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テクノ2018ベスト

いわゆる年間DJチャートというやつです。

テクノが大好きで、今年もたくさん聴きました。たとえDJの予定が入っていなくても日常的に新譜はチェックするし、ごはんを食べるようにテクノは聴く。もちろん、ジャンルは偏っているんですよ。テクノシーン全体を俯瞰するような聴きかたはとてもできない。ましてや、マイナージャンルの蛸壺化が叫ばれて久しいクラブミュージック界隈ではあるので、お隣さんが聴いてる音楽を全然知らないみたいな世界であることはおことわりしておきます。これはわたしの2018年テクノ10選です。

noteの当アカウントでは、今年の5月から、「テクノ新譜試聴メモ」として毎月継続して新譜のレビュー記事を書いてきました。すべてのログはマガジン「テクノ新譜試聴メモ」に収録しています。これはなんか急に啓示が降りてきて始めたとかではなくて、わたしは以前からブログに買ったレコードや曲の感想を淡々と書く…みたいなことを大学生のころからやっており、断続的にもう15年くらいになります。単にその延長なわけです。

普段のレビューはアーティストの出自やレーベルの近況、関連リリースなどを調べたうえで、自分なりに淡々と、研究員が標本にインデックスを振るように、つとめてシステマチックに書いているつもりです。ただまあ、この記事で同じことを繰り返し書いても仕方ないので、あまり深く考えずに、ノリと感覚で軽い感想を添えていきますね。同じような音楽を嗜好するかたの、なにかのきっかけになれたら。これはいったいどこの誰なのかとか、どこで買えるかとか、気になったらググってね。

タイトルの表記は、
順位. アーティスト名 - 楽曲タイトル [レーベル名]
の順です。では10位から。

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10. 0010X0010 - Alien Love Syndrome [AYCB]

いきなりごめんなさーい! これはホントは2017年のリリースですが、今年買ってめちゃめちゃ気に入ったのでどうしても入れたくて。脳内麻薬ドバドバ出る系のピークタイムキラーチューン。こんなのもうずーっと聴けますね。ていうかPVいま初めて見たけどシンプルに悪夢的でかっこいい。

9. Body Unknown - Lack of Skin [Horo]

ついこの前12月の新譜まとめに入れたKwartzのやつ。今年Kwartz名義でHoroから出たアルバム"Body Sedation"も良かった。この人はダークでインダストリアルなテクノをずっと作ってきたんだけど、ここへきて音像が一気にハイファイになり、表現力が一段階上がった気がしています。身体から湧き上がってくるようにして有機的に変化する多層的なノイズ。ドープ!

8. Marco Bruno - Entropia [SK Black]

これは今年前半のリリースながら、チェックが遅れてレビューしそびれていた曲。Marco Brunoを初めて知った。高音の前のめりなグルーヴの推進力もあるし、そもそも低音域の重心の安定感がすごい。3:30くらいからのブレイクも上がる。こういうのがいいんだよ~~みたいなね。

7. Theo Komp - Stalin [Decoy]

スターリン!…がこの曲にどこまで関係あるのか分からないけれど、少なくともPVには関係ありそうですね(上記は本人のアカウントでアップロードされているビデオ)。無慈悲な4つ打ちキックと、適度に挟まれるノイズで程よくビルドアップしていく。目立ったウワモノシンセもないのに、これだけ明確に個性を打ち出してくるのはすごい。

6. Yan Cook - Sand [Arts]

今年も安定してチョー良かったArts。いまプロパーなニュースクール/ロウ・テクノで間違いないレーベルを聞かれたら真っ先に挙げるのがArtsです。ひとことで言うと硬派。Sandは2:30くらいからのシンセスタブのキーが上がっていく奥ゆかしくもエモなブレイクでヒューって感じです。それにしても音がいい…あらゆる音が埋もれず高い解像感を保っている。

5. Randomer - Fat Purple Figs [Headstrong]

今年イチキャッチーで耳に残るリフ! この平均律から微妙にピッチがずれた絶妙な気持ち悪さ、アナログ機材で感覚的にやっているのか、はたまたマイクロチューニングみたいなことで意図してデザインされたものなのか。後半くらいから後ろでふにゃ~ふにゃ~みたいにして鳴ってるリードシンセも不穏でいい。これとかもうすごくモダンなレイヴトラックだなあと思う。

4. SHXCXCHCXSH - FFUFFUFU [Rosten]

今年も超絶かっこよかったSHXCXCHCXSH!! 独特の「汚れ」感、退廃的で内省的な世界観が極まっており、決して作るものすべてが成功しているとは言わないけれど、常に謎めいた鈍い光を放っていた。この曲は異様な中毒性があり、繰り返し繰り返し聴いた。脳に直接効くヤバイ周波数成分が含まれているのではないだろうか。

3. Judas - ID 7 [Arts]

"Unsaid Pt.1"より。この曲もハマったね…。徹底して潰したローファイなビートの上に、宇宙人👽同士が会話しているような気味の悪いシンセが一定の周期で増幅されていく。そして2:50くらいからのブレイク! 永遠に聴いていたいよ…と思っていると、5分半で急に何もない宇宙空間に放り出される。そしてまた最初から聴く。この曲みたいにアクの強い曲を、たとえば2時間くらいのDJセットのなかで最良のタイミングで使うのは実はけっこう難しいことかもしれない。

2. Avgusto - When The Going Gets Rough [Flash]

この曲はどうもオリジナルがAvgusto本人のレーベルGrindからリリースされたのが2016年で、今年Flashから改めてシングルEPが出たっぽい。声ネタ一発で引っ張る、昔ながらのテクノのパワーに溢れたハードコアで直線的なトラック。これはビデオもフェティッシュで超かっこいいよ(ダンスがちょっとフリーキーでバカっぽいところも含めていい)。

1. Alignment - New World [voxnox]

7月に書いた上半期ベストの筆頭に挙げた曲がそのままゴールしました。なんていうか、ツボ! 昔のMijk van DijkとかOliver Liebみたいなジャーマントランスの香りもあり、だけど音的には非常にモダンな多重レイヤー感と高い解像度で、レコードで試聴していたら針を落として2,3秒で分かるみたいな絶対的な良さ。

問題はこれ142bpmなんですよね。聴いててそんなある!?と思ったけど、rekordboxにかけると確かに142ある…。この速いグルーヴもジャーマントランス的で、落とすとパワーが損なわれる感じがして難しい。今年買ったテクノで140超えてるのこの曲だけかもしれない。

でも別にこの曲に限らず、いろいろなテクノDJのミックスを聴いていると、かつての速いbpmへの渇望みたいなのは確かに感じられる。I Hate ModelsのブレイクやRegalのレイヴEPに見られるような「レイヴ回帰現象」とも無関係ではないように思う。テクノにパワーが戻ってきている。

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ベストアルバム
Inigo Kennedy -Strata [Token]

これは記事に書いたとおりです。都合が悪く、Inigo Kennedyの初の来日DJに行けなかったのが悔やまれる…。でもこれほんといいいですよ。

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「テクノ新譜試聴メモ」マガジンはこちらです。来年もテクノだ!


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