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流れ藻 5. 母子寮
5. 母子寮
その夜、大塚夫人の出産が始まった。
灯りもない、方角も知らない未知の土地で手分けして探して歩き、助産の経験者を迎えてくる者、ロウソクの灯りの下でお互いの肌着を切り裂いて、産着を作る者、寮中を頼み歩いて、たらいを、洗面器をと借りて来る者。
二部屋をあてがわれ、詰め込まれていた一方を空け産室にあて、あとの者は押入に子供を寝かせて、ぎっちりと座って出産を待った。
この時も笠
流れ藻 4. たどりつく
4. たどりつく
汽車はチチハルに至り、やはりチチハルに降ろされた。
長い旅を終わった解放感でホームに並んで足元に荷を置いた。
一瞬ヤレヤレとした気持ちを吹き飛ばすようにサイレンがうなり、空襲を告げた。
時間は分からない、夜だった。ホームでの急な措置に迷っていたら、スピーカーが、うまく誘導してくれて、荷物はそのまま、線路をこえる、そしてまっすぐ、とスピーカーにつれられて駅内に入ってギョ