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存在 雲の上の空は確かに 地上から見るよりもずっと青く 雲の上から見下ろす街は確かに…
網 言葉なく 風に這う砂 風紋を見つめ ハマヒルガオの種子が 枯れ落ちた花の後に実っ…
夏の入口 5月の強い陽射しの中を吹き抜ける爽やかな風を 僕は身体中で記憶する 世界そ…
無題 小さな紫色の花が咲いている 私はそれを摘もうとする 猫がそれをじっと見つめてい…
孵化 磯伝いに歩く僕の耳に 届くときもあれば 届かないときもある――― それは潮騒な…
愛について 黒く 紅く 白く 黄色く――― けれども 枯葉色の 碧色の 藍色の――― プ…
部屋 冴え冴えとした月あかりの スレートの屋根に沁み込む 蛍光灯のあかりの ツゲの葉裏をしろく浮き出す 劣化したプラスティックの ざらりとした肌触り 滴る光の 霧 享けるもの わたしがそれになる 雑音が遥か遠くに薄れてゆく ひと呼吸ごとに 完成された孤独を 静かに繭を、編む 何者も手の届かぬ 白い砂底から湧き出る泉 私は手を伸ばさない 息をしている (2007.2.2)
対話 忍び込んでくる冬の大気は 心地よく肺を冷やす 彼でもなく 彼女でもなく 此処で…
戸棚 一つ目の扉を開けると 皿が重ねてある 二つ目の扉を開けると グラスが並べてある…
港内 かつて黒い水がよどんでいた港は 透明な翡翠色の水を湛えている 一羽の白鳥と、…
書簡 夕暮れの空に白い半月が出ている 薄墨色の雲が流れてゆく ほんのりと紅をさした雲…
松葉 茶色く枯れた松の葉が落ちている こうこうと輝く月夜はさむざむとして 僕は何を…
ケヤキ 日没間近の都市公園に さらさらという音を地面にこぼしながら ケヤキの若木が黄…
連と語る じっと動かぬ木の 蛍光灯に照らされた葉裏の白さ その輝きの 発生 束の間の生 そして消失 連続 連と連との間の空白において眠る者――― あなたを捉えること 霧が降るように降る 大気 その深い洞窟の底に潜む者 黒い天空に瞬く星に何を見ることができるか 夜は既に閉じられ 明けることを その方法を知らない 連とは何か あなたの生を時間と結ぶもの 一段 一段 それを区切るもの 階段として あなたの生を 生の感触を呼び覚ますもの おお、連よ 私の前に輝くこ