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詩) 夏の入口

   夏の入口

5月の強い陽射しの中を吹き抜ける爽やかな風を
僕は身体中で記憶する
世界そのものが眩しく光に反射する
痛いほど・・・
だから新緑は既に濃い緑に濃縮されている

物陰から飛び出したトカゲに注がれる―――
猫の視線には放射のかけらもないけれど
引き絞られた弓のような緊張が隠れている
五感をあげて気配を消している
にじり寄り、狙っている

咲き遅れたパンジーは暑熱に色褪せ
埃じみた紫や黄色へと、見る見るうちに焦がされてしまう
それにかわって顔を出し始めたアジサイはまだ
まるで田舎の幼い子供のようなあどけない顔をしている
湿った南からの空気は、まだ届いてはいない
僕は帽子を被っている

          (2007.5.26)

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