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ナノ粒子を使った新しい農業

概要

今回紹介するのは、リポソームというナノ粒子を用いて、栄養の不足しているミニトマトの木に栄養を届ける方法を提案する論文です。

農作物を育てる上で、栄養が足りていないのは問題です。栄養欠乏症に対処するため、市販の薬を直接散布するのが一般的ではあるものの、なかなか植物内部に浸透していかないのが課題とされています。今回はナノ粒子という近年流行っているナノテクノロジーを農業に応用し、栄養欠乏の問題を解決しようとしています。

こちらの論文です▼

"Therapeutic nanoparticles penetrate leaves and deliver nutrients to agricultural crops"
Avishai Karny , Assaf Zinger , Ashima Kajal, Janna Shainsky-Roitman & Avi Schroeder, Scientific Report (2018) 8:7589


リポソーム ナノ粒子とは

ナノ粒子とは1~100 nm程度の微細な粒子を意味します。今回使用されたリポソームは脂質二重膜で形成された小さな粒で、その内部に物質を内包することができます。そのため、現在薬物を患部に直接輸送するドラッグデリバリーシステム(DDS)などに応用されています。
今回は、薬物を内包する代わりに栄養素(Mg, Fe)を内包し、栄養自体を植物内の細胞に届けようとする試みです。

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https://en.wikipedia.org/wiki/Liposomeより引用


何がわかったの?

論文では、チェリートマトの葉に栄養素を内包したリポソームを塗布して、栄養成分がどのように広がっていくのかを調査しています。
チェリートマトってなんだ?と思って調べてみると、私たちが普段見てるミニトマトとかプチトマトのことらしいです。(厳密にはわからないですが、おそらく小さいトマトのことだそうです)

葉に塗布されたリポソームは植物内部に侵入したのち、ほかの葉や根などにも移動している様子が確認されました。移動したリポソームは細胞内でリパーゼという消化酵素、または浸透圧により崩壊し、内包された栄養素が放出されました。
リポソームを塗布した場所から離れると、その到達量は少なくなりますが、栄養素の欠乏症を治療するためには十分な量が届けられていたそうです。
またこの方法を用いた場合、これまでの塗布方法と比較して高い効率で栄養はいきわたり、その取り込み率は30%以上でした。これは以前に報告されていた0.1%の取り込み率よりもはるかに優れた値です


感想

医療分野や材料分野で長く研究されたリポソームによる物質輸送が農業にも期待されているのは夢がありますね。
原理的にはありえそうな話でしたが、実際に植物にも有効にはたらいたというのは興味深い話ですね。

私もナノ粒子の研究をやっているので、将来的にはこんな風に役に立つ成果を残したいものですね。

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