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詩集:”口伝の海”

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2001~2005(葉擦れの地4)
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2021年6月の記事一覧

詩) 絵画

   絵画 けたたましく鳴き叫ぶ白い鳥は見下ろしている 岸壁に座り込み、漁網を繕う麦藁帽…

渕 言址
3年前
8

詩) 風吹く空

  風吹く空   いつまで風は吹くのだろう この街はいつまで在るのだろう 静かに慄える涅槃…

渕 言址
3年前
5

詩) 朝の車内

   朝の車内 海がある 家がある 線路が左へ折れる 朝の陽射しが後ろへとそれてゆく 海が…

渕 言址
3年前
3

詩) 都市の夜

   都市の夜 強風に吹き飛ばされ また 氷に閉じ込められ この荒野は乾ききっている 反射…

渕 言址
3年前
3

詩) 流砂

   流砂 風に吹き溜められた砂が 斜面を流れてゆく 一様に薄く均一に流れるのではなく 一…

渕 言址
3年前
6

詩) 渡河

   渡河 時計が動き始めます    前へ    前へ 動作が回転を始めます    跳べ  …

渕 言址
3年前
3

詩) To Sea of Silence water

   To Sea of Silence water はらはらとした歩み、海へと続く小径(こみち) 僕であるところの―――この隣人 君が言い出した 「曇りであれば、小径自身が海へ顔を向ける」と 祈りの風がスカートの裾を引く・・・ 白いウェディングドレスの裾を捧げ持つ、ひと組の童子のように 砂浜はまだ見えない けれど海原は望める 小径の両側を縁どる 叢(くさむら)が知っているとは思えない 理知という無用の創造物を生み出した人間の神など 遠く、そして、広い 抱くことも

詩) 唄

   唄 心をすべて唄いあげないうちに 君はいなくなりました。 肩のところで短く切りそろ…

渕 言址
3年前
5

詩) 部屋

   部屋 僕の手の届かぬ場所へ その声の哀しさ――― 哀しさ、と 君はそれを理解できない…

渕 言址
3年前
5

詩) 彼

   彼 その胸元に組み合わされた掌 伸び上がるつま先 お前がずっと遠くに望むもの 眩暈を…

渕 言址
3年前
2

詩) 湾奥

   湾奥 陸をなめる冷たい波 ねっとりとした薄い皮 口を噤む泡 奥行を有する空気は何もの…

渕 言址
3年前
7

詩) 眠る本

   眠る本 一読の後 再び開くことなく 鞄の奥底に忍ばせた1冊の本 そのときから――― 潮…

渕 言址
3年前
4

詩) 死の街

   死の街 コバルトのように青い花びらを持つバラに 朝露の滴り落ちる中を 私は無人の街を…

渕 言址
3年前
3

詩) 自我

   自我 かつて 此岸は 社会と呼んでいた 対岸は 何と呼んでいたか それは覚えていない    レールは2つに    さらに4つに 8つに    分かれてゆく その先 此岸は かつて 秩序と呼ばれていた 対岸は 憧憬と呼んでいた 僕は 僕・・・ その一人称 車中に揺られる者    かつて あの夕陽は    夕陽ではなく 終焉でもなく    永遠の象徴だった 僕 という 一人称 その軌跡を抱えていた かつては ・・・今は?    水平線を中心にして    上下に