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きれいな結晶とは

きれいな結晶というと、どんなものを思い浮かべるでしょうか

ダイヤモンドみたいなキラキラしたものでしょうか
それとも金のようなピカピカしたものでしょうか

今回は、一般的な人々が感じるきれいさと科学の世界におけるきれいさについて紹介していきたいと思います。

残念ながら科学の世界(少なくとも結晶の分野)にはきれいとか汚いという表現はありません

ただ、感覚的に”きれい”という感じはわかります。厳密に科学的な側面がなければ、慣用的にきれいなと言葉を使うことはあります。

それでは、結晶を取り扱っている人が感じる”きれい”とはどんなものでしょうか。今回はいろんな意味の”きれいな結晶”について考えていきたいと思います。

原子の並びがきれい

原子が規則正しく並んでいるものを俗にきれいな結晶といいます。一般的に結晶には欠陥と呼ばれる原子が正しい位置になかったり、ずれた位置に存在する状態があります。

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このような欠陥が少なく、原子が定位置に並んでいるものは”きれいな”結晶です。一般的に高品質な結晶というのは欠陥が少ない結晶のことを指します。このような原子のずれが全くない結晶は完全結晶と呼ばれることもあります。

原子の位置が全体的にずれていることがあります。特別、原子が欠落しているようなことがなくても全体的に少しずつ定位置からずれた位置に配置されているのです。このような結晶をパラクリスタルということがあります。このずれがひどくなるとアモルファスと呼ばれるガラスなどの構造になります。

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モザイク

原子が寸分違わず配置している完全結晶はそれほど大きくなれません。その代わりサイズの小さな完全結晶が目で見てもわからなくぐらいわずかにずれて集まっているものをモザイク結晶といいます。

世の中に存在するほとんどすべての結晶がモザイク性をも言っていますが、このモザイクが極端に小さいものを俗に”きれいな”結晶といいます。逆にモザイクのたくさんある結晶はあまりきれいとはみなされません。

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結晶のモザイクについて詳細はこちらから↓



表面荒れ

結晶表面には、原子がきれいに並びます。原子は長い旅の終わりに結晶表面にたどり着くわけですが、そこで表面に取り込まれます。

一般に”きれいな”結晶表面とは、一般的には滑らかな表面を持っています。一方で、結晶の成長条件や状況によっては結晶表面のあちこちで原子が取り込まれてしまい、ラフな(荒れた)表面ができてしまいます。

結晶の表面についてのお話はこちらから↓


屈折率・分散性

ダイヤモンドやスフェーンといった宝石は一般的にきれいといわれます。これはキラキラと光り輝いているためです。

これは結晶の持つ屈折率や分散性といったところが重要になります。屈折率が大きく分散性が高いものは強いファイアを持つといわれ、入ってきた光を虹色の光に分解し、キラキラとまばゆい光を放ちます。



やはり重厚な色合いを見せる金や純白なイメージのある銀や白金はきれいといわれるのではないでしょうか。貴金属のアクセサリーがくすんでいるとあまりきれいには見えないので、評価基準は反射率でしょうか?

でも緑青のようなくすんだ感じに風情や美しさを感じる人もいるので、何とも言えませんね。きれいな金属結晶というのは人の好き好きでしょう。

宝石の色のきれいさは、色の濃さのちょうどよさが基準になります。つまり薄すぎても濃すぎても良くないというのが宝石におけるきれいさです。

とはいえ、ここら辺までくると科学的な意味合いはないため、業界のしきたりや個人の主観になるかと思います。


結晶の形もきれいな多面体のものがあります。しかしこちらも色と同様に個人の主観ではないでしょうか。

強いて言うなら、どのような結晶面が見えているか、どんな幾何学形状かという点がきれいさになるかもしれません。とはいえ、ここにも科学的な意味合いは特にありません。


綿のように見える(繊維状)結晶や葡萄(ブドウ)状結晶に自然の美しさを感じる人もいれば、明確に結晶面の出た水晶や立方体のパイライトをきれいと感じる人もいるでしょう。

最後に

今回は結晶の”きれいさ”さについて考えてみました。科学の世界にはきれいというあいまいな表現はありません。しかし、私たち人間は直観的にきれいなものに引き付けられる習性があるような気もします。

非科学的であるといえ、このきれいさや美しさといった感性について考えてみると面白いかもしれませんね。



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