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マガジン

  • 西村賢太私研究

    貫多

  • 近代の小説 / 田山花袋(著)

  • 血の呻き/沼田流人(著)

    北海道のプロレタリア作家・沼田流人(ぬまた・るじん)。当時のタコ部屋(監獄部屋)を主題とする長篇小説。ロマンス要素が強め。 新字・現代かなづかいにあらため、人名や読みにくい漢字にはルビを付与しました。

  • イマガワ血風録(2022年)

    KDPや創作にまつわる記録

  • 総ルビ『根津権現裏』(旧字)藤沢清造(著)

    『根津権現裏』の、ほぼ全ての漢字に「ふりがな」を添えました。noteのルビ機能を試しています。底本の「旧字体」をあえて残しました。

最近の記事

2016年(平成28年) 西村賢太『一私小説書きの日乗』お仕事タイムライン

2016年(平成28年)の出来事『一私小説書きの日乗 遥道の章』(2016年1月、角川書店) 「文豪ばかりが作家じゃないと、いつか教えてくれた人たち」連載開始(『本の雑誌』2016年3月号~) 『棺に跨がる』(2016年4月、文春文庫) 『ベスト・エッセイ2016』(2016年6月、光村図書出版) 『蠕動で渉れ、汚泥の川を』(2016年7月、集英社) 東京大学で講演(2016年11月6日 /「人生に、文学を」/ 日本文学振興会主催) 『随筆集 一私小説書きの独語

    • 2015年(平成27年) 西村賢太『一私小説書きの日乗』お仕事タイムライン

      2015年(平成27年)の出来事 第16回「淸造忌」をおこなう 『無銭横町』(2015年2月、文藝春秋) 稲垣潤一ライブに出席(2015年2月11日) 『随筆集 一日』(2012年5月、文藝春秋) 『小説にすがりつきたい夜もある』(2015年6月、文春文庫) 「芝公園六角堂跡」(『文學界』2015年7月号) 『痴者の食卓』( 2015年7月、新潮社) 『東京者がたり』(2015年10月、講談社) 『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら 他』(2015年

      • 小池重明「将棋と酒」(全20回)のリンク集 『近代将棋』誌の連載随筆 #エッセイ

        近代将棋 小池重明「将棋と酒」(全20回)下記リンクは、国立国会図書館の登録利用者(本登録、無料)がアクセスできる「個人向けデジタル化資料送信サービス」のコンテンツです。パソコン、スマートフォン、タブレットで誌面を読むことができます。 第1回 無題(棋歴、酒歴共に十七年) 1981年10月号 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6047090/98 ※肩書は「アマ名人」 第2回 悲喜こもごものアマ大会(読売大会、アマ名人) 1981

        • 西村賢太 文庫リスト/巻末解説者一覧

          1. どうで死ぬ身の一踊り 3種類あり1-A. 講談社文庫 2009年1月 解説:坪内祐三 電子書籍には「解説」収録なし 角川文庫の横溝正史シリーズを手がけた杉本一文が装画を手がけている 1-B. 新潮文庫 2012年9月 解説:稲垣潤一 参考文献1:久世光彦 旅ゆけば(新潮社『さらば大遺言書』の再録) 参考文献2:坪内祐三(講談社文庫解説の再録) 電子書籍は未発売 1-C. 角川文庫 2019年3月 解説:勝又浩 参考文献1:久世光彦(新潮文庫の再々録) 参考文献

        2016年(平成28年) 西村賢太『一私小説書きの日乗』お仕事タイムライン

        マガジン

        • 西村賢太私研究
          19本
        • 近代の小説 / 田山花袋(著)
          67本
        • 血の呻き/沼田流人(著)
          51本
        • イマガワ血風録(2022年)
          2本
        • 総ルビ『根津権現裏』(旧字)藤沢清造(著)
          61本
        • イマガワ血風録(2020年)
          18本

        記事

          2014年(平成26年) 西村賢太『一私小説書きの日乗』お仕事タイムライン

          2014年(平成26年)の出来事『薄明鬼語 西村賢太対談集』(扶桑社、2014年5月) 軽い「頸椎症性神経根症」と診断される(2014年6月16日) 『随筆集 一私小説書きの独語』(角川書店、2014年7月)7/1 『疒の歌』(新潮社、2014年7月)7/31 「蠕動で渉れ、汚泥の川を」連載開始(『すばる』2014年9月~) 『下手に居丈高』(徳間書店、2014年9月)9/10 NHK Eテレ「SWITCHインタビュー 達人達」で稲垣潤一と対談(2014年9月2

          2014年(平成26年) 西村賢太『一私小説書きの日乗』お仕事タイムライン

          2013年(平成25年) 西村賢太『一私小説書きの日乗』お仕事タイムライン

          2013年(平成25年)の出来事『一私小説書きの日乗』(文藝春秋、2013年2月) 『棺に跨がる』(文藝春秋、2013年4月) 『歪んだ忌日』(新潮社、2013年6月) TOKYO MXの『ニッポン・ダンディ』のレギュラー出演を突如降板する(2013年6月4日) 『苦役列车』(『苦役列車』の中国語訳)(2013年8月、北京联合出版公司) 『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』(幻冬舎文庫、2013年9月) 西村賢太の偽Twitterアカウント(なりすまし)が現

          2013年(平成25年) 西村賢太『一私小説書きの日乗』お仕事タイムライン

          注釈まとめ 田山花袋『近代の小説』

          第1節※1 佳人の奇遇 東海散士(一八五二─一九二二)/著。一八八五年発表の政治小説。 ※2 雪中梅 末広鉄腸(一八四九─一八九六)/著。一八八六年発表の政治小説。 ※3 春のや主人……坪内逍遥(一八五九─一九三五)の別号。 ※4 書生気質……『当世書生気質』(一八八五)。坪内逍遥が発表した学生小説。 ※5 支那……中国(China)を指す地理的呼称。第二次世界大戦以前につかわれていた時期がある。 ※6 雑曲……戯曲。

          注釈まとめ 田山花袋『近代の小説』

          目次 沼田流人『血の呻き』

          上篇第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 第9章 第10章 第11章 第12章 第13章 第14章 第15章 第16章 中篇 (通称:地獄篇)第17章 第18章 第19章 第20章 第21章 第22章 第23章 第24章 第25章 第26章 第27章 第28章 第29章 第30章 第31章 第32章 第33章 第34章 第35章 第36章 第37章 第38章 下篇第39章 第40章 第41章 第42章 第43章 第44章 第45章 第46章 第4

          目次 沼田流人『血の呻き』

          血の呻き 下篇(12) 完

                   五〇  暴風に虐まれて、狂おしく悩んでいる花のような、長い惨めな苦悩の日が続いた。  彼女は、全一日も、一言も口をきかないで、不気味なぎらぎらした眼で、凝然と壁を見つめて低く呻いていたりした。  そして発作的に、しくしくと泣き出すのだった。  霙が止んだ二日目に、彼女は急に静かになってしまった。  彼女は、午後に明三の胸に頭をつけて眠っていたが、眼をさますと、淋しい眼をして彼を見た。 「私、死んだ夢を、見たの……」  彼女は、弱々しいきれぎれな声で言った。

          血の呻き 下篇(12) 完

          血の呻き 下篇(11)

                   四九  雪子は、唯一人で、薄暗い室に寝ていた。 「あら、帰って……」 「ええ」  明三は力なく其所へ坐りながら言った。 「どうしたの」 「あの女は今、馬車で火葬場へ行ったから」 「然う……。あのね、私そっと貴方に話し度い事があるの。起して下さいな」 「何を……。誰もいないよ」 「だって……。ね、起して下さいな」 「きくちゃんは……」 「私、知らないわ……」  明三は、彼女を抱え起した。 「あのね」  雪子は、彼の腕の中で言った。 「私……」 「何、……どう

          血の呻き 下篇(11)

          血の呻き 下篇(10)

                   四八  明三は、絞首架を負う者のような、哀れな俯れた姿で宿へ帰って来た。  雪子は、疲れ果てたような眼を壁に瞠いていたが、彼がは入って行っても、然うしたまま黙っていた。明三は、叱られるように、そこに跪いた。 「あの女の所に、いたんでしょう……」  長い間を経てから、彼の方へ顔も向けないで、彼女は痙攣た声で言った。 「あの女の所に……。然うです。あの女は、死んだんです」  明三は、吃りながら、慄える声で言った。 「死、死んだ……。死……。ああ、何だってそんな

          血の呻き 下篇(10)

          血の呻き 下篇(9)

                   四七  荒廃した寺院は、柩のように寂然としていた。夜の明ける前の灰色な、微かな陽光の中に、時子は暗い壁に摑まって、わなわなと戦慄しながら、呻いていた。 「何うしたの。何う……。時さん……」  明三は、彼女を抱き起した。彼女の土気色して慄えている唇と、胸の上とには、吐き出された暗紫色の血が塗れていた。床の上にも、カップからまき散らされでもしたように夥しく蒼黒い血が吐き散らされていた。  彼女は、もう殆んど物を言う事が出来なかった。そして、銀灰色な、奇妙な色に

          血の呻き 下篇(9)

          血の呻き 下篇(8)

                   四六  病衰えた娘と、哀痛の為に虐まれ疲れた少女とは、灯火のない暗い室に眠りに沈んでいた。明三は、夜の妖怪のように、音もなく暗がりに起きあがった。  そして、息をひそめて、忍び足に室から逃れ出た。  二分の後彼は、暗い巷の路を、泣くように何か呟きながら、彷徨歩いた。そして、時々立止って、俯れては何か考え込んだ。地の上には、灰色の深い霧とともに、黎明の青ざめた光りが流れて来た。街はそして、墓のような闃寂に沈んでいた。  薄暗い霧の中から、何か物に襲われるよう

          血の呻き 下篇(8)

          血の呻き 下篇(7)

                   四五  忍足に、──突然時子が、は入って来た。宛然、その破れた壁の中からでも現れたように。彼女は、そして、そっと壁に寄って殆んど瞬きもしないで、彼等を凝視た。彼女は、汚れた衣服を着て、宛然病疲れた人のような青ざめた顔をしていた。彼女の背後から、奇妙な顔をした茂が、やはり跫音を忍ばせては入って来た。  明三は、彼女に気がつくと、幽霊でも見るように戦いた。そして何か言おうとして唇を慄わしてまた黙り込んで、凍り着いたようになった悲しげな眼で、彼女を凝視た。時子は

          血の呻き 下篇(7)

          血の呻き 下篇(6)

                   四四  次の日の午後、明三は線路に沿うてA町の方へ歩いて行った。彼は、雪子の、薬と果物とを買う為に宿を出たのだった。彼は然し、その事を殆んど忘れてしまう程も、いろいろな想念に虐まれて重い荷を脊負った人のように俯れて歩いていた。  彼は、慴えたように立止って、自分の歩いている所を見た。そして、自分から、二百歩ばかりも前を、ひどく跼み込んで歩いて行く、不思議な人の姿を見つけた。無論それが、誰なのか彼には解らなかったが、何か気味悪い運命の影像かなぞのように、その

          血の呻き 下篇(6)

          血の呻き 下篇(5)

                   四三  次の日の午後、明三が扉口へ出て行くと、白痴の茂が蹙面をしてそこらをうろついていた。彼は、明三を見ると慴えたように、走り出そうとした。 「おい。茂……」  彼は、呼びかけられると、黙って彼の前へやって来て、俯れた。 「あの医者が、金をくれるってたから、俺は、お前を呼びに来たんだ……」  彼は、一つ頭を下げて、また顰面をした。 「ふうむ。然うか。じゃあ、俺も金をやるよ」 「何をするんだ」 「何も、しなくっても、いい」 「いらない」  暫く考えてから、茂

          血の呻き 下篇(5)