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父と娘の日々

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認知症が進行していく、憎たらしく愛おしい父との、尊い日々の記録。
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2022年5月の記事一覧

私の喜び。

私の喜び。

ニコニコのあの子が
ポジティブにいこう〜
と言った。

ニコニコのあの子は
こころがパッカーンと開いたと
手のひらを開いてみせた。

ニコニコのあの子は
まあるくふくらんだおなかを
幸せそうに撫でていた。

ニコニコのあの子と
ニコニコのあの子が
もうすぐ出会えることになっているのは
あなただったんだと気づいた瞬間
ニコニコがパンと弾けて倍になった。

小学生の夏休みの
田舎で見た木洩れ陽の記憶み

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ポジティブ連鎖。

ポジティブ連鎖。

丸2日眠っていた父は
「一睡も寝れなかった。。」
と言って起きてきた。

ずっと寝てたよ〜と言うと
「みんなそう言うよね。。」
と不服そう。

そうか、寝れてたんだ〜
とホッとしたりはしない。

こういうときは
そうかあ、辛かったね。。
と言ってあげたら良いのかな。

頭ではそう思っても
きっと現実を理解できると
望みを捨てられなくて
父の望まないことを言っている。

元々はいつも寡黙に微笑んでい

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父と共に泳ぐ。

父と共に泳ぐ。

父は去年の今頃からずっと
家が競売にかけられて売れてしまったので
出ていかなければならないという妄想の中にいる。

始めの頃はとても焦っていたし
それは妄想だと言っても聞かないので
「大丈夫だよ、いざとなったら
山の家(私の家)があるよ。」
となだめると
「京都なんて遠くて無理だよ〜」と
嘆いていた。

ところがあまりにしつこく
立ち退きを命じられるらしく
もうここが自分の家だと思えなくなっていて

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自分の山登り。

自分の山登り。

ケンチャンがまたすごい荷物を背負って
山に絵を描きに行ったので
10日ほど家で大人しくしていることになる。

ユーチューブも飽きたし
庭がジャングル状態なので
草むしりを始めたら
これがけっこう楽しい。

種が落ちたり
鳥が運んできたりして
いろんなところに生え始めている小さな木も
鎌を買ってきてバッサバッサと切る。

スカッとしたり
こころが落ち着いたり
気持ち良かったりして
暇つぶしにもってこ

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挑戦した話。

挑戦した話。

あまり美しくない話だけど。

父は便秘と下痢を繰り返すようになってしまい
おしりが悲鳴をあげているようで。

背中をまあるくして
痛そうに座っている。
なんとかできないかと考える。

なかなかお風呂にも入ってくれないので
おしりを清潔に保つためにも
ウォシュレット!と思い
二階のトイレだけにある
ウォシュレットを使えと言っても
なかなか階段をのぼるのがおっくうなようで
一階のトイレにもウォシュレッ

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泣かす昇進。

泣かす昇進。

先日父の介護認定の更新をしたら
今日新しい介護保険証が届いた。

要介護3と書いてあった
なんだよ もう3になっちゃったのか。。

要介護2から1に繰り下げかもと
勝手に思い込んでいた。
調査員さんが大変そうだと言ってくれてたのは
社交辞令じゃなかったんだ。

3になったら選択肢が広がるのに
と思っていたけど
なったらなったで悲しい。

昨日は父が寝てる間に抜け出して
ひとりでおいしいものを食べち

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父らしさ。

父らしさ。

それにしても父は
良くしゃべるようになった。

トンチンカン過ぎて
何を言ってるのか
全然わからないのだけど。

先日の
新しいケアマネージャーさんとの
ご対面のときも
それはそれはペラペラと良くしゃべっていた。

私はこんなに良くしゃべる父を
こうなるまで知りませんでした
と言ったら
ケアマネさんがびっくりしていた。

ケアマネさんの前では
父はやっぱりよそゆきの父で
でもいつも聞けない父の気持

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脳にも田んぼにも水。

脳にも田んぼにも水。

父が眠っている日は
まるでいないみたいに静かで
何も要求してこないし
何の手もかからないのだけど。

基本的に
待っている
父が起きたときのために。

チャンスとばかりに
せめて水分は摂らせないと
脳みそがどんどん乾いていってしまう。

私もせっせと水を飲むようになった。
脳みそが乾いたら嫌だから。

脳みそは良質の油と
水を求めているそうだ。

今日は一日雨で
外もしっとり。

篠山のたんぼも潤

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レーズンサンドに望みをかける。

レーズンサンドに望みをかける。

いないみたいに眠り続けてた父は
だいたい3日目の朝くらいには
ふつうの顔して起きてくる。

私は3日前までのこととなると
いつもなんとなく忘れてしまう。

だから
父がいつものように
ちんぷんかんぷんなことを言い出すと
あれ?まだそんなこと言ってるの?
と頭が不思議な感じになる。

この一年ずっと
同じことを繰り返しているのだけど
なぜか脳みそが
なかったことにしようとする。

眠り続けて起きてき

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ウザい時のこと。

ウザい時のこと。

眠り続けていた父が起きてきて
ふつうの状態を通り越して
ちんぷんかんぷんを言い出すと
始めはうんうんと聞いてみたり
笑い飛ばしたりできるけど
間もなくウザくなって
イライラしてくる。

妄想や幻視に
私を組み込んでくるのがまたウザい。

今日なんてお客さんが来て
インタビューがあると言うので
うんうんと聞いてたら
私にインタビューしたがってる
なんて言うから
たまったもんじゃない。

ちょうど買い

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感謝できるおばあちゃんを目指す。

感謝できるおばあちゃんを目指す。

今日はずっと観たかった映画を観に
本厚木までドライブ。

認知症になってしまった
高齢のおばあちゃんを
もっと高齢なおじいちゃんが介護する姿を
娘が撮影し映画化したドキュメンタリー。

携帯もナビもないので
手書きの地図を持っていったんだけど
しっかり迷って
本編上映開始直前に滑り込む。

泣いたり笑ったりしてたら
あっという間に終わってしまった。

自分が認知症になってしまって
混乱して泣きわめ

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ふつうのレベル。

ふつうのレベル。

昨日の父はごきげんで
自分からお風呂に入ってサッパリ。

養命酒も飲んで
拍車がかかったようで
一度寝たはずなのに
夜中にケンチャンに手伝ってもらって
古〜〜いワインを開けて
チーズとハムも並べてもらって晩酌。

せっかく開けた20年もののワインは
すっかりワインビネガーになってしまっていて
残念だったみたいだけど
よっぽど調子が良かったのだろう。

ケンチャンも楽しかったと言っていたし
父がとっ

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心にも虹。

心にも虹。

朝から辛そうな父。

顔を見に行く度
苦しいと言っている。

寝てても起きてても苦しそう。

でもどうやら
自分でも何がどう苦しいのか
あんまりわかってなさそうだ。

今日はマスクを手に持ってじっと見て
これはなあに?となっていた。

自分からほしいと言って
時々使っているのに。

そのうち相手が何を言ってるかどころか
自分が伝えたいことの
単語が出てこなくなって
伝えられなくなってくるのかな。

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選択するということ。

選択するということ。

散歩道においしそうなベリーがなっていた。

今日も通ったら
なくなっていた。

食べたかったけど
ちょっと怖い。

昔みたいに直感だけでは
口に入れられなくなった。

今週から週に一回
父の排便コントロールのために
看護師さんが来てくれることになった。

時々看護師さんが
家に来てくれるということの安心感。

自分だったらなるべく
お医者さんにはかかりたくないのに
自分以外のひとは、最低限でも

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