読書日記 【デジタル・ファシズム】

こんばんは。先月京都の新幹線駅内のお店でこちらの本を見かけた。お土産やお弁当も売られているお店の一角に雑誌や本も量は多くないが置いてある。そのお店の細い棚に、この表紙がずらりと一列並んでいた。

タイトルやサブタイトルといい、裏表紙の見出しといい、私の関心のあるトピックどんぴしゃりで、購入する事にした。読書モードでは無かったので時間が掛かってしまったが、やっと昨日読み終えた。堤未果さんの『デジタル・ファシズム』だ。

以前Netflixのドキュメンタリー、『The Social Dilemma 監視資本主義』を見て、インターネットの怖さをしみじみと感じたが、この本を読んだ後に感じたのはそれを上回る恐怖だった。日本が危ない。

『The Social Dilemma 監視資本主義』に登場するGoogle、Apple、Facebook(現在はMeta)、Amazonなどは私達の行動や反応のデータを吸い上げて利用をする巨大な会社だが、これらの会社は私達が利用しないという選択肢がある。倫理観の欠如に対して不満があれば、サービスを使う事を止めたり、競合会社に乗り換えたりする事で私達の反対意見を表明する事が出来る。

しかし、国が私達の家族、財産、健康や学歴などの全てのデータを集めて管理をし、おまけにこれらの巨大会社とタグを組んでしまったら?個人情報が情報漏洩して悪利用されるのも心配だが、政府が中国の様に個人の信用スコアを設定してボタン一つで国民の生活を営めなくすることが可能になる様な大きな力を持つのは危険だ。国が提供するサービスをボイコットするのは他の国に移住しない限り難しいだろうし、もしボイコットして、住民票や銀行口座が無く健康保険も年金も無ければまともな生活を送るのは困難だ。

この本の中で論じられるのはスマホ決済、デジタル通貨、国家戦略特区、デジタルID、オンライン教育、など多岐に渡っている。おまけに日本についてはこれらの変化や進捗に対して国内外ともメディアで大きく報道されていないため気がついていなかった事ばかりでとても勉強になった。

近い将来の話で気がかりだったのは、政府が医療情報や運転免許証、住民票、税金、銀行口座の情報をまとめて管理するマイナンバーの導入の終了が2024年の新札発行の前に設定されていて、著者が預金封鎖の可能性を示唆していることだ。あと2年しか無いのでまさかとは思うが、いずれ移動や購買情報、インターネット検索を含む全ての情報が政府と国内外の巨大利権に管理される様になってしまえば、政府がそういった暴挙に出れる可能性だってある。

長期的に懸念される影響は、やはり子供達の将来だ。著者は、「今はGAFAが奪うのは単なる個人情報やプライバシーではない。私たちが自分で自分の行動を決める「未来を選択する権利」だからだ。」と仰っている。自分にはそれが可能だった様に、私の甥っ子達にも彼ら自身で自分の行動を決めることが出来続ける日本であって欲しい。

最後に、日本がデジタル・ファシズムに振れるターニング・ポイントとならない様に、多くの人がこの本に興味を持って読んで頂ければ良いなと思う。


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