【読書】楽観主義vs悲観主義
人間の脳は、物事を楽観的に考えるように出来ているらしい。著者はこれを楽観主義バイアス/Optimism biaseと呼ぶ。将来の幸せや成功を夢描き、それを達成するよう行動し努力する。脳科学者ターリ・シャーロットさんの書籍をまとめた。
要約
統計的にも人々の楽観的志向はわかっており、著者はこれを楽観主義バイアス/Optimism biaseと呼ぶ。
人間の脳というのは、将来の幸せや成功を誇張評価するよう進化したとのこと。そういった幸せや成功に向かって、人間本人の現実認識や行動原理が働くようになっている。
就職氷河期もあり、色々と社会に揉まれる中で、常に最悪のケースを想像するようになったが、それを防衛悲観主義/defensive pessimismといい、統計的にそういう人は早死にする傾向にあるらしい。
1.本の紹介
本のタイトルは「the optimism biase - why we're wired to look on the bright side」(2011年刊行)で、邦訳は現時点ではなし。
著者はアメリカ人神経科学者/neuroscientistのターリ・シャーロットさん/Tali Sharot。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとマサチューセッツ工科大学にて認知神経科学の教授を勤める。ニューヨーク大学で心理学と神経科学の博士号を取得。
Ted Talksで超分かりやすく脳の楽観主義的傾向とその役割について説明している。
2.本の概要
人は自分の将来の展望を楽観的に考える傾向があると著者は言う。まあ確かに、なんの根拠もないのに明日こそはパチンコで勝つと信じる人、浪人して一年後再受験して言い大学にはいれると信じる浪人生、来年こそは昇進できるはずと信じる会社員、離婚するケースも多々あるのに自分達は違うと考えて結婚するカップル、生まれてくる子供がもしかしたら天才かもと信じる親等が一例といったところ。統計的にも人々の楽観的志向はわかっており、著者はこれを楽観主義バイアス/Optimism biaseと呼ぶ(欧米諸国のみならず世界中の社会グループにも見られる傾向とのこと)。
本書は人間の楽観主義バイアスの解明に焦点を当てた本。結論から言うと、人間の脳というのは、将来の幸せや成功を誇張評価するよう進化したとのこと。そういった幸せや成功に向かって、人間本人の現実認識や行動原理が働くようになっており、実際の健康や進歩、成功につながる。
私自身そうなのだが、自分や自分を取り巻く状況に関して、あまり楽観視しないようにしている。学生時代や南ア留学をした頃は全てが自分を中心に回っているような感覚で、将来もポジティブに考えていたが、就職氷河期もあり、色々と社会に揉まれる中で、常に最悪のケースを想像するようになった。
筆者はそんな志向を防衛悲観主義/defensive pessimismと呼ぶ。そもそも期待しなければ、ダメだったときに傷つくこともない、という考えが背後にあるが、これは間違いとのこと。期待値が低かろうが高かろうが、失敗したときの痛みの度合い変わらないことが実験結果からわかっている。
それどころか、こういった悲観主義は、実際に物事が悪い方向へと転がってしまう傾向にあるという。同じ病に冒された楽観主義者と悲観主義者を比較した結果だが、信じる人は救われる的な精神論ではなく、楽観主義者は希望ある未来に向かって色々とやるべきことをやるから。
きっと病はなおる、来年はチャンピオンシップで優勝する等のポジティブな未来を想像することで、本人達は自然とそういった未来に向かって努力をし、結果としてそういった未来が実現する傾向にあるという(あくまで統計的には)。それをSelf fulfilling prophecyという。
それは会社のマネージメントや育児にも通じる事でもある。上司が部下に期待をすること、親が子供にポジティブな言葉をかけてあげることで、本人達は自然とそういった未来に向かって歩き出す。
興味深いストーリーが盛り沢山だが、ここでは二つ紹介。ひとつは幸せに関する調査結果。イギリス調査会社Ipsos MORIが2015人を対象に行った調査ではいか5つが幸せファクターとのこと。
家族との時間
今の2倍稼ぐ
健康
友人との時間
旅行
しかし、年齢などいくつかの要因に左右される模様。
さらに、上述調査会社に調査結果によると、結婚したカップルの人生満足度は、子育てを始めると減少し始め、子が思春期を迎える頃に底を打つ。同様の結果が、ノーベル賞授賞経済学者のダニエル・カーネマンによって指摘されている。子供がいて幸せですか?的なざっくりした質問ではなく、子持ちと子なしカップルの日常を細かく追跡、日常の瞬間ごとの感情の起伏(喜怒哀楽)を丁寧に拾い上げ比較したところ、やはり子がいないカップルのほうが人生への満足度が高くなるとのこと。それでも子供をほっするのは、生物学的本能/biological imprintであると著者は言う
他割愛。
3.感想
初めは取り留めもない話だなあと思って読み流していたが、読み進めると徐々に引き込まれていった。色んなエピソードや既存研究を駆使して、いかに人間の脳が楽観的に物事を捉えるようにできているか、そこから派生して、人は幸せをどう捉えるか、人生では何が重要かなどを軽いタッチで論じている。
上述の通り、私は悲観主義が染み付いている。おそらくそういう人は多い気がする。会社勤めをすると、どうしても最悪の場合を考えて動くよう言われるからというのもある気がする。ただ悲観主義は早死にするという著者の主張を信じ、意識的に悲観主義を払拭していけたらと思う。
この点は、コーネル大学による高齢者を対象とした調査、人生の満足度をあげるためにしたことがいいことをまとめた30ヶ条、にも通じるものがある。100歳まで生きると思って自分の体を大切にせよとのこと金言だったか。
最後に子持ちカップルの幸福度は低いという研究結果には違和感しかない。そもそも日々の子育ては重労働、負荷が増えれば感情もネガティブになるのは当然。その瞬間その瞬間の人生満足度ではなく、人生の最後に笑って死ねるかというソクラテス的な観点のほうがしっくり来るのではないか、と思う。子供を作るチャンスがあったのに作らないという選択をした時、最後本当に後悔しないのだろうか?私はしそうだったので、妻と話し、それ以上何も深く考えず子供を作る決断をした。
最後に一言
さくっと読めるのでおすすめ。色々と自分を振り返る切っ掛けになる
本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。
併せて、他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。
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