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森の音楽隊


#わたしの旅行記

子供のころによく聴いた童謡のひとつに『森の音楽隊』がある。
小鳥がフルート、子ダヌキが小太鼓、子リスがバイオリンを奏でて「どう?いかがかしら?」といった内容だったと思う。
なかなかレベルの高い幼い動物たち(!)

なぜ旅のテーマのはずが動物の演奏会かというと、
私の参加した演奏会が楽器と共に出かけた初めての旅であり、まだまだひよっこで初心者を抜け出せない自分のイメージと重なったから。

繊細な私の木製の弦楽器は、乗り物の振動で壊れないだろうか?雨の予報に、濡れないだろうか?
旅立つ前にはSNSで情報を集めたり、レインカバーを探したり、高速バス会社に問い合わせて「揺れないお席をお願いします!」と念の入れよう。
(アクセスが悪く、先にホテルに送るのも、飛行機の手荷物預かりも心配だっだもので)

わたしの心配をよそに、楽器は何食わぬ顔をして、私の横でスヤスヤと弓が弾かれるまで寝ているかのようにコトリともしなかった。

約10時間!!のバスの旅を終え、東京へ到着した後は「こんなに旅の仲間を大切にしたのは君が初めてだ!」という感慨にふけったのを思い出す。

そして都会の雑踏を、生まれたての赤ちゃんを、初めて家に連れて帰る母親のように楽器を抱えて歩いた。私はどんな風に見えたのだろうと思うと今でもクスッとなる。

演奏会当日は、緊張はおろか、安堵と、それこそ森の音楽隊のごとく「ここまで来ました!どう?」
といった妙に落ち着いた気持ちでとても集中して楽しめ、それは今のモチベーションにも繋がっているし、あの時の10時間(往復20時間)の旅は今では良い思い出になった。

次回の旅はもう少し腕の力を抜いて抱えることにしよう。そう小さな楽器に心の中で呟いた。






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