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「今更だけどコロナって相当辛いよね」のはなし

新聞を読んでいて、ある記事が目に留まった。

働く女性の自殺者数が増加している

という記事だ。

20年の自殺者数は全国で2万1081人と、前年比で912人(4.5%)増加した。増加は11年ぶりで、男性は減少したものの女性の増加幅が上回った。無職の女性は微減、男性は職の有無に限らず減少しており、働く女性の自殺増加が顕著だった。
(中略)
動機別ではうつ病など精神疾患を含む健康問題が多かった。経済や生活の問題など他の要因が精神疾患に発展するケースも多く、厚生労働省は要因を複合的に見るよう指摘している。
日本経済新聞社(2021年11月2日)                 

この記事を読んで、

他人ごとではない

と感じる自分がいた。

というのも、私は2021年春に人生で初めて精神疾患を患った。
要因は何かと自問した時に、主要因ではないにしても、コロナ禍の生活は私の心にかなり悪影響を及ぼしていると感じる。

厚生労働省が「要因を複合的に見るべき」と指摘しているように、人間が追い込まれてしまう時は様々なことが複雑に関係し合っていることが多いはずだ。

でも、個人的な意見だけれども、やはり、昨年2020年に働く女性の自殺者数が増加したことは、コロナのこの環境禍がかなり影響していると思う。

コロナは人々の心を、人々のエネルギーをどんどんと蝕んでいるのではないか。

『「本当の自分」がわかる心理学』(シュテファニー・シュタール著・P36)によると、心理的な基本的欲求とは、以下の四つであり、私たちがストレスや苦しみ、怒り、不安を感じるときは常にこの基本的欲求が関係しているとのことである。

心理的な基本的欲求

・結びつき欲求
・自由欲求
・快感欲求
・承認欲求

よくよく考えてみると、私はコロナ禍で、これら心理的な基本的欲求と呼ばれる4つの欲求が全て満たされにくくなった。

一つずつ、具体例を挙げてみていきたいと思う。

結びつき欲求

まず、仕事について。
私の職場は、コロナにより急遽在宅勤務に早変わり。今まで毎日のように隣合わせで仕事をしていた同僚とは、画面越しでたまに会議をするくらいの仲になった。そうなると、どうしても孤独感を感じるようになってしまったのだ。週5日、1日8時間以上もの時間、顔を合わせ、相手の感情に触れ、時には真剣に議論をし、時には他愛もない話をする、そんな物理的に同じ空間に仕事仲間と一緒にいる時間が私にとっては普通で貴重だったことに気付かされた。
毎日当たり前に会社に行って同僚と仕事をしていた環境から一変、
孤独を感じながらの仕事は、もちろん良い影響なんてあるわけがない。プレッシャーや仕事のONモード状態が心や脳を支配するのだ。私は、仕事において人との結びつきの大切さを身に染みて感じた。

また、友人と飲みに行ってぺちゃくちゃお喋りをすることなんて1年間ほぼできなかったし、帰省をして両親と近況を報告し合うこともできなかった。

結びつきって物理的でなくとも感じられるはずだとは頭ではわかっている。パソコン越しでも電話越しでも、たとえ対面をしないコミュニケーションであったとしても人を結びつけることは可能だ。家族だって、長らく会わなくとも愛情さえ感じられれば結びつきを感じられることもできるはずだ。
そうなんだろうけど、私の場合は実際に会うことってとても大切で、
会うことで人と真に結びついているという感覚を持てるのだと思う。

自由欲求

コロナ禍においては個の生活の自由が失われていった。
コロナウイルスをこれ以上広めないように、自分の行動を制限をすることの大切さは重々理解している。理解しているからこそ、自由とはかけ離れた生活スタイルになってしまうのだ。

行きたい場所へ行けない、会いたい人と会えない、
もうそれだけで自由な生活とは言えない。

不自由で、自分をコントロールせざるを得ない窮屈な生活を強いられることとなり、疲弊している人は私だけではなかったはず。

快感欲求

・旅行に行く
・出かける
・友人と美味しい物を食べる
・ジムで体を動かす
これらが心の癒しであって快感であった私は、コロナによって4つの全てのことが一気にできなくなった。

読書や映画鑑賞など、ステイホームで楽しむことができることから自分なりに快感を得られるために努力をしてみたつもりだった。でも、もともと自分が快感と思っていたことができなくなったことは、自分が想像していたよりもはるかに自分自身にダメージを与えたようだ。

承認欲求

人と関わる機会が減ったことで、自然に褒められることと少なくなったのかもしれない。

好きな洋服を着て、めいいっぱいおしゃれをして、「素敵だね」なんて言われる場面も少なくなった。

職場で上司から良い言葉をかけてもらうことも少なくなってしまったかもしれない。

本当は自分自身で自分を認めてあげることができれば、それで良いのかもしれないが、私は誰かに認められたり褒められたりすることではじめて承認欲求が満たされるのだと思う(あまり良いことではないのかもしれないとも思うが)。

そんな私にとって、コロナ禍の生活スタイルで承認欲求を満たしてあげることはなかなか難しいことであったのだ。

女性と男性の違い

性別の違いで物事を言うことはあまりしたくないけれど、私個人の感覚では、女性は男性に比べ、この心理的な基本的欲求が周囲の人によって満たされる部分が多いと思う。

私の夫の話だが、彼は、勉強と筋トレがとにかく好きだ。
勉強をすることで自分が成長していることが実感できるし、知らないことを知る感覚が楽しいとのこと。筋トレも自己成長を感じられて、過去の自分に今日の自分が勝つことが快感だとのこと。
勉強をすることも筋トレをすることも家でかつ一人でできることだ。どちらも自分自身とのたたかいであって、周りの人は関係していない。夫は、昨日の自分と今日の自分を比べ、昨日の自分より今日の自分が成長をしていると、快感欲求と承認欲求が満たされるのであろう。

また、結びつき欲求はこの4つの中だとかなり重要度は低く、勉強と筋トレはいつでもできるので自由欲求もそこまで阻害されなかったとのことだ。

夫を近くで見ていると、自分自身の中で心理的な基本的欲求の大部分を満たすことができる人だなと感じる。

反して、私は誰かがいるからこそ自分の基本的欲求が満たされるのだ。
言い方を変えれば、自分一人だとなかなかこれらの基本的欲求を満たしてあげることが難しい人間らしい(これも、あまり良いことではないのかもしれないとも思うが一旦置いておく)。

今ってなんだか異常な気がする

最近よく風の時代だなんていう言葉を良く聞く。

一理あるのだとは思う。急激な変化が全世界的に訪れて、今はちょうど時代の変わり目で、今までの普通が普通でなくなり、変化に対応できない人間は生きていけなくなるという意見も耳にする。

上手に突然のこの状況に柔軟に適応することが大切なのは分かっている。
でも、一旦立ち止まって、
「今は異常なんだよ、辛いんだよ!!!」
と主張して叫んで、泣いたり暴れたりしてもしょうがないじゃないかなと思ったのだ。

伝えたいことが上手く表現できているのか分からないけれど、

「私みたいに変化の時代に潰れてしまい、もがき苦しみ、少しの希望を糧に生きている人は沢山いる。」
「私も苦手だから苦しんでいるんだけれど、もっと辛いって叫んでよいのかもしれない。だって今の状況は異常なんだから。」

ということは伝えたい。



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