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【海外編】ギリシャ・アテネの通勤事情

自宅からオフィスまで浜沿いを毎朝バスで移動する。..今日もボロボロのバスだ。これがすこぶるうるさい。走っている途中に車体がバラバラになるんじゃないかというほど、道の凸凹を超える度に、ドアが開閉する度に、揺れてはいけないはずの部品がどこかグラグラ揺れている。

一番参ってしまうのが降車ボタンの故障である。乗客がボタンを押しても、作動していなければバスドライバーは知る由もない。バスは颯爽とバス停を過ぎてゆく。この手のバスに乗ると、一種のデジャブが発生することを覚悟しなければならない。まず乗客が怒鳴り、バスが急停車、そして後方からクラクションの津波が押し寄せるという現象が、目的地まで繰り返し発生するのだ。運が良ければ、目的地で自らデジャブの主人公を買って出ることができる。

ここまでくると、ドアすら付いていないインドのバスの乗り降りがいかに楽だったことかと数年前の記憶を掘り返す。が、停車を待ちきれずに飛び降りたおっさんが、ボウリング玉のように慣性に身を任せバス停の群衆に見事なストライクを決めた光景を思い出すと、バスにドアという部品が設けられているようになったのは一部のせっかちな人々のためだったのではないか、という気もしてきた。

実は週に一度ほど、何故かとても状態の良いバスに当たる。こういうバスはフランス、ドイツ、ノルウェーの中古らしい。ステッカーや停車の点灯ランプは外国語のまま。でも、揺れている部品は見当たらないし、とても静かで快適だ。この国が中古を買いまくるのは、どうやら船だけではないらしい。

しかし残念ながら、このようなバスも同じボロボロのグラグラの末路を辿るのだ。それは車体のメンテナンス不足だけではなく、アテネの劣悪な舗装道路が大きな原因である。誇張抜きに、インドのような発展途上国レベルである。耳クソが自然に降りてくる。よく通販番組でダイエットを謳い文句にした激しく振動するだけの怪しい腹巻を見かけるが、あれが本当に効くならなぜギリシャやインドの豊満な夫人達は豊満なままなのだろうか。痩せ細っていくのはバスだけである。あの腹巻も痩せる前にぶっ壊れるのだろう。

.. 瞑想(迷想)を終えて目を開く。今日も見える、朝一で海で泳いでいるおじいちゃん。今日も聞こえる、渋滞に痺れを切らして怒鳴る乗客。今日もいる、音楽と読書で時間を潰す一人の東洋人。遠く彼方の海には、朝日で芽生えた大型船がポツポツと頭を出している。

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