いじめの要因と防止法

概略
 いじめの要因に自己肯定感の低さが挙げられます。何故日本人は自己肯定感が低いのか、教育の観点から明らかにし、自己肯定感を高める方法を提示しました。また、ユング心理学の観点からも、現在の教育の問題を指摘しています。
 私は、これまでの経験からクラスの親密度に、いじめの傍観者を仲裁者に変える可能性を見出しました。そこで、クラスの親密度が上がったタイミングを考察し、データを収集しました。

目次
1章 いじめのメカニズム
2章 現在の教育
3章 いじめの起きにくい環境とは?
4章 子どもの自殺が持つ意味


1章 いじめのメカニズム
 いじめ問題は、80年代から社会問題として意識され始めました。それから20年以上、教師たちは献身的な努力をしているものの、未だ深刻ないじめは続いています。何故いじめが続いているのでしょうか。いじめ問題を解決するには、そのメカニズムを知らなければならないと考え、私はいくつかの論文を読みました。
 調べているうちに、子どもの心が不安定であること、充足感を得られていないことをあげた論文が非常に多いことに気がつきました。ストレスにより、攻撃的になってしまうのです。更に、自己肯定感の低下が指摘されていました。いじめられてしまう子どもの多くは、自尊感情が低いと言われておりますが、それだけでなく、いじめる側も自尊感情の低いケースがあるのです。というのも、「自分は有能である」という思い込みを形成している中で、その実態を自分自身で理解しているために劣等感に悩まされ、ストレスを緩和するために、自分より下とみなした人をいじめているのです。日本は特に自尊感情が低く、いじめの発生しやすい環境になっています。この要因の一つに成功体験の少なさが挙げられました。日本の教育は一方的に情報を提供し、生徒が何かを成し遂げる体験が極端に少ないのです。近年はアクティブラーニングが流行っているので、その手腕にかかってくるのかもしれません。
 また、いじめの予防策としても、自尊感情を高める事は真っ先に言われています。他にも、幼い頃から基本的な生活習慣や道徳観・規範意識を学習させることが有効であるとされています。実は、この全ては「国立青少年教育振興機構」などの調査を参照すればわかる事ですが、自然活動によって高められる事が明らかになっています。
 現在は子どもの遊ぶ場所が奪われ、教育方針としても外で遊ぶ暇があるならと詰め込み教育がされています。しかしこの事は、いじめを助長する要因になっていると思うのです。子どもはやはり、時には無邪気に外で遊ぶ必要があるのです。そして、知識を身につけさせるために勉強だけをさせている進学校・ご両親に特に言いたいと思う事は、自然活動と学力には関連性があるという事です。自然活動をしている子どもの方が、学力が高いというデータも出ているのです。であれば、むやみに抑圧する必要はないのではないでしょうか。
 さらに、ユング心理学観点から見ると、異質であり受け入れがたい存在を外部に投影することで、スケープゴーストを作り出し、避難・攻撃することで、心理的安定を得ようとしていると考えられます。もしかすれば、他とは違う子をいじめる理由に、こういったものがあるのかもしれません。
 私はハーフであるため、現在「ハーフのアイデンティティ」をテーマに卒業論文を行なっていますが、ハーフが非常にいじめられやすいということを知りました。特にアメラジアンという日本とアメリカのハーフである子どもは、重松・スティーブン・マーフィー(1994)の統計で、80パーセントがいじめを受けた経験がある回答しています。アメラジアンは特に沖縄に限定していうことが多いのですが、いじめの要因に「米軍基地の人間の落とし子」である事が挙げられます。受け入れがたい存在である事が、いじめの発端となってしまっているのです。これに限らず、白人の子どもか、黒人の子どもであるかによっても状況は異なりますが、いじめを経験したハーフは多く存在します。論文でも、ハーフといじめの関連性を指摘したものが多く見つかりました。ハーフは、いじめのターゲットになりやすいだけでなく、複数の国のアイデンティティで悩み、揺らぐために精神が不安定である結果、いじめに対してナイーブであることもわかっています。それ故に、自殺しやすくもあるのです。もともと、いじめのターゲットには精神の不安定な子どもがなりやすいため、これはハーフに限る話ではないように思えます。


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