【詩】とおくの潮騒
心臓のまんなかに
貝殻があって
うずを巻いてとんがった先は
外界との唯一の交信手段なの
ダイアモンドよりもずっとずっと硬い
心臓をつるぎで突き刺したくらいじゃ決して砕けない、
わたしはそのなかにいる
べつに息をころしてる訳じゃないの
隠れてるわけなんかじゃないのよ
かくれんぼしてて
見つけてもらえなかったあの頃みたいな
喚きたくて
砂を蹴散らしたくて
まっしろな壁にコブシの跡をつけたい
紅炎みたいな煮えたぎる衝動が
さめた頃にはもう
わたしはここに閉じこめられてしまった
ここからの眺めはきれい
貝殻の天井はきらきらしている
ここからの音はおだやか
水中で聴こえる拍手みたい
わたしは歩いている
はだしで歩いていく
うずのなかへ
回転はるるる
足音はろろろ
出口のない未来へ
内耳のふるえさえ届かない裏側へ
ネムリの調べを口ずさみながら