深海に住むスポンジが未来の水中都市のカギを握る
深海には私たちがまだ知らない世界が広がっているといわれますよね。そんな海の奥深くで生活している生き物は人類がまだたどり着かないような最新科学を持っています。
今回はそんな深海に潜む生物”カイロウドウケツ”についてのお話です。この奇妙な生き物が持つ幾何学模様は私たちの建築様式を変えるかもしれません。
カイロウドウケツとは?
カイロウドウケツ?なんだそれ?って思いますよね。別名をビーナスの花かごというようです。
Wikipediaより引用
私も最初に聞いたときは知りませんでした。深海に住んでおり動物というよりは植物っぽく見えますが、このカイロウドウケツは海綿体動物というグループの動物だそうです。
海綿体動物の中にはスポンジ状の生き物が多く、このカイロウドウケツはガラスでできた薄いスポンジのような動物です。
そんなカイロウドウケツですが、その特殊な形に注目が集まり、意外と研究が行われています。
今回は、先月のNatureに掲載された最新研究から紹介したいと思います。
特殊な模様は海水の流れを抑制する
深海で生きるカイロウドウケツのとって強烈な海流は命取りです。クラゲのように流されのがデフォルトならいいかもしれませんが、カイロウドウケツは海底にくっついてひっそりと生きています。
そんなカイロウドウケツは上述の記事のように強力な骨格を持つだけでなく、その模様(スポンジ形状)が海水の流れを抑制することがつい最近Natureに掲載された研究でわかりました。
参考文献より引用
研究は非常にいろいろな点を考慮していますが、ここでは要点だけを超ざっくりと紹介します。
今回の研究は水流に対するカイロウドウケツの安定性を調べています。要は、カイロウドウケツがどれだけ水流に強いのかを調べたという話です。
通常、水流がカイロウドウケツのような円柱状の棒に当たると流れが変わり、その影響を受けて円柱がぐらぐらと揺れてしまいます。台風の日に強風にあおられる大木の水中版だとイメージしてもらえばいいと思います。
カイロウドウケツの体はガラスの筒状のスポンジですが、そこには規則的に穴が開いており、また表面には小さなでっぱりがきれいに並んでいます。
研究者たちは、穴の開いていない円柱、表面のでっぱりがある円柱、穴あき円柱、そして穴もでっぱりもある円柱(カイロウドウケツ)の4種類の構造に対して、どのように水流に影響を与えるか調べました。
参考文献より引用(一番右がカイロウドウケツの模倣)
シミュレーションの結果、穴もでっぱりもあるカイロウドウケツを模倣した構造では水流を抑制することができ、円柱自体の揺れを小さく抑えることができました。
つまり同じだけの水流がぶつかっても、カイロウドウケツのように表面にでっぱりがあり穴も開いている円柱はダメージを受けにくい形状であることがわかりました。
今回はカイロウドウケツすごい!!という内容でしたが、この研究自体はカイロウドウケツにインスパイアされてコンピューターシミュレーションを行ったものです。
今回の知見をもとに研究が進めば、もしかしたら、カイロウドウケツよりももっと水の流れを受けない構造がつくれたり、水中での建築に使われる未来が来るかもしれませんね。
最後に
こんなちっぽけな生物の研究がとっても近未来的で、学術領域でも権威あるNatureに載るぐらいですから、海というのはまだまだロマンが眠っています。
また水中都市は未来の建築としてかなり注目されており、大手企業は着手しようというニュースも出ているぐらいです。
数十年後にはカイロウドウケツのビルなんていうのもなくはないのかもしれません。
ちなみに論文中には漢字で偕老同穴(Kairou Douketsu)と紹介されていたりします。英語の論文に漢字が出てくるのは初めて見ました。
参考文献より一部切り抜き
参考文献
Extreme flow simulations reveal skeletal adaptations of deep-sea sponges
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