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【コラム】40年遅れのカスタマー・ハラスメント #043


■お客様は神様


この話題の一番古い記憶は・・・古いから曖昧なことこの上ないが、小学生ぐらいの頃に父親が「お客様は神様なんだぞ」と言っていたうっすらしたところにある。40年前になる。
松下幸之助の本は10代の頃に読んでいたから、割と早い段階でこの言葉がどこから出たのかを知った。

それで16歳ごろにファミレスで接客のバイトを始めた。たかだかファミレスなんだが、今思い返してもこれが結構侮れなかった。お客の見方、接客の仕方、言葉の使い方、オペレーションの回し方など結構本格的に学んだ。
そういう風潮のあるグループだったのかもしれない。
あまり記憶がないけど理不尽な客は多くはなかった気がする。嫌な客はいたな。具体的に思い出せないけど。

ただその頃にはもう「お客様は神様」なんていう妄想は嘘でしかないと思っていたし、ただ、ラグジュアリーホテルの接客のように洗練された一流の対応を「接客業に従事しているなら行うべきだ」とは思っていた。
な訳で、その後何十年単位でそうではない現実に悩まされる。


■ひとつの事件によって考え方のベクトルが変わった


21のときロンドンに留学して日系のデパートでバイトをしていた。それ以前にオーストラリアの2、3の都市とバンコクに住んでいたので、外国のサービスなり接客の様子はそれなりに経験していた。
ところがこのロンドンでお客様は全然神様ではないという事件に遭遇する。

この事件のことは「サービス理論コラム」に書いた。

事件を経験したのが30年前。
コラムを書いたのが20年前になる。

10年のインターバルがあるのは、会社を興して稼いでいくのに精一杯だったこともあるが、その間受け手側として多種多様のサービスを経験したことも大きかった。
会社経営から降りて時間ができた2004〜5にかけてコラムを書いた。
ロンドン事件から考え方のベクトルが変わり、10年の間にいろいろなことを経験しながら理論をまとめた。つまりカスタマー・ハラスメント、俗称カスハラについては20年分先取りしていたと思う。

当時出版されていた本にはいかにひどいお客が多いか示したものもあったし、いかにラグジュアリーが素晴らしいかに特化したものもあった。
カスタマー・ハラスメントは当時すでに最高潮と言っていいほど蔓延していた。その後下がっているようには思わないけど、現代と同じような程度の低い輩は昔からいた。


■サービスを選ぶ


そんなわけだから、こんな当たり前の低レベルが2020年代になってやっと取り上げられることに失意すら感じる。
本来モラルが高ければあまりこういったことは起こらないわけで、民度の低さというか頭の悪さにも辟易して、サービス理論はその後一度も表舞台に立っていないし、俺もそこを仕事にしたことはない。

ここ最近書いているように、声を上げても構造的にどうにもならないことに時間を使うのは無駄だし、自分自身のために良くない。
どうにかするべきだとか、どうにかしていこうというのは良いことのように聞こえることもあるが、ほとんどの場合で標語の正義を背負っていいことをしている気分になっているに過ぎない。
現状言えることは、見たくない番組があればチャンネルを変えること。そして自分にぴったり合う、適切で居心地の良いサービスを選ぶことだと思う。もといそれしかない。

世界中のいろいろなサービスと比較して、日本のサービスには優れているところもあるし、劣っているところもある。カスハラが問題になるようなところはサービスというより民度が低いことの表れだ。
外国で不愉快な思いをすることはあるし、日本でいい思いをすることもある。ただ相対的、そして総合的に見て日本のサービスは必ずしも良いとは言えない。


■接客とサービスは個々人の精度に依存する


これは国内にいると当たり前でなかなか気が付かないことだ。
細かいことは良いことも悪いことも無数にあるので一度置いて、抽象的なことだけ書いておきたい。

どの国とは言わないけども、個人を尊重する大前提があり、それを義務による不愉快を抑えているのではなくて誰もがスムーズに行なっている国民がいる。
その国のサービスは、特に接客は、非常に良いとは言えないものの「悪くなることは決してない」。サービスそのものの優劣ではなく、人間の性質の優劣によって、特に接客は平均的に良くもなり、平均的に悪くもなる。

言ってしまえば当たり前のことだけど、実のところサービス従事者の誰もこのことに気がついていないし、マーケティングの専門家や事業構築する側もわかっていない。
この話を突き詰めていくと、ではなぜ民度に高い低いがあるのか、どうすれば高くなるのかという「より不可能」な話になる。失望を感じるかもしれないけど、つまりはこの現実の中で自分を有効に活かす優れものを見つける、ということが一番良い考え方だと思う。

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