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小さな小さな半導体:量子ドット

最近、量子コンピューターの記事が結構出てきて、難しいな~という印象を受けます。

多くの記事では、量子コンピューターで何ができるのか?どうやって計算しているのか?について書いてあるんですが、そもそもどうやって量子計算機を作るのかは書かれていません。

量子計算の手法自体重要なことなんですが、計算機用の材料開発もまた重要です。ソフトウェアができてもハードウェアがなくては何もできないですからね。

今回は、量子コンピューターにも使用が期待されている、量子ドットについて紹介したいと思います。


量子ドットとは

量子ドットとは、簡単に言ってしまえば半導体ナノ粒子のことです。

下の図は容器に入れられた量子ドット。液体の中で微細な半導体がプカプカと浮かんでいるイメージです。

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https://avantama.com/what-is-a-quantum-dot/より引用

半導体に関してはバンド構造の記事を見ていただけると分かると思いますが、語弊を恐れずいえば、普段は電気を通さないけど、ちょっとエネルギーを与えると電気が流れるようになる物質です。

この半導体技術は今やナノメートルスケールまで小さくなってきましたが、この半導体を小さな粒子(ナノ粒子)にすると、面白い現象が現れます。このナノ特有の現象が現れる半導体ナノ粒子を量子ドットと呼びます。

どうして”ドット”と呼ぶんでしょうか?
これには量子閉じ込め効果を知る必要があります。


量子閉じ込め効果

量子とは簡単に言えば電子のことです。厳密には違うかもしれないですが、ここでは難しいことは置いておきます。つまり、電子を閉じ込める効果ということです。

半導体を薄くしたり、細くしたり、小さくすると、ナノ空間に電子が閉じ込められるようになります。このような電子を閉じ込める構造を量子井戸、量子細線、量子ドットと呼びます。

電子は…
量子井戸:2次元方向の薄膜内を動ける
量子細線:1次元方向の線の中を動ける
量子ドット:0次元の粒子中にしか存在できない

結構有名なイメージですが、これを見れば一目瞭然だと思います。

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金属ナノ粒子、磁性体ナノ粒子、半導体ナノ粒子とそれぞれ面白い現象が現れますが、ここでは半導体ナノ粒子(量子ドット)にフォーカスします。


半導体の性質

電子が自由に動き回る金属とは異なり、半導体の中には、はじめから自由に動ける電子があるわけではありません。ここで、半導体は光(エネルギー)を与えると、わずかに電子が自由に動けるようになります(励起)。

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半導体ナノ粒子である量子ドットに光(励起光)を当てると、わずかに電子が動けるようになりますが、時間がたつと元の安定な状態に戻ります。この時、エネルギーを蛍光として発することで光ります。

このときの蛍光の色はバンドギャップの大きさで決まります。そして、バンドギャップは量子ドットのサイズによって変わります。つまり同じ素材の量子ドットを使っても、その大きさが違えば異なる色の光を発することになります。

このような、特徴は主にナノスケールでないと現れません。そういった点で、量子ドットは新しい半導体材料としてかなり期待されています。

以上の点が材料工学がナノテクノロジーと相性がいい点になります。これまで素材の選定や組み合わせで新しいものを生み出していましたが、これからはナノスケールのサイズや形を制御して夢の材料を作れるようになるわけです。


最後に

量子ドットは蛍光材料以外にも様々な用途が考えらえており、今後様々な分野で使われることになるでしょう。

量子という言葉がどんどん広がると怪しげな人たちが増えてきますが、実際のところはあくまでこれまでの科学の延長上にある物理現象なんですね。

量子ドットと調べると、最近では量子コンピューターについての記事が出てきますが、まだまだ先は長そうです。というのも、人間がナノスケールの構造を制御して、電子を自由自在に操るのは現代科学をもっても発展途上です。

人間が自由に量子力学の現象を利用できるようになるのはいつになるんでしょうね。

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