死ぬまでに読んでおきたい名作⑤
「本とわたし」シリーズ第五弾📚
勇敢であれ。自信を持て。
忍耐強くあれ!
『永遠の都』ホール・ケイン著
大学生のとき、貪るように読んだ、
イタリア王国・ローマを舞台に繰り広げられた
人間共和、民衆凱歌の革命小説。
ただでさえ、ローマの話しと聞くだけで、
ローマ帝国が強烈過ぎて、
塩野七生の『ローマ人の物語』を思い出す。
*
小説の舞台は、第一次世界大戦前、
20cを迎えるイタリアのローマ。
専制権力と宗教権力の二重の下敷きとなり
苦しむ民衆の大地から、
人間共和の旗を高らかに掲げて立ち上がる、
青年・ロッシと無二の親友・ブルーノの友情。
そして数奇な運命のもとに生まれ、
ロッシと深い恋に落ちるドンナ・ローマとの
ロマンス溢れる愛。
革命家に宿命づけられた迫害。
そして裏切りという試練。
恋人に仕向けられた権力者の魔性たる策略。
ナポレオン、キリスト、カエサル、ガンジー、
マーティン・ルーサー・キング…
時代を動かしてきた革命家で
迫害を受けなかった人はいない。
*
「最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である」
「私たちには今日も明日も困難が待ち受けている。それでも私には夢がある」
これらはマーティン・ルーサー・キングの名言として知られる。
*
まさに、この言葉は青年ロッシにあてはまる。
誰が何を仕向けようと、
無数の敵に囲まれようと、正義は正義!
断じて俺は訴え抜く!語り抜く!
権力者が常に恐れるのは、正義であり、
民衆から放たれる勇気の正論である。
だから、権力者は民衆が賢くならないよう、
狡猾に、わからないようにあらゆる手を下す。
民衆が賢くなって一番困るのが権力者だからだ。
民衆は無能な方がコントロールしやすいのだから。
正義は勝つは嘘であると思うほど、
権力は恐ろしく、激しく強い。
これは歴史がすべてを物語る。
たいていその恐ろしさに身がすくんでしまい、
命を守るために妥協する。
諦めてしまうのが人間の常でもある。
ロッシにも次々に迫害が襲いかかる。
無二の親友・ブルーノを権力は誘惑し、
ロッシと離間させようと働く。
デマを吹聴し、ブルーノに疑いを持たせる。
これもまた、歴史の常として忘れてはならない。
正義への迫害には、必ず世界共通の構図がある。それがデマである。
しかし、ブルーノはロッシを信じ抜く。
命をかけて信じ抜く。
最後まで権力の魔性を打ち返し、
ロッシを信じ、ロッシのために、
「ロッシ、万歳!!」
と叫んで死んでいくのである。
何があっても無条件で信じれる仲間がいる。
何があっても無条件で愛せる人がいる。
人間の偉大さは、
究極の場面に露(あらわ)になる
本性で試されると言ってよい。
親友の命を奪われ、恋人までも引き離された
ロッシが取った行動とは何か?信念とは何か?
彼の瞳は、理想に輝き、
全身には大情熱がみなぎっていた。
小説には、こう描写されている。
「それは燃えつきてやまない偉大な心を持った
人間の表情であり、その人聞性に対する共感は
炎となって燃えさかるものだった。そして世を
救おうとする熱情は燎原の火にちがいなかった」
ロッシは叫ぶ。
「勇敢であれ。自信を持て。忍耐強くあれ」
結末はいかに。
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