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テクノ2018上半期ベスト

2018年上半期にリリースされたテクノ単体トラックの中から、個人的に特に刺さった7曲をピックアップします。例によって独断と偏見しかないやつ。一部は5月から始めたnoteマガジン「テクノ新譜視聴メモ」と内容が被るかと思ったけれど、意外にそれ以前の曲が多くてそうでもなかった。

それぞれの曲について、YouTubeのフル試聴動画とBeatportまたはBandcampの楽曲購入リンクを併記します。タイトル表記は<アーティスト名 - タイトル名 [レーベル名]>の順です。

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Alignment - New World [voxnox]

今回7曲選んだけど、1曲に絞るならこれ!最初の数秒でわかる無慈悲な世界観と音の良さ、とにかくループの完成度が高いのでいつまでも聴いていられる中毒性がある。途中のブレイクのとこのちょっと昔のジャーマントランスみたいなノスタルジックなパッドのシーケンスも意外性があっていい。シンプルだけどこういうのこそ難しいよ。

AlignmentはSoundcloudアカウントもあるソロアーティストだけど詳しいことはよくわからない。過去作にもかっこいい曲があって、まだ数は少ないけど全部遡って聴いてしまった。このEPはジャケのペインティングもどことなく不穏でかっこいい。惹きつけられてしまう。

Avgusto - When The Going Gets Rough [Flash]

AvgustoはベルリンのClemente Pesceのソロ。これはメチャクチャかっこいい。タイトルの通りの声ネタが延々と繰り返されるダーク&ロウスタイルの骨太テクノ。徹底した縦ノリを貫いている。一年前の時点で投稿されているオフィシャルのビデオも超かっこいいのに、再生数が180回とかなのがどう考えてもおかしい。わたしが一人で80回くらい再生している。

Daniel Avery - Radius (Surgeon Remix) [Phantasy Sound]

原曲はテックハウス系のアーティストらしいがよく知らない。とにかくSurgeonのモジュラーシンセばりばりのピーキーなリミックスが熱い。前半はそれでもキレイなシンセパッドを生かした大人しめのバランスなんだけど、2分半くらいからだんだん様子がおかしくなってくる…!裏で鳴っていたノイジーな反復音が前面に出てきて、ギュルンギュルン言いだす。曲のアウトロ、音が消える最後の一瞬まで聞き逃せないので、これはぜひ通して聴いてほしい(このオチはずるいと思う)。

Surgeonは5月に出したアルバム"Luminosity Device"も良かった。モジュラーシンセの研究で得た知見を、昔ながらのテクノ作りのメソッドに流し込んだ、無邪気で素直な作品だった。コンセプチュアルなサウンドもいいけれど、こういうのでいいんだよ、こういうので!みたいな良さがあった。最近のSurgeonいいですよ、すごく。

Yan Cook - Sand [Arts]

Yan Cookはウクライナのアーティストで、既にPlanet Rhythmなどのレーベルからもガンガン出している。今作はArtsからは2枚目のEP。キックの一発目から重くて大好きになってしまう。抑制の効いたシンセスタブのリフが、中盤のブレイクでちょっとキーが上がるとこギャーッとなる。こんなのめちゃくちゃ使いやすいやつだよ。

I Hate Models - Requiem Of Desolation [Rave Or Die]

I Hate Modelsがしばらく前から自分のDJのピークタイムでかけてるヤバい曲があるのは知っていて、それがようやく出た。見るからに若いアーティストなんだけど、こういう感じの90年代直撃のトランシーでメランコリックなテクノをストレートにぶつけてくるのだ。心底好きなのが伝わってくる。

こういうスタイルのテクノが、トランスやハードテクノの文脈じゃなくてArtsとかDax JのMonnom Blackとかの割と渋めの、ベルクハイン的なロウ・テクノのサイドから出てきたのが燃える。そういう動きが確かにある。このトラックはBandcampで買える。

Stigmata - Paraspectral [Modular Source] 

Stigmataがアルバムで復活というニュースにはぶっ飛んだ。2000年代前半にAndre WalterとChris Liebingがタッグを組んで、ハードテクノからシュランツへの道筋を作ったあのStigmata。後にAndre Walterのソロ名義としてモダンな音数の少ないスタイルにシフトしたのは知っていたけど、ここでは完全に昔のダーク&ハードなスタイルで戻ってきた。質感がまったく当時のまま、よりいい音にアップデートされていて全曲使える。ストロボのみの真っ暗なフロアで爆音で聴いて前後不覚になりたい。

Judas - ID 7 [Arts]

いやあ~これほんといいよずっと聴けるよ。噛めば噛むほど味が出る。

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ベテラン勢が何周かして、往年のガチのテクノで勝負してきているところが個人的にはとってもうれしい。相変わらずテクノは盛り上がっている。

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