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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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#怖い話

禍話リライト「庭の塚」

チャラチャラした感じの人だったから、話してくれたのだろうと思う。 けれど、そんな雰囲気の割にはちゃんとした人だ、ということが話しているうちにわかった。おそらく万事要領がいい人なのだろう、という男性だった。 そんな彼だったから、同じようにチャラチャラした友人たちよりも早く自動車の運転免許を取得していたという。 大学二年生の頃、仲間うちで、お前免許持ってるんだって、という話になった。素直に認めるとすげえな!と言われる。彼は最短で免許を取れたタイプの人間だったが、周りには試験やら

禍話リライト:もやがでる家

A君は大学で、資格取得を目指す真面目なサークルに入っていて、活動内容も資格の勉強を中心に行なっていた。 ある日サークル仲間のB君が浮かない顔をしていたので「どうしたの?」とたずねた。B君いわく、隣の家のおじさんが50歳ぐらいで亡くなったとのこと。気さくな人でB君にも話しかけてくれるような人だったらしく、それで落ち込んでいるのか…と思いきや、B君はこう続けた。 「半年くらい前から、おじさんが自分の家の玄関が写った写真を見せてくるようになったんだ」 その写真は夕方おじさんの

禍話リライト「かわわら」(怪談手帳より)

形五六歳の小児のごとく、遍身に毛ありて猿に似て眼するどし。常に浜辺へ出て相撲を取也。人を恐るゝことなし。され共間ちかくよれば水中に飛入也。時としては人にとりつきて、水中へ引き入レて其人を殺すことあり。河太郎と相撲を取たる人は、たとへ勝ても正気を失ひ大病をうくると云。(略)河太郎、豊後国に多し。其外九州の中所々に有。関東に多し。関東にては河童(かはわらは)と云也。 『日本山海名物図絵 三』より「豊後河太郎」 小学生の頃の、とある夏休みの話だ。 おばけ好きのAくんは、その夏、

【怖い話】 ヨーヨーの家 【「禍話」リライト 51】

 最初から最後まで、よくわからない話。  小学生の頃、友達の家に泊まったという。  お金持ちの友達だった。豪邸、というほどではないのだが、結構な広さの家だったらしい。  お父さん、お母さん、妹さんと友達の4人家族と晩ごはんを食べる。おかずももちろん、お米もなんだか、自分の家で食べているものよりいい味がする。  ちょっと見たことのないお菓子をいただいたりする。これも上品な味わいで、実に美味しい。  いやぁ、お金持ちの家って……お金持ちだなぁ。いいなぁ。   子供ながらにそう思

【怖い話】 ■# Щ腴 工業 【「禍話」リライト 50】

 どこまでが本当に起きたことなのかわからない、という。 「久しぶりに実家に電話したら、母親が言うんですよ。『小学校の同窓会のハガキが来てる』って。それで俺、懐かしいなぁと思って」  Sさんは生まれ故郷から離れて就職し、そこでずっと働いていた。 「年末年始やお盆に帰ってもよかったんですが、こっちにも友人がいましたから……それに、盆正月の混んでる時期に帰るのもおっくうでしたし」  気づけば5年以上、地元から遠ざかっていたそうである。  小学校の同窓会とは珍しい。もちろんは

禍話リライト「たのしい禍家」

 こういう親戚がいれば冠婚葬祭は助かるだろうなという印象の、明るい男だった。 「……怖い話があるんです、聞いてもらってもいいですか」  男はそう口火を切り、とある家にまつわる話を始めた。 ●  私、妻と小学生の娘と三人暮らしなんですけれどね。家を買ったんですよ、それが職場からは通える範囲で、娘も校区を変えなくて済みそうな場所にすっごく安い一戸建ての物件を見つけちゃって。中古とはいえほとんど新築と思えるくらい新しくて、それでこの値段なら全然買えるぞって勢い付いちゃいましてね

禍話リライト「鬼婆神社」

 人が見てはならないものがある、という話。 ●  仲間内で「肝試しに行こうぜ!」ということになったそうだ。だがあまり怖過ぎるところには行きたくない。そこまで怖くなくて、けれど雰囲気はほどほどに味わえる。そういう都合のいい場所はないかと話し合ったところ、一人が「あそこはいいんじゃね? 鬼婆神社」と言い出した。  鬼婆神社。正式には神社かどうかも怪しいらしく、鳥居も鈴もないが本堂らしき場所は残っている。地元の者は一様に「鬼婆神社」と呼ぶ――そういう場所があるそうだ。 「それ

禍話リライト「一番そばの母娘」

Tさんは、今でもその体験のことを「何だったんだろうな」と思い返すことがある。 まだ小学校に通わない年齢のころの話だ。 しかも彼の家族も同じ体験を共有していて、やはり何だったんだろうなあ、と口にすることもある。だから決して自分の頭の中で作り上げてしまった出来事ではない、という。 幼いTさんがお母さん、お姉さんと一緒に家の中で遊んでいたときのことだ。 突然、どぉん!という凄まじい音が外から響いた。それまで聞いたことがないような音だったという。 かなり近い音だ、という気がした。家

禍話リライト:庭と蝋燭と子供

A君がまだ小学校にあがる前ぐらいに、父方か母方か忘れたが、とある田舎のおじいちゃんの家に両親と一緒に行ったことがある。幼いながらにわかったのは、お父さんもお母さんもあまり行きたく無さそうだったということ。2人とも、向かっている途中の車内で、 「○○さんのとこ、嫌だなあ。行きたくない、気が重いなあ。」 というようなことを話していたのを、うっすら覚えている。 到着したその家はずいぶん山奥にあった。両親は「ご無沙汰してました~」と明るく振舞っていたが、幼少のA君にもわかるほど必死

禍話「あかねこ」

 これは、サクラさんがあるマンションに住んでいた時の話である。  サクラさんの住む部屋の隣には、仲のいい家族が住んでいた。  父親と母親と、お姉ちゃんと弟。いつでもにこやかで、休日には家族そろって出かけるくらい仲のいい一家だった。サクラさんは一人暮らしだったので、見かけるたびに羨ましいなと思っていたという。  そのマンションでは、定期的に清掃作業などのイベントが催され、住人どうしの繋がりは強かった。誰もが見知り合いといった感じで、サクラさんも隣のその家族とはそれなりに親

禍話リライト:呼ぶビデオの女

大学2年の夏休み。 サークル仲間のひとり、A君が 「ゴミ屋敷になっちゃってるから悪いけど手伝ってくれないか」 と、親戚の家を片付けるバイトの話を持ってきた。聞けば、報酬もけっこう良い。サークルのメンバー7~8人で行くことになった。 バイト当日、朝集合して到着したその家は一軒家。思わず「これ全部!?」と戦々恐々としたが2階建ての2階部分だけだとのこと。A君から順に玄関に入ると1階の居間から老夫婦が出てきた。「よろしくお願いしますねー」と迎え入れてくれたが特に何の説明もなく、2

【怖い話】 母と子のビル 【「禍話」リライト 49】

 不確かなウワサを元に、妙な場所へ行かない方がいい、というお話である。 「俺が大学時代の話なんですけどね。えーと、まぁ、そのー。そこの廃ビルなんですが、んー、なんて言うんですかねぇ~」  やけに口の重い彼の話をかいつまんで言うと、 「その廃ビルでは夜になると、カップルがやってきて、人目を忍んでコトに及んでいる」  というウワサがあったそうである。   そんな馬鹿馬鹿しい話はない。  愛し合う二人が何故そんな場所でイチャつくのか。  お金がないにしても、もっと別の方法があ

禍話リライト「リベンジ」

他人のリベンジにつきあってもろくなことにならない、という話であるのと同時に、合コンなどというものに行くべきではない、という話だ。 合コンの二次会で、季節がら怖い話になったのだという。 体験者の名前は仮に田中さん、としておこう。ちょうど話の中心がご当地の怖い話だったので、田中さんはこう訊いてみることにした。 「俺この辺に住んでるんですけど、怖いところってあるんですかね? 俺、地方から出てきて就職したんで全然わからないんですけど……」 ●●トンネル、■■ダム……そんな名前が挙が

禍話リライト「一員になる家」

Aさんという女性には、Bさんという中学校時代からの女友達がいる。 中学、高校時代を共に過ごし、大学こそ違う地域の大学を選んだが、同窓会などの機会がなくてもしばしば二人で会うような仲だった。長期休暇のたびに近況を報告しあっていつもお互いを高め合うことができる、そんな仲だった。親友、というものに違いなかっただろう。 大学を卒業し、二人は地元の会社――同じ職場ではなかったが――に就職した。職場が違っても、二人の仲の良さは相変わらずだった。一か月に一回は顔を合わせて、彼氏できた?とい