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詩) 松葉

   松葉

茶色く枯れた松の葉が落ちている

こうこうと輝く月夜はさむざむとして
僕は何を見ているのだ

ほそい ほそい 松の枯葉
ぱらぱらと落ちている松葉


途切れ途切れの線

それを伝い
行き先のない渇望が
ひそかに身悶える

落ちよ
目前に渺々と広がる海原へ
やわらかに
けだるく
重たくうねる海原へ―――

闇から浮き出る波頭
その白さに僕は身を投げる
線を伝い空白を飛び越え
僕は身を投げる

おお
枯れ落ちた松葉が
僕を導く
解き放たれた心が
この胸から飛び立つ

死ではなく
別れでもなく
この身を溶かし去るもの

おお
孤りであることの
大気に抱かれることの
指し示す先

そこへ向けて
吸い寄せられる
そこならば
消えてもよい

松葉が落ちている
僕はそれを拾う

集め
束ねる

     (2005.12.6)

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