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結晶のプロがアルツハイマーの鍵を握る

軽い物忘れぐらいならいいですが、将来歳をとって記憶がなくなっていくのはちょっと怖いですよね。

今回はそんな記憶障害の1つであるアルツハイマー解決のカギを結晶のプロが握っているというお話です。

現在、アルツハイマーは脳内であるタンパク質が集まって溜まってしまうのが原因と考えられています。(実際にこれだけかはわかりませんが、積極的に研究されています。)

このタンパク質が今回のテーマでアミロイドβといいます。
このアミロイドβが集まってしまうと、アルツハイマーになってしまうのではないかといわれているわけです。


アミロイドβの凝集

以前、体の中で作られる結晶の1つである結石について紹介しました。

結晶の成長と分解(融解・溶解)は表裏一体の関係にあるので、結晶づくりの専門家は逆に結晶を抑制(溶かす)することもできるのです。そういうわけで最近では結晶のプロが結石を予防することを目指しています。

それと同じようにアミロイドβの凝集(結晶化)を抑えるためには、結晶のプロの出番なわけですね。

とはいえ、タンパク質の1種であるアミロイドβが結晶化するってどういうこと?と思われるかもしれません。

少し広い意味で結晶化というと、ある構成成分(原子・分子・粒子・タンパク質)が規則正しく並ぶことを意味します。

このアミロイドβも下の図のような形に整列していきます。テキトーに集まってるわけではないんですね。

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参考文献より引用

ひも状のタンパク質の場合、結晶になったものをフィブリルと呼んだりします。イメージとして糸が集まって紐になっているような感じでしょうか

まあ細かいことは置いておいて、アミロイドβというタンパク質が集まってくるとよくないよ、ということがわかれば大丈夫です。


結晶成長と分解

医療系の人はあまり気にしないかもしれませんが、結晶のプロは結晶成長の観点からタンパク質のアミロイドβを見ているようです。

今回リアルタイムで観察したところ、アミロイドβが束になるときは、1つずつくっついて順調に大きくなっていく様子が観察されました。ちなみにこれはこれまで知られていた成長の仕方と違ったようです。※

またアミロイドβの束が分解(溶解)するときは、1つ1つほぐれて溶けていくことがわかりました。

そんなことが分かったところで、アルツハイマー治らないんじゃないの?と思われるかもしれません。

しかし、今後の研究によりアミロイドβがどうやって集まってくるのか、どうしたら分解できるのかが解明できれば、脳内で大きな塊になる前に分解してアルツハイマーを予防することができるはずです。


最後に

最近、凝集という話を聞くとこれって結晶化?かと思うようになってしまい、アミロイドβを調べてみると案の定結晶成長の研究がされていたという感じです。

ちなみに今回調べられたのはアミロイドβ40というやつです。

そういえば人間が年老いてボケるのは死への恐怖をなくすというのを見たことがあります。
この説が正しいのかはわかりませんが、もしそうだとすると複雑な気分になりますね~



※これまでの結果と違ったという点に関して
これまでは静置したところで観察されており、なおかつフィブリルがthreefoldの状態になっていました。
一方、今回の研究では、攪拌された流れのあるところで観察されており、フィブリルはtwofoldの状態になっていました。
おそらくこの違いが、結晶成長のメカニズムに違いを与えていたと考えられています。


参考文献
Yuechuan Xu, Mohammad S. Safari, Wenchuan Ma, Nicholas P. Schafer, Peter G. Wolynes, and Peter G. Vekilov, Steady, Symmetric, and Reversible Growth and Dissolution of Individual Amyloid‑β Fibrils, ACS Chem. Neurosci. 2019, 10, 2967−2976

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