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万能感の反対は無力感

前回は、万能感とは何か、何のためにあるのかについて説明しました。今回は、万能感の裏側にあるものは何かについて説明します。

おさらいしておきましょう。万能感とは、自分は何でも知っているし、何でもできる感じのことです。無限で無制限な自己効力感であり、これによって自分が他の人間とは比べものにならないくらい価値があると感じます。

(読了時間:約3分)

万能感の反対は無力感

万能感の裏にあるのは、無力感です。無力感は万能感の正反対の性質を持ちます。万能感が、何でも知っているし何でもできるという感覚であるならば、無力感はその真逆、何も知らないし何もできないと感じることなのです。万能感では、無限の自己効力感を持っていて、無力感では無限の自己効力感を持っているのです。無限小の自己効力感は、すなわち自己効力感を失った状態のことです。

万能感では、何でもできると同時に何をしても許されると感じていました。これに対して、無力感では、何もできないと同時に何もしてはいけないと感じます。

更には、無価値、すなわち自分にはまったく価値がないというような感じがします。これは、万能感があるときに感じていた比べようがない自分の価値が反転した結果です。似たパターンでは、自分が平凡で凡庸で特別なところがないと感じることもあります。

もしくは、自分を悪い(反価値的な)存在だと感じます。たとえば、自分が他者よりもはるかに劣っている、自分が悪い一面で特別で周り人間から迫害されると考えるのです。加えて、万能感から生まれた理想や完璧な部分も裏返り、不全感、つまり自分は自分を幸福(満足)にしたり、目標を達成できない、欠けているところがある、不全だ、という感覚を持ちます。

それだけではなく、自己効力感を失っているので受動的になり、他者に服従しがちになります。万能感のときは権力を持っていました。すなわち、他者を思い通りに動かせると思っていたのです。しかし、無力感を感じるときは、他者が権力を持っていると感じます。そのため、他者に動かされるしかないと考えるのです。これは自分の権威、つまり自分の意志で自分の行動を決定できる状態を見失っているのです。

まとめ

万能感の反対は無力感です。これは以下のような感覚がする自己否定的感情ことです。

①自分は、無知無能の(何も知らないし何もできない)存在である。不完全または欠損を持った存在である。
②自分には価値がない。または悪い(反価値的な)存在である。
 a. 優越の反価値:自分は他人よりもはるかに劣った存在だ。
 b. 特別の反価値:自分は悪い意味で例外的な存在である。(だから、他者から迫害される)
 c. 優越の無価値:自分には価値(優れたところ)がまったくない。
 d. 特別の無価値:自分は平凡で、他の人と違うところはまったくない。
③自分は、何もしてはいけない。
④自分は、他者に従わなければならない。あるいは、他者に従うしかない。

おわりに

万能感は、無力感と隣り合わせです。無力感を強く持つと、人は抑うつ的になります。ですが、万能感で心を満たしても困ったことが起きます。

次回では、万能感のメリットとデメリットについて説明します。

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