見出し画像

人生が変わる瞬間。空気を変えるのは誰か。


私がマラソンを始めたい。と言った。
友達が一緒に走ろうと仕事終わりに
サンセットランを提案してくれた。

ギリギリ海まで走って
なんとかサンセットを見ることができた。
私の家から走ってきっと2キロ。
短距離走の選手だったのに長距離は苦手だった。
走る意味もわからなかった。

タイムが全てだった自分にとって走る意味などなかった。

失恋して散歩を始めてサイクリングを始めて
走っている人の多さに気がついた。

なんで走るのだろう。
苦しいのに。。

そう思っていた。

幸いにも私の周りには走る喜びを見つけている人がいたので聞いてみた。
そうしたら一緒に走ろう。

そう言ってくれたので
走った後に赤提灯のお店で飲む約束をして
それを目標に海まで走った。

仕事終わりで夕焼けはもう消えかけていた。
それでも少し足速に走った。

見えた景色は
闇に包まれる海と波と
雲に覆われた富士山とが
キラキラと輝く。

そしてそこには明るく輝く満月があった。

黄色くて、星よりも輝いていた。
海が月に照らされて
なんだか怖くなかった。

夜の海はこわい。
真っ暗で飲み込まれそうなのに
すごくあったかく感じた。

元カレは静かなお月様の様だなとずっと思っていた。
だけど、満月を見てこんなにパワーがあるのだなと思ったら
今はもう満月は元カレよりも強く
私を真っ向から受け止めてくれて
私の背中を押してくれていた。

そうか。
私の知っている暗闇の海の怖さも
元カレの静かな月のような静けさも
ほんの一部でしかかったのだなと思った。

私の好きと、こわいは
なんだ、そんな勝手なものだったんだなと
思った。

満月に向かってありがとう〜って
手を振って
友達と海を背にまた走り出した。

今宵のミッションは
ランの後に友達と一緒に
大好きな大将のいる
焼き鳥屋さんに行くことだった。

仕事終わりにわざわざ来てくれた友達。

実はラン仲間とよくこの街を走っているという。
私はこの街に住んでいるのに
ちゃんと走ったことなどなかった。

走る意味を見つけられなかった。
苦しくて辛い。
そう思っていた。

だけどその友達とゆっくり走りながら
元カレの話をしていたらあっという間に自宅へ着いた。

息を吐きながら
心の毒を吐き出せた気がした。

彼女の話も聞いた。
彼女は10年の結婚生活にピリオドを打った。

予測不可能な出来事で
でも、受け止めるしかなかったという。

別れる時に彼女は相手のご両親のところへ
ご挨拶へ行き、お墓参りもしてきたという。

相手はLINEでのやり取りだけだったそう。

彼女のことをなんて情の深い人だと思った。

幸せなことにその後彼女はラン仲間の人から
告白されお付き合いしている。

10年の結婚生活のことを忘れることはできないだろう。
それでも彼女はひたすらに走り走り
走り続けて身体を壊した。
それを見ていた人が支えてくれた。

ジーンとした。
彼女の一生懸命に頑張ろうと自分の力で走ろうとする姿を見ていてくれた人が今彼女を支えてくれている。

嬉しかった。

手相なんて全くわからないけれど
私は彼女に
ねぇ、手相見るから両手を出して。
と言った。

手のひらは仕事をたくさん頑張る人の手だった。

なんとか線だか知らないけれどぴろぴろ〜と私は彼女の手の線をなぞって

よし!150点!!
あなたは大丈夫です!!


思い切り自信満々にドヤ顔で言ってやった。

大丈夫。私もちゃんと見てるよ。
あなたは幸せな心の持ち主だから。

きっと雑に扱って幸せになろうとする人は
また次の人に同じことをするか
同じようにされていくんだよ。

どこの手相の母だか知らないけれども
そんな風に勝手に口がしゃべっていた。

大将もそれを聴きながら
年明けに大将と一緒に私達は
瓶ビールで乾杯をした。

私たちは自分たちで頑張って
なんとか立っている。
自分でいろんな空気を吸い込み
吐き出している。

空気に色をつけるのは他でもない自分自身だ。
そうやって自分人生を変えていくのだ。

また次の時に笑って泣いて美味しく呑もう。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?