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デバイスの放熱問題をミクロな銅の森が解決する

スマホやPCなど、電子デバイスを使っていると熱くなった経験がある人は多いのではないでしょうか。このデバイスからでる熱は適度に逃がしてやらないと、故障や動作不良につながります。これをデバイスの放熱問題といいます。

しかしながら、現在このデバイスの放熱問題を完璧に解決するような材料は見つかっていません。熱を上手に逃がすというはとても難しいことなんですね。

今回紹介するのは、目には見えないぐらい小さなミクロな銅でできた森を使うことで、放熱問題を解決しようというお話です。


ミクロな森を作って熱を上手に逃がす

水を使った放熱原理は非常にエコで、単純でありながら強力な方法の1つです。

ここで、その原理を簡単に紹介します。

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熱源で温められた水は蒸発して水蒸気となり上部へ移動します。先端部で水蒸気が冷やされることで水滴となり再び下に落ちます。熱源の熱を吸収し外部に逃がす方法としてとても理にかなった方法ですね。


この方法を使って、電子デバイスの熱を逃げしてやろうというのが今回の研究の肝になります。

この研究では、銅板の表面を電解処理することで銅製の小さな樹枝状構造を作成しています。これは電池の電気化学反応でもよく見られるデンドライトと呼ばれる構造です。

デンドライトについてはこちらから


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参考文献より引用

見てみると本当に木が生い茂った森のようにも見えます。

この銅の木の間を液体が移動することによって、デバイスの熱を外に逃がすことができます。

ミクロな森の実力はいかに?

平らな銅板と表面にミクロな森を作ったフィルムでその性能の違いを調べました。その結果、なんと最大8℃も温度に差ができたようです。

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参考文献より引用(左:平らな銅板、右:銅の森フィルム)

写真を見ると分かるように、確かに右側の銅の森フィルムを使った方が温度が低いことがわかります。そして左側のただの銅板に比べて、銅の森フィルムの方が均一に温度を逃がすことができることもわかりました。

また銅の木は多すぎても少なすぎても良くありません。どのくらいお生い茂っているかも大事な要素です。この研究では全体の71%~78%ぐらいを覆った状態が最も効率的に熱を逃がすことができると調べました。

最後に

私自身が研究してきたわけではありませんが、このデバイスの放熱問題を解決する素材の研究は長く身近に聞いていたので、とても面白い研究だと思いました。

なんといっても、その作りやすさが重要です。いろんな場所で使われる素材はいくら性能が良くても作るのが難しければ普及することはありません。

今回、作られた銅の森は電解析出という非常に簡単な方法で作られています。この性能がコストに見合うものになれば実用化されるのも夢ではないですね。


参考文献

Biomimetic Copper Forest Wick Enables High Thermal Conductivity Ultrathin Heat Pipe

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