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東京カフェ紀行 2軒目

月曜日、午前中は空きコマなので
いつもこのカフェに足を運ぶ。
駅から大学の間にある丁度良い場所で
かつ、隠れ家のようなお店である。


1階でオーダーし、2階へ。


客席はとても少ないが、
定位置は窓際の3人がけ。

毎週ほとんど開店と同時に行くのだが、
そこにはいつも先客がいた。

3人がけの端と端、
真ん中の1席を空けて座る。

先客はいつも、何かを読んでいる。
資料だったり、冊子だったり、
きれいに整えられた爪や
モノトーンで揃えられた服装は
いつみても洗練されていた。


注文していたドリンクが運ばれてくる。

それを、ひとくち。

「あま」

素朴な黒蜜がのせられたミルクコーヒー。
温かくて、甘くて、沁みる。

「今日は、何頼んだの?」

「黒蜜ミルクコーヒーです」

「甘そう」

「甘いです。甘党なので」

「かわいい」

ちょっと照れる。

2人だけのこの空間。
しばらくは、誰も来ない。

毎回隣に座ると少しだけ話しかけてくれる。
この人に会えるから、
通っていると言っても過言ではない。

相変わらず真剣に手元に視線を
落としている先客の隣で、
パソコンをま開きまだ締め切りまで
余裕のあるレポートに取りかかる。

追加のフードを頼む頃にはいつの間にか
いなくなっていて、ちょっとだけ
存在が信じられなかったりする。

でも、また月曜日になれば
会えるだろうから、来てしまうのだ。





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