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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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2020年5月の記事一覧

禍話リライト「ドアスコープの向こう」

 A子さんが以前住んでいた部屋での出来事だ。  職場に近い素敵な部屋で新しい生活を始めるはずだったのだが、唯一困ったのが夜中に起きてしまうこと。喉がカラカラに渇いて、全身汗だくの状態で目が覚めるのだそうだ。  怖い夢でも見たのかもしれないと納得したらしい。A子さんはもともと夢の内容をすぐ忘れてしまうタイプだ。  一日二日なら大した影響もないだろう。しかし、まだ暗い部屋で目を覚ます日が続き、早く寝ているはずなのに疲れが溜まるようになった。  引っ越しから二ヶ月ほど経ったころ、と

【怖い話】キャンプの嘘話【「禍話」リライト37】

   暑い夏だったという。 「やべーな、暑いなオイ」 「マジで夏だよな」 「なんか、夏休みっぽいことやりてーな」 「やりてーな。川とか海に行くとか」 「スイカも食いてぇし花火もしてぇな」 「バーベキューもいいよなぁ」  この体験をしたRさんはいわゆるヤンキーで、同じような仲間5、6人とつるんで車を飛ばしたりパチンコをしたりして日々を過ごしていた。  ただし「不良」というほど悪くはない。チャラいかイカツめな格好はしているものの悪事は働かない、明るく楽しいヤンキーだったそ

[禍話リライト]人のいい佐藤君[禍話 第五夜]

大学を卒業してから、通勤の便のために故郷から都内に引っ越した。 父にも母にも、ものすごく心配された。 「お前は優しすぎるから、東京行って変な奴に騙されたりしないように気をつけろよ?世の中、良い人の方が珍しいんだから」 僕ははいはい、とか適当に返事しといたけど、そんなことはないと思う。どんな人だって、真心で接していれば、きっと心を開いてくれる。そのためには、きちんとコミュニケーションをとることが大事だ。 例えば、円満なご近所付き合いのための挨拶は大切だ。ちゃんと引っ越し

禍話リライト「湿った家」

 大学生のA君には、母親のいとこにあたる、親戚のおばさんがいた。  その夫や一人娘とも、昔から家族ぐるみの付き合いがあった。特に娘のKちゃんとは年も近く、幼い頃はよく遊ぶ仲だったという。  その親戚が、10年ほど前から金貸しに手を出した。金貸しとは言っても、同じ団地の高校生や主婦に少額だけ貸し付けるというものだった。  ところが、取り立ての仕方が悪かったらしく、金を貸していた高校生が死んでしまったのだという。自殺なのか事故なのか分からない、そんな死に方だったそうだ。  

[禍話リライト]ザクザクのお祓い[禍話 第三夜]

私は辺り一面雪景色の中に一人ぽつんと立っていた。 ザクザク、と雪を踏みしだきながら歩くと、掘っ立て小屋が寄り集まった昔の村のような場所についた。 私は勝手知ったかのように村の中央に訪れる。 そこでは、白装束を着た全身ぐちゃぐちゃの女の人が、村人たちに農具で耕されるようにリンチされていた。 女の人は声一つ出さずに、ただただ耐えているようで、目を固くつむって、手足に力を入れていた。 その女は生きているのが不思議な状態だった。 女が来ている白装束は、すでにずたずたに切り

禍話「ファミレスデスゲーム」

仕事の関係で地方に行った時、一通りの仕事が終わり、小腹も空いたので近くのファミレスに行くことにした。 女一人で夜に遠出も不用心なので、ホテルから歩いて数分のファミレス。 3時にクローズするファミレスなんて中途半端だなと思いながらも、時計を見ると23時だったのでまあ大丈夫かと、特に気にすることもなく入店した。 店内には、いかにもホームレスといったようなオジさんと、仕事をしていなさそうな、外見があまりよろしくない男の二人だけだった。 うーん嫌だな…… なるべくその二人から

禍話リライト『仕掛ける女の子』

高校時代の、ある夏。 肝試し合コンのような感じで、女の子と肝試しをすることになったという。 どこでやろうかと男友達と相談して、とある団地の奥に廃屋があるらしいということで下見に行ってみたのだが、そこは廃屋ではなくただの倉庫だった。どうやら団地を建設中に資材を置いていた倉庫で、団地が完成したので放置されているようだった。 団地の向こうに古ぼけた建物が見えるから、てっきり廃墟でもあるのかと思っていた一行はすっかり当てが外れてしまった。 「肝試しもう明日なのに、なんだこれ。全然怖く

禍話「人体模型」

人が何かに怯える時、必ずそこには何か、底知れぬ理由がある。 2ch全盛期、匿名掲示板がまだまだたくさんあった数年前。 その頃は小学生でもダークウェブのようなサイトにアクセスすることができて、いわゆるグロテスクな動画や少しエッチな動画も簡単に入手することができた。 そんな時代にアクセスするのが難しいグロテスク動画の専門掲示板があり、禍々しいタイトルの動画が並ぶそのスレッドの中に「人体模型」というタイトルの動画があった。 Mさんの知人のAさんはグロテスクな動画に強い耐性があ

禍話「泉の広場」

 禍話に「赤い女」という話がある。  マンションのポストに「あかいおんなにちゅうい」と書かれた怪文書のようなビラを投函する、顔も、生きているのか死んでいるのかも分からない、やたら赤い服を着た女がどうやらあちこちにいるという話だ。  そしてこれはそんな「赤い女」の話のリライトを見つけ、あることに思い至った女性の話である。  彼女には小中高と同じの、男の幼馴染がいた。  同じ大学の同じ学部に入り、彼女も周囲の人々も「この二人はいずれ結婚するのだろう」という漠然とした考えが