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詩) 愛について

   愛について

黒く
紅く
白く
黄色く―――

けれども
枯葉色の
碧色の
藍色の―――

プラスティックな性欲や
雑然とした欲望や―――
そんな中に
押し潰されているけれども

少年のときにスケッチした樹
その、ひと葉ひと葉は
ともだちのように、また
いきものたちのように

魚を包む粘膜のような
微生物の繊毛のような
つやつやとした林檎の皮のような
陽射しの臭いのする毛布のような

けれども
肌を刺す冷気のような
透きとおった水の深さに宿る恐怖のような
頭上から落下する岩の重量のような

優越という快楽や
抑圧への嫌悪や―――
そんなものたちに
蹴飛ばされてしまうけれども

砂浜から望む水平線を
見え隠れする小舟は
波を乗り越えては
陽射しを受けて輝いて

怖く
鋭く
痛く
寒く

けれども
丸く
やはらかく
あたたかく―――

それらすべてを
この掌に
享けている

     (2007.2.11)

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