川上未映子(訊く)村上春樹(語る)『みみずくは黄昏に飛びたつ』を読んで
いちおうことわっておくと、私は熱烈な村上春樹さんのファンではなく、有名な作品を数作読んだことがある程度です。
それでも、リチさんが紹介されていた、この村上春樹さんのインタビュー本を読んでみたいと思ったのは、インタビュアーが川上未映子さんだったから。
ずいぶん前ですが川上未映子さんの『ヘヴン』を読んで、なんて恐い作家さん・・・と衝撃を受けました。
目を背けたくなるようないじめの描写。
理に適っているようで、人の心が抜け落ちた少年の主張。
それでいてラストには感動させられた手腕。
その後おそるおそる読んだ『すべて真夜中の恋人たち』でしたが、こちらはすごく好きでした。
真夜中にぽっと明かりが灯ったような読後感を覚えています。
そういうわけで、この『みみずくは黄昏に飛びたつ』を図書館で借りてきました。
正直、理解が追いつかないところばかりでした。
川上さんの質問も村上さんの答えも深くて。
それに最初の章は、村上さんの『職業としての小説家』刊行時のインタビューで、私はそれを読んでいないのですよね・・・
以降は『騎士団長殺し』の話題で、それと『1Q84』『多崎つくる』あたりは読んでいるのですが、川上さんが転機のように言う『ねじまき鳥クロニクル』については思い出せなくて・・・
でもわからないところは流しながら読んでしまいました。
川上さんはこのインタビューにあたって、膨大な下調べをされただろうな、ということがうかがえるのですが、村上さんはとても感覚的です。
村上さんは小説を、意図して書いていない、ということが驚きでした。
(この言い方でいいのかな?)
「ここはこういうことを表している」みたいな意図、自分の中での確信的な答えはなくて、もっと直感的・感覚的に書かれているようです。
村上さんがもっとも大事にされているのは文章自体。
内容じゃないことがとても意外でしたが、読みやすさやリズム、響き、巧みな比喩など、うなずけます。
村上さんの「いわゆる私小説作家が書いているような、日常的な自我の葛藤みたいなのを読むのが好きじゃない」
という一文を読んで、私も自分のことをそのまま書いてるだけだよな~ってへこみ・・・笑
物語は無意識の層をくぐらせると深くなる。
カキフライを油にくぐらせるように。
私も今後から、カキフライをそのまま提供せずに、揚げてみたいと思います!笑
私にそれができるのか、私にとってすべきことなのかはわからないけど。
それからやっぱり、その道の先頭を行く人というのは、すごく背負うものがあるのですね。
「大変そう」なんて陳腐な言葉しか出てこない私です。
「僕よりうまく小説を書ける人は、客観的に見て少ない」という村上さんの自負を引き出せたこと、川上さんの大きな収穫ですね。
とても濃い本だったのに浅い感想で未熟さを痛感していますが、お二人の深い会話をなんとかたどって、頭が満腹です。
この本を紹介してくださったリチさんは、最近「村上春樹ライブラリー」に出かけられたそうです。
私はその存在を知らなかったのですが、素敵空間ですね。
そして村上さんの新作長編が出るんだ!読んでみたいと思います。
記事の中でリチさんも書かれているように、私も村上さんのイベントに行って、朗読を聴いてみたい!と思いました。
朗読のためだけに、ご自身の物語を書き変えられたことがあると、この本にも書かれていました。
そんなの聴けたら贅沢!
久しぶりのガッツリした読書、楽しかったです。
リチさん、これを読んでくれた皆さんも、ありがとうございました。
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