかったダンスや演劇の活動も久しぶりに再開したいですね。芸術的で自由な雰囲気がある街なので、才能がある学生とまた踊れる日が来るとなると待ち遠しいです!

また就職にはめっぽう弱い学位に移ってしまったし経験も浅いので今不安なことを挙げるときりがないのですが、これからルームシェアする友人だったり大学の先輩だったり、身近な人を頼って一歩ずつ先に進んでいきたいと思います。

この半年間いなかった分、トリニティの友達とも長らく会えていなかったので、久しぶりのキャッチアップを楽しみながら慎重に新学期の準備を整えていきたいです。


①と合わせて、とても長くなってしまいましたが今回はこの辺で。
来週からは一時帰国中ということで、数週間は日本からの投稿になるかと思います!お楽しみに~。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?