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医師が製薬企業に求める疾患理解の「解像度」のレベルとは?

株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

医師と円滑に対話するために、製薬企業・MRは「医師が日々向き合っている患者や処方の実態を、もっと詳しく知る必要がある」と言われるA先生のお話、今回は第5回目です。

なお、先生の略歴を含む、第1話はこちらです。


疾患理解の解像度を上げることが重要

こんにちは。医師のAです。
MRの方々は、会社の研修などを通じて疾患について学ぶ機会を継続的に持たれているのではないでしょうか。

ただ、その理解の「解像度」のレベルが、医師がMRに対して「こうあってほしい」と考えるものに対してどれくらいの水準なのか、考えることはありますでしょうか。

私は、医師の置かれている状況に、表面的ではなく、真に「共感」できるレベルの解像度が必要なのではないかと思っています。
ちょっと抽象的で分かりづらいですかね。

話の聴き方、うなずき方といったヒアリングの技術も大事ではありますが、それはあくまでソフトスキルです。

医師は、MRとのちょっとした言葉のキャッチボールから「この人はどの程度、疾患のこと、自分(医師)の言ったことを理解してくれているのか」を瞬時に感じ取るものです。

「共感」を示すリアクションをされても、それが

  • 表面的なスキルや、不完全な理解に基づくものなのか

  • 真に理解し共感してくれているものなのか

その違いは分かります。

医師が何かあった時に相談したくなるMRは、そのどちらのタイプでしょうか・・・?
当然、多くの場合は後者ですよね。

後者のMRになるための重要な要素の一つが「疾患理解の解像度を上げる」ことだと思っています。

60代男性患者の症例に基づいた、糖尿病の疾患理解

基礎疾患に糖尿病があると病態のコントロールが難しくなることは皆さんご存知かと思います。

糖尿病患者さんは、続いて血管病変が進行し、心筋梗塞を引き起こすと、心不全に進みます。

これくらいまでは当然MRさんも理解されていると思いますが、それではまだ、医師のリアルを理解しているとはいえません

ユカリアさんの電子カルテデータベースから、高血圧、糖尿病に心筋梗塞が起こり、心不全が進行する60代男性のリアルな病歴を供覧してみます。


【既往症、合併症】
高血圧、慢性心不全、下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)、心房細動、胃潰瘍、陳旧性脳梗塞、重症下肢虚血、2型糖尿病、認知症、CKD、心筋梗塞、狭心症

【現病歴】
糖尿病をベースとして、脳梗塞および心筋梗塞とそれによる慢性心不全を合併して通院していた患者。

【経過】
10月26日
胸部不快と呼吸苦を訴えてQQ搬送となった。
CTR55%の心拡大とSpO2 90%の低下みられ、BNP 1153.9↑と上昇しており、心不全の増悪と診断され入院となった。
CK-MBの上昇がなく、診断が遅れたが、心カテをすると右冠動脈の閉塞による心筋梗塞が原因であった。

11月19日
ステント留置によって心不全も改善し、退院となった。
この患者は、血管病変として右下肢ASOも重篤で、重症下肢虚血の状態で、その痛みは生活に支障を来すほどであった。

翌年11月29日
血管拡張術施行するも改善せず、人口血管を用いた大腿動脈膝窩動脈バイパス術を施行。

翌々年2月16日
外来でフォロー中に右鼠径部に感染を伴う血種ができ、切開排膿するも創部感染および創部からの出血が治まらず。

2月18日
大出血によるショック状態となった。緊急手術で人工血管の再吻合等行うも完全止血に至らず、創部も閉鎖せず、開放創のまま入院管理となった。

11月10日
長期入院を経て一旦退院。

11月20日
強い皮膚炎の発症もあり、再入院。
以降半年経過後も入院が継続しており、その間にも胸痛、胸苦、右下肢浮腫など、心不全症状を疑う症状が出現している。


いかがでしょうか。

「糖尿病から血管病変が進行し心不全に至る」の変遷が、具体的にはどのように進むのか、また、患者さんがどれだけの肉体的・精神的苦痛を受けるものなのか、かなり理解の「解像度」が上がったのではないでしょうか。

なお、一番大変なのはもちろん患者さんですが、こういった患者さんを複数抱える医師の治療行為や試行錯誤がいかに大変か、ということも感じ取れると思います。

MRは、担当している薬あるいは医師に関係する疾患を、こういった極めて具体的な素材で学習することが必要なのではないでしょうか。

そのうえで医師と対面すると、真に医師に「共感」したコミュニケーションを取ることができ、それは医師の側にも確り伝わり相互の信頼関係を生むのではないかと期待します。

それでは、今回のお話はここまでです。ありがとうございました。

第6話はこちら


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