「本日は、お日柄もよく」著:原田マハ 読書メモ📖
数年前の読みかけの、残り100ページを一気に読んだ。
泣いた。
後半が怒涛の展開だった。
親から子へ、子からまたその子へ、周囲へ。
政治家だって、家族を愛するふつうの人間だと改めて知った。
政治や選挙はあまり興味のなかったジャンルだけど、最後まで夢中で読めた。
前半で読んだ内容が、後半で別の形となって現れて、「あ、これって…!」と気付くうれしさよ。
カタルシスというの?とても気持ちいい。
本であまり泣かない人間なのに、クライマックスに向けて後半2ページ刻みくらいでやってくる号泣展開に泣けて泣けて鼻水も出まくった。
内容は、日本にはまだ少ないらしいスピーチライターという職業の話。私もこの本で初めて存在を知った。
このお話の主人公の「こと葉」(27歳)は、片思いしていた幼馴染の結婚式や、同僚の結婚式での出来事をきっかけにスピーチライターに転身する一般人OL。
スピーチライターとしてのお仕事に奮闘し、さまざまな経験を乗り越えて成長していくお仕事ものがたり…かと思ったら、いやそれは間違いないんだけども、
駆け出しのこと葉が、「選挙候補者のスピーチ」という重すぎる大役を任されたところから話の流れが変わっていく。
しかもなんと、候補者は、こないだことはが出席したばかりの結婚式の新郎、つまり片思いしていた幼馴染…。
政治家だった亡き父親の遺志を継いで、二世として立候補を決意した彼を、こと葉はなんとしてでも勝利に導かなければいけなくなった。
というのが大体のあらすじ。とってもざっくりだけど。
そこからがっつり、選挙・政治の話が軸になってストーリーが展開していく。
おそらく当時の私は、この辺で心のシャッターを閉じてしまい100ページを残してトンズラしたんだと思う。
けど、いま読むと違う。おもしろすぎて最初から読み直した。
作者の原田さんが書かれる豊富な語彙や表現、紡がれる言葉に夢中になった。
あと、伝説のスピーチライターであり、こと葉の師匠となる久美さんのかっこいい人柄にも惚れた。
ストーリー全体を通して出逢いと別れが繰り返され、それがどこかで繋がり、人から人へ優しさや想いが伝播していき、徐々に想いがひとつになっていく描写が美しかった。
特にラスト近辺の、さまざまな経験を経て こと葉が周囲の人たちと完成させたスピーチ全文は、読んでて泣いてしまうほど感情移入した。
(あと恥ずかしいけど政治や選挙の話がふつうにとても勉強になった。
物語だから着色はあるだろうけど、でも、なかにはこの本みたいに、純粋に自分の仕事に誇りを持って闘った人がいるのかなと思うと、政治や選挙への印象がちょっと変わる🤏
国のために、自分を支えてくれた周りに報いるために、選挙の投票結果を心から待ってる政治家、家族や友人がいるのか。という当たり前のことに気付いた。
急になんなんだという感じだけど、私の仕事柄、いつも選挙当日は朝から晩まで選挙事務に出突っ張りで、その日の世のなかの様子をよく知らなかった。
あるときたまたま選挙事務からはずれ、家でボーッと見ていたテレビに、生中継で開票作業をしている全国の大勢の自治体職員の姿が映った。
びっくりした。
朝から晩まで動きっぱなしで目はうつろ、頭はボサボサの特段視聴率需要のない疲れた集団の姿が公共の電波に流れている。
そしてリポーター横の画面に映る各党の票数が刻一刻と増えていってる。
集計した数字はこうやって反映されていたんだ…というか、え!私たちって、テレビに映ってたんだ〜!と、テレビ局が少しでもこの集団にスポットライトを当ててくれていたことを初めて知って、ちょっと興奮したのを覚えてる。
別に知り合いが映ったわけでもないし、「全国の仲間ががんばっている!」なんて松岡修造ばりの熱い気持ちがあったわけでもない。単にテレビに映っただけなんだけど、でもやっぱり正直うれしかった。
日々誰に注目されるでも感謝されるでもなく、むしろ憎まれながら粛々と仕事するだけだったから。
そして、ただ苦痛だと思っていた選挙事務の作業も、
この本みたいに真剣に選挙に向き合って頑張ってきた人たちがいるのならと思うと、なんだか誇らしい作業のような気がしてきて、テレビに映ったときのように嬉しくなった。
そして、選挙日は朝5時から夜中の1時過ぎまで作業して、次の日もいつもどおり出勤して、ヘロヘロに働いてきた自分がなんとなく報われたような感じがした。
作者の原田マハさんはそこまで予想していなかったと思うけど、実際田舎の端くれの、一読者の私にこんな形で響いた。
読んでよかった。
この本を執筆してくださった原田さんと、数年前この本に出会った私、そして今日たまたまこの本を開いた私に感謝。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?