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詩集:”初秋”

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2005~2009(葉擦れの地5)
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2021年7月の記事一覧

詩) 存在

   存在 雲の上の空は確かに 地上から見るよりもずっと青く 雲の上から見下ろす街は確かに…

渕 言址
2年前
4

詩) 網

   網 言葉なく 風に這う砂 風紋を見つめ ハマヒルガオの種子が 枯れ落ちた花の後に実っ…

渕 言址
2年前
5

詩) 夏の入口

   夏の入口 5月の強い陽射しの中を吹き抜ける爽やかな風を 僕は身体中で記憶する 世界そ…

渕 言址
2年前
6

詩) 無題

   無題 小さな紫色の花が咲いている 私はそれを摘もうとする 猫がそれをじっと見つめてい…

渕 言址
2年前
2

詩) 孵化

   孵化 磯伝いに歩く僕の耳に 届くときもあれば 届かないときもある――― それは潮騒な…

渕 言址
2年前
7

詩) 愛について

   愛について 黒く 紅く 白く 黄色く――― けれども 枯葉色の 碧色の 藍色の――― プ…

渕 言址
2年前
8

詩) 部屋

   部屋 冴え冴えとした月あかりの スレートの屋根に沁み込む 蛍光灯のあかりの ツゲの葉裏をしろく浮き出す 劣化したプラスティックの ざらりとした肌触り 滴る光の 霧 享けるもの わたしがそれになる 雑音が遥か遠くに薄れてゆく ひと呼吸ごとに 完成された孤独を 静かに繭を、編む 何者も手の届かぬ 白い砂底から湧き出る泉 私は手を伸ばさない 息をしている           (2007.2.2)

詩) 対話

   対話 忍び込んでくる冬の大気は 心地よく肺を冷やす 彼でもなく 彼女でもなく 此処で…

渕 言址
2年前
5

詩) 戸棚

   戸棚 一つ目の扉を開けると 皿が重ねてある 二つ目の扉を開けると グラスが並べてある…

渕 言址
2年前
6

詩) 港内

   港内 かつて黒い水がよどんでいた港は 透明な翡翠色の水を湛えている 一羽の白鳥と、…

渕 言址
3年前
3

詩) 書簡

   書簡 夕暮れの空に白い半月が出ている 薄墨色の雲が流れてゆく ほんのりと紅をさした雲…

渕 言址
3年前
5

詩) 松葉

   松葉 茶色く枯れた松の葉が落ちている こうこうと輝く月夜はさむざむとして 僕は何を…

渕 言址
3年前
7

詩) ケヤキ

   ケヤキ 日没間近の都市公園に さらさらという音を地面にこぼしながら ケヤキの若木が黄…

渕 言址
3年前
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詩) 連と語る

   連と語る じっと動かぬ木の 蛍光灯に照らされた葉裏の白さ その輝きの 発生 束の間の生 そして消失 連続 連と連との間の空白において眠る者――― あなたを捉えること 霧が降るように降る 大気 その深い洞窟の底に潜む者 黒い天空に瞬く星に何を見ることができるか 夜は既に閉じられ 明けることを その方法を知らない 連とは何か あなたの生を時間と結ぶもの 一段 一段 それを区切るもの 階段として あなたの生を 生の感触を呼び覚ますもの おお、連よ 私の前に輝くこ