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あるトップ営業のポリシー

営業力の話。


僕はある大手のIT企業に勤めている。
一口にIT企業と言っても色々種類はあると思うが、そんな中でも僕が勤めている企業は「SIer(システムインテグレーター)」という業種だ。
※先行き不安な業界とかピンハネの巣窟とか言われているが、その辺りの細かいことについてはまた別の機会に書こうと思う

そんな業界で活躍するある先輩敏腕営業のポリシーを聞くことができたので、今日はそのことについて触れたいと思う。


①SIerってそもそも何?


あまり業界外の方には馴染みがない業種だと思うので簡単に説明すると、
「お客様がやりたいことをIT技術を駆使して実現する」職業だ。
(人によって認識は違うと思うが僕は勤めていてそう感じている)
多くの人はIT企業と聞けば「Google!」とか「Amazon!」といったテックジャイアントと連想すると思うが、実は国内IT市場の大部分はこのSIerが占めていたりする。

少し古い資料だが、以下のグラフは総務省や経済産業省がIT産業のカテゴリを区分けしたうえでその市場規模を示したものだ。

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実はSIerはグラフ内の「受託ソフトウェア開発」と「情報処理サービス」を合わせたものと一般的に言われており、グラフを見て分かる通りその市場規模は10兆円程になる。

ちなみに皆さんさすがに名前は聞いたことがあるであろうNTTデータは国内最大手のSIerである。

意外と世の中にとって身近な、少なからず影響を与えている業種なのである。


②SIerの営業って?

SIerはかなりアバウトに大別すると営業SEがいる。
(ちなみに僕は根暗にも関わらず、小心者ゆえに鍛えられた「多弁」と「印象」の観点だけで営業に配属された。なんだかんだ3年目だが未だに適性は感じていない)

物を売るビジネスとは毛色がだいぶ異なるのでSIerの営業というとイメージがつきにくいと思うが、ものすごく簡単に言うと以下のような流れを踏む。

 1,お客様の課題をヒヤリングし、根幹にあるNeedsを引き出す
 2,課題にミートする具体的なIT機器やソフトウェア、サービスに
  落とし込み、課題解決ができるシステムイメージをお客様と共有する
 3,お客様先に納品、実装し相互の互換性をとることで1システムが完成
※以下イメージ図

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正直この中で1の「Needsの発掘」が最も重要である。Needsや課題感に少しでも認識のずれがあればそのプロジェクトは高確率で失敗すると言っていい。
※それについてもまた別の機会で書こうと思う

そのため、SIerの営業(その他の業種もそうなのかもしれないが)で最も重要とされるスキルは「課題発見力」であるとされることも多い。


が、これは正直身に着けるのがとても難しいと感じている。
そもそも僕のような「人付き合いが成立しているように見せかけている真の意味でのコミュ障」には相手の言葉からNeedsを引き出すなんてあまりにも難易度が高いスキルだ。

しかし一部にはいるのだ。
ほんの少しの会話から相手の心情、問題を理解し解決の糸口を提供することができる敏腕営業たちが。

③あるトップ営業のポリシーについて

実は今のトレーナーがそんな敏腕営業のうちの一人だ。
しかも社内でも指折りの優秀さで、過去、前職でアジアトップセールスの称号をかっさらっていった輝かしい経歴をもつ。「日本」ではなく「アジア」である。

周囲からも当然とても高い評価をされている人物で、そんな人に面倒を見てもらえているのだから本当にラッキーだと思っている。
僕のような意欲も低く頭の回転も遅い人物が今の部署からつまはじきにされていないのはひとえにこの人の指導のおかげだと思う。


僕はよく顧客訪問の資料レビューやMTGの流れをイメージしたストーリーの共有を行っているが、そのときに僕がこのようなことを言った。

「さらなるNeedsを発見して次の訪問につなげるために、〇〇の観点で、お客さんに他に感じている課題感はありますか?とこのタイミングで聞いてみようと思うのですが、、」

これを聞いたトレーナーは、曇ったような声色でこう言った。

「俺、、ほかに課題はありますか?って表現は絶対に使わないんだよね」

自分は訪問時よく話をつなげる便利なフレーズとして使っていた表現なので、面食らってしまった。


「この聞き方にどこかまずいことがあるんですか。。??」
恐る恐る聞いてみたところ、どうやら以下のような意味でこのフレーズを用いないらしかった。


「何か現状抱えている問題や課題、これからやっていきたいことなどありますか?」といったニュアンスでお客さんに問いかけを行う営業がいるが、それは営業をしているとは思わない。
そもそもその聞こうとしてる課題ややりたいことをお客さんが分かっているのならお客さんは自分から行動を起こしているはずだ。
「何かありますか?」と口を開けて餌を待つ小鳥のような質問をする営業は「自分で問題発見ができません」と思考停止していることを自分から公表しているようなもので、課題はこちらから「気づかせる」ことができてやっと自分たちの存在価値があるのだ。
もっと言うと、自分から課題を定義、または「今期の計画として検討しているプロジェクトは何かありますか?」というように範囲を絞って使うならまだいいが、ふわっと聞いてしまうとお客さんはとくに贔屓していないチャレンジャーの営業にべらべらNeedsなどしゃべってくれない。


なるほど、と納得した。
ヒヤリング不足を指摘されたときのMTGを振り返ると、
いつも曖昧な質問の仕方でNeedsを探ろうとしていたときに限って
大きなチャンスにつながるような投資計画などを聞き出せていない。

範囲を広くとって釣れる情報を増やすという考えに基づいていた質問だったが、それは単に自分に知識が少なく大物を釣れる範囲の見極めができていなかったことの証明だったのだ。


恐らくこれはSIerに限らず、コミュニケーションという観点において有用な考え方であると感じた。

相手に好印象を抱いてもらうために「質問」は重要なツールとなるが、当たり障りのない質問ばかりしているとウザがられたりつまらない人間とみられる。
どのような質問が好まれるかというと、それは「相手に理解してもらえている」と感じるような質問をすることだ。
つまり範囲を絞って深堀をしていく過程が重要なのだ。
※この辺りは大学時代学んだ心理学の話になるので、これもまた別の機会で書こうと思う


営業と恋愛は似ているというが、僕は今日トップ営業のポリシーからセールストークについてとコミュニケーションに対する気づきを得ることができた。


しかしつまるところ、範囲を絞ったトークを展開するには知識と教養が必要なので勉強が必要ということだ。。
その次元ははるか遠い。





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