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55日間外出禁止中、シェフの夫は何を作っていたか。 〜3月29日 ルバーブとガリゲットいちごのパルフェ

 ちょうど夏時間になったこの日、まんまと1時間寝坊してしまった。毎年、夏時間になる日にはなんとなく盛り上がるのだが、今年はあっさりやって来た感じ。ちょうど2日前には、あと2週間の外出禁止延長の決定もあり、夏に向けて盛り上がる雰囲気ではまったくなかった。

 ところで、わたしには好き嫌いがほぼない。仕事柄もある。好き嫌いがあったら、食べ物のライターはやっていけない。しかし、わざわざ選ばない、優先順位の低い食べ物というのは存在する。そのひとつがルバーブだった。

 ルバーブはタデ科の植物で、すっぱいフキのようなもの。パリでは春先に八百屋で見かけるようになる。これまでもコンフィチュール(ジャム)やタルトなどのデザートで食べたことがあったが、大好き!というほどにはならなかった。というのも、どれもこれも甘すぎたからだ。甘いものは好きだが甘すぎるものは嫌い、という、めんどくさいスイーツファンなのである。しかし、夫に作ってもらったポシェのおかげで、わたしはルバーブ大好き人間へと生まれ変わった。

 モンマルトルの小さな八百屋「四季の詩」で見つけた、大きなルバーブの束。目にも鮮やかな深い赤色が、あたたかな季節の訪れを感じさせる。なるべく赤い茎を選んで、ひと口大に切る。甘いワインを入れたシロップを沸騰させ、そこにルバーブを入れて、フタをしたら火を止めて終了。火入れを少なくすることで色止めとなるという。それをひと晩おけば、ルバーブのポシェの完成だ。休ませることで、すっぱさがほどよく抜け、シロップの甘さがじんわりと浸み込む。

 柔らかな食感を残したルバーブは、甘さと酸味のバランスが絶妙で、いくらでも食べられそうだ。たしかに、柑橘でも、ベリーでもない、独特の酸味は、ルバーブでしか得られないものかもしれない。この野菜が、長い間多くの人にデザートの材料として愛されてきたことに、はじめて納得した。

 せっかくポシェを作ったんだから、とパルフェにしてくれた。パルフェは日本語のパフェとほぼ同じ。数日前に焼いたサブレ・ブルトンとシャンティ(泡立てた生クリーム)、そして旬のガリゲットいちごを盛り付ける。ガリゲットいちごとは、フランス産ブランドいちごの一種で、とても甘く、酸味もしっかりして、食感もみっちりしている。なにより香りが甘美で素晴らしいのだ。

 もともとの大好物ガリゲットいちごに新好物のルバーブのポシェ、そして心中できるほど好きなシャンティとサブレ。一気に食べきって、もう大満足!だがしかし、おいしいものはだいたい高カロリー。この頃から、コロナ太りがやや気になり始めたのだった。


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