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死ぬまでに読んでおきたい名作②

「本とわたし」シリーズ第二弾📚

「オススメの小説はなんですか?」
と質問された場合、躊躇なく言える小説があります。先日も二十代の後輩に聞かれたときに、

「吉川英治の歴史小説を片っ端から読んでみてほしい」
と語りました。

また、必ず僕からもオススメを聞いては、
なるべく読むようにしています。
いまの若者が何に興味を持ち、
何に共感するのか?常に気になるし、
勉強になるから。

吉川英治の小説は、
二十代のときに片っ端から読み漁ってきたものです。代表作はなんと言っても『三国志』でしょうけど、強烈に心動かされたのは22才になる直前に読んだ

『宮本武蔵』でした。

『宮本武蔵』は、自己完成を目指す男の生き方を表現した大作で、地下に流れる熱きマグマが岩盤を突き破って天空高く噴き出すような、
魂を抉られる青々とした熱量の高い一冊

という記憶があります。

ほかに、
『私本太平記』『新平家物語』『新書太閤記』
等、吉川文学の特徴は、
何と言っても主人公の青春時代を活き活きと
描いているところにあると思うのです。

そこから、
いかに若者を大切にされていたか、
若者のエネルギーに尊敬の念を抱いていたか
について、
自身の苦学・苦闘の体験から得た信念、
モノの見方、哲学を世に投げかけている。

またそれ以上に深いと思わせるのは、

『新平家物語』に登場する
阿部朝鳥と蓬子夫妻という庶民や、
『宮本武蔵』に登場する本阿弥光悦の母、
吉野太夫という女性など、
一人の市井を通して、あるがままの人間の強さ、弱さを伝えているところが、吉川英治文学の真骨頂だと感じます。


志とは何なのか?
強さとは何なのか?

もし、自分に迷っている方がいるならば、
特に『宮本武蔵』は絶対に読むべきです。

ーーー

吉川文学に初めて触れたのは、
21歳の冬だったと記憶しています。
きっかけは、
突然訪れた父の死でした。

いまでもはっきり覚えています。
深夜から朝方まで近くのコンビニでバイトを
していた大学三年の秋。
その朝帰りでうつらうつらと眠りに入ろうと
していた時に電話がなったのです。

電話をしてきた人は親父の再婚女性。
その後、自分を悩ます人になるけど、
それはどうでもいい。父が死んだとの報告。

父には一度も心を開けなかった気がします。
45歳の若すぎる死。
一度も好きになれなかった。

だけど、葬式を終え、アパートに戻ったとき、
なぜか悔しかった。なぜか涙が流れた。
畳みを拳で何度も殴りながら、
馬鹿野郎と叫んだ記憶があります。

今だから思うんです。
もっとしてあげられたことがあったはずだと。

その後、再婚女性が豹変し、
遺産相続を全て我が物にしようと、
自分を相手に裁判を起こしました。

深夜のイタズラ電話が何日も続き、
内容証明が送られてきたり、
弁護士からの脅迫に似た連絡もありました。
父の遺骨の一部を返してくれず、
いまだにどうなったのかさえ分からない。

大学三年の冬になり、
就活にも悩まされました。
就職氷河期であり、思うようにいかない
ジレンマも続いていくことになります。

いくつも試練にぶつかった。
そんな時、読んだのが吉川英治の『宮本武蔵』でした。

小説を読んで涙を流したのははじめてであり、
最初で最後かもしれない。

あまりにも格好いい男の生き方に映ったのです。

いまでも、座右の書は何かと問われれば、
『宮本武蔵』と答えています。

「晴れた日は晴れを愛し、
雨の日は雨を愛す。
楽しみあるところに楽しみ、
楽しみなきところに楽しむ」

「あれになろう、これになろうと焦るより、
富士のように、黙って、
自分を動かないものに作り上げろ。
世間に媚びずに
世間から仰がれるようになれば、
自然と自分の値うちは世の人がきめてくれる」

「転機は、運命と自己との飽和された
合作でなければならない。
転機はいつも、より生きんとする、
若い希望の前にのみある」


一つの道に命をかける男の生き方は、
自分の人生に多大な影響を与えたことは
間違いありません。

やらずに悔やむなら全力でやる。

格好いい、格好悪いなんてどうでもいい。
自分に素直に真っ直ぐ当たる、当たり尽くす。

僕の尊敬する方の言葉に、


「父母を偉大にするか、しないか。それは残された子どもで決まる。子どもが、いかなる生き方をし、何を成し遂げるかにかかってくる。父母は永久に霊山から見つめ続けているんだよ」

とあります。

また、主人公の武蔵のように、
様々な艱難辛苦を乗り越えながら、
偉大な足跡を残した英雄はみな、
苦しみや悲しみを振り返るよりも、
あえて前に、前に足を踏み出す人なのだと
思うのです。

「すべては『これから』であり、いついかなりときも『これから』である。前進の中に勝利がある。栄光がある。悲しみの深さの分だけ、大きな栄光の朝が来る」

男なら是非一度、読んでほしい小説です。


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