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デッド・ドント・ダイ

いやー、世界的にコロナウィルスで大変なことになっておりますが、東京も緊急事態宣言を受けて映画館が一か月近く閉館ということで。ほんとに、ただでさえ観る人減ってるって言われてるのに観られなくされるとは思ってませんでした。個人的には空気感染しないコロナに関しては映画館て比較的安全なんじゃないかと思いますけどね。ということで、これから紹介する映画も全国拡大公開前に観られなくなっております。まぁ、内容もなかなか不謹慎と言いますか、今の状況にリンクしてるところもあったりということで。現実がディストピア過ぎて、もう疲れた…となっていた脳には最高のリラクゼーション・ムービーなんじゃないかと。ジム・ジャームッシュ監督の最新作『デッド・ドント・ダイ』の感想です。

えー、はい、ジム・ジャームッシュ監督、前作が評判の良かった『パターソン』なんですが(あ、そのあとにイギー・ポップの半生を追った『ギミー・デンジャー』がありましたけど、これはドキュメンタリーってことで除外します。)、『パターソン』を観て、同じ監督で同じ主演(アダム・ドライバー)だから観に行こうと思ってた人、特に『パターソン』をお洒落な日常系映画(ほんとは違う)として観てしまった人には全くお勧めしません。なぜなら、今回の『デッド・ドント・ダイ』、それとは完全に逆位置のジャームッシュ作品だから(まぁ、タイトルからしてアレですよね。『デッド・ドント・ダイ』って、音っていうかリズムが既にふざけてますよね。)なんですけど、僕が本来感じてたジム・ジャームッシュらしさというのは、じつはこっちだったんじゃないかなと、このB級ゾンビ映画を観て思ったという話です。

えー、ということで、本作はゾンビというジャンル映画ってことになるわけなんですけど、そうすると、まず最初にジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』というのがあって、基本的にその後出来たものは全てこれの亜流なんですね。要するに、ある日突然死者が蘇り始めて、それがパンデミックしていくことで生き残った人間たちが追い詰められて行くという、基本的にはこれだけなんです。ゾンビが発生した理由も語られず、それが収束することもなく、ただただ追い詰められて行く人間の姿を見せられ続けるっていう。で、1985年(日本公開は86年)に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド・リターンズ』っていうタイトルからしても『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編という位置づけの映画が公開されるんですけど、日本では『バタリアン』(そう、アレです!)てタイトルで公開されて。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編というよりは、ゾンビっていうジャンル映画そのもののパロディというか、後にホラーコメディって言われるジャンルの走りの様な映画だったんですね。僕は当時映画館で観てるんですけど、たぶん僕が最初に観たゾンビ映画ってこれなんです。だから、その時はパロディだなんて思って観てないんですよ。元を知らないわけだから。なんか奇妙な映画だなって。ゾンビっていう端から奇妙なものに更にそのパロディっていう奇妙さが上乗せされて、最早、シュールな芸術性まで感じるみたいな、そういう感覚の映画だったんですね(それがサブカルっていうものだったんだというのは後から知ることになるんですけど。)。で、そのシュールでアーティスティックでクールなんだけど、根本のとこにはコント的というか、「人間てバカだね。」っていう(落語的な)笑いがあるのって(これ、要するにオフビートってことか。)、僕がジャームッシュ作品に感じる「これこそジム・ジャームッシュ。」って部分なんですね(この笑いとヒューマニズムの構造が逆になるともの凄くイケすかないものになるんですけど、そういうものの方がじつは世の中には多かったりします。)。

だから、今回の『デッド・ドント・ダイ』もストーリーはほぼまんま『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』で、要するに『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』をジム・ジャームッシュが撮ったら『バタリアン』になりましたって感じの映画で。それって、ジム・ジャームッシュのシュールさとかクールさっていうのがほんとはあんまり意味のない、どうでもいいことについてついつい拘ってしまう人間の愚かさというか業みたいなところから来ていたんだっていうのがよく分かる様な作品なんです。で、それをジャームッシュ映画集大成みたいなオールスターでやっていて。俄然バカバカしいんですけど。いや、だから、『バタリアン』が"人間の愚かさを描く"っていうゾンビ映画の本質を(笑いとして)突いた映画だとしたら、『デッド・ドント・ダイ』もジム・ジャームッシュっていうジャンル映画(人間のやることにはそれほど大した意味はない。しかし、それこそが人間だっていう)の本質を突く様な映画だと思うんです。もっと言えば、ジャームッシュ自身がジャームッシュ作品を総括した様な(だから、ジャームッシュ・ユニバースかと思う程のオールスター戦であり、あの終わり方なんだと。)。つまり、何が言いたいかというと、個人的には(『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』よりも『バタリアン』に人間の本質を見てしまった様に。)、『パターソン』よりも断然『デッド・ドント・ダイ』派だということです。

https://longride.jp/the-dead-dont-die/

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